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竹取物語
誰が一番でショウ! が始まる
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賢い婆さまは、何も聞かなくてもなよ竹がもうすぐいなくなる事も、竹の中のお宝が養育費だという事もわかっていた。
どうせなら後腐れのないでっかいエンターテイメントショーをぶち上げたいと思っていた。
まぁ、最悪逃げ損ねて囲い込まれても、上級貴族なら後ろ盾にもなるし、ね。
そう、二人で話して、貴族の公達を五人に絞った。
どうせならオッズを賭けて競わせたい。
退屈を噴き飛ばし楽しみたい。
そうして"蓬莱の玉の枝"だの"火鼠の皮衣"だのという、訳がわからないけどありがたそうなものをお題にだして。
それを持ってくるというレースが出来上がった。
ちょっと面白そうじゃん♡
なよ竹は久しぶりにわくわくした。
竹から出て来たお宝によって、今や田舎の爺さまの荒屋は屋敷です。
庭師は美しい白い玉砂利が敷き詰められ。
朱塗りの橋が架けられた小川すらあります。
今日はその庭に公達たちと側仕えと兵士。
それに下働きの男達がぎっしり詰めておりました。
公達たちはイメージカラーで分かれています。
赤・青・黄・緑・桃色とまるでなんとかレンジャーのようです。
下人達も揃えているので、上から見ると庭が五色になっています。
その男達がぎゅっと見つめるのは舞台の上。
そこにはなよ竹がおりました。
誠の女であったら御簾からは出ません。
でもこのレースの商品となるなよ竹は、舞台の上にすらりと立って、男達の視線を集めておりました。
大垂髪は椿油で漉き込まれ、黒い滝のようです。
そこにつけられた平額は金と金剛石で作られて、先の蝶が風に揺れる程に繊細です。
はい、コレは貴族その1の贈り物です。
豪華な扇は金蒔絵の牡丹が描かれています。
はい、コレは貴族その2の贈り物です。
扇からちらちらと覗く顔は、噂よりも遥かに菩薩様のようで。
下男なぞ両手を合わせて拝んでおりました。
裳の白さを引き立たせる五衣の彩りも。単の華やかな吉祥文様の刺繍も。まるで天女のようです。
はい、貴族その3・4・5は、(あの単は、私が贈った物だ♡)
それぞれ、そう誤解して喜んでおりました。
長袴は朱色。
そこから覗く爪先は白く。
桜貝のような爪が、小さな白い指先を飾っています。
公達はその指の可憐さに、ごくりと唾を飲み込みました。
プロデュースby婆さまの、その立ち姿は。
ぷっくりした紅色の唇をやんわりと微笑ませ、長いまつ毛を伏せ気味にしています。
首の傾げ具合も婆さまの指示で。
今日の密かなタイトル『天女のゆ・う・わ・く♡』そのものでした。
そこにいた男どもは、ただただ美しいなよ竹を、何が何でも手に入れるぞー!
と、渇望したのです。
「お元気ですかぁーっ?」
まず婆さまの声が響いた。
「「「「おーっ‼︎」」」」
拳があがる。
「なよ竹に口吸いしたいかぁー?」
公達は一瞬度肝を抜かれてしーんとなった。
この時代、貴族の座右の銘は『奥ゆかしさ』だ。
文を送り、心を匂わせ、ジリジリと近づくのがスタンダードだ。
それが露骨に口吸い!
戸惑って当たり前だ。
だが下人や兵士達のギラギラした熱気が、辺りを凌駕していた。
「なよ竹と同衾したいかーっ?」
「「「お、おうっ!」」」
恐る恐る声を上げて振り返ると、同じカラーの下人達がぎらついた目で鼻の穴を広げている。
ふんむぅ。
と、頷く。
「なよ竹が欲しいかぁーっ⁉︎」
「「おぉーっ‼︎」」
負けじと腹の底から声を上げた。
下人達のギラつきに後押しされてどんどん熱が湧き上がってくる。
公達たちは、婆さまの煽りに大きな声で叫んでいた。
こうしてレースが始まった。
どうせなら後腐れのないでっかいエンターテイメントショーをぶち上げたいと思っていた。
まぁ、最悪逃げ損ねて囲い込まれても、上級貴族なら後ろ盾にもなるし、ね。
そう、二人で話して、貴族の公達を五人に絞った。
どうせならオッズを賭けて競わせたい。
退屈を噴き飛ばし楽しみたい。
そうして"蓬莱の玉の枝"だの"火鼠の皮衣"だのという、訳がわからないけどありがたそうなものをお題にだして。
それを持ってくるというレースが出来上がった。
ちょっと面白そうじゃん♡
なよ竹は久しぶりにわくわくした。
竹から出て来たお宝によって、今や田舎の爺さまの荒屋は屋敷です。
庭師は美しい白い玉砂利が敷き詰められ。
朱塗りの橋が架けられた小川すらあります。
今日はその庭に公達たちと側仕えと兵士。
それに下働きの男達がぎっしり詰めておりました。
公達たちはイメージカラーで分かれています。
赤・青・黄・緑・桃色とまるでなんとかレンジャーのようです。
下人達も揃えているので、上から見ると庭が五色になっています。
その男達がぎゅっと見つめるのは舞台の上。
そこにはなよ竹がおりました。
誠の女であったら御簾からは出ません。
でもこのレースの商品となるなよ竹は、舞台の上にすらりと立って、男達の視線を集めておりました。
大垂髪は椿油で漉き込まれ、黒い滝のようです。
そこにつけられた平額は金と金剛石で作られて、先の蝶が風に揺れる程に繊細です。
はい、コレは貴族その1の贈り物です。
豪華な扇は金蒔絵の牡丹が描かれています。
はい、コレは貴族その2の贈り物です。
扇からちらちらと覗く顔は、噂よりも遥かに菩薩様のようで。
下男なぞ両手を合わせて拝んでおりました。
裳の白さを引き立たせる五衣の彩りも。単の華やかな吉祥文様の刺繍も。まるで天女のようです。
はい、貴族その3・4・5は、(あの単は、私が贈った物だ♡)
それぞれ、そう誤解して喜んでおりました。
長袴は朱色。
そこから覗く爪先は白く。
桜貝のような爪が、小さな白い指先を飾っています。
公達はその指の可憐さに、ごくりと唾を飲み込みました。
プロデュースby婆さまの、その立ち姿は。
ぷっくりした紅色の唇をやんわりと微笑ませ、長いまつ毛を伏せ気味にしています。
首の傾げ具合も婆さまの指示で。
今日の密かなタイトル『天女のゆ・う・わ・く♡』そのものでした。
そこにいた男どもは、ただただ美しいなよ竹を、何が何でも手に入れるぞー!
と、渇望したのです。
「お元気ですかぁーっ?」
まず婆さまの声が響いた。
「「「「おーっ‼︎」」」」
拳があがる。
「なよ竹に口吸いしたいかぁー?」
公達は一瞬度肝を抜かれてしーんとなった。
この時代、貴族の座右の銘は『奥ゆかしさ』だ。
文を送り、心を匂わせ、ジリジリと近づくのがスタンダードだ。
それが露骨に口吸い!
戸惑って当たり前だ。
だが下人や兵士達のギラギラした熱気が、辺りを凌駕していた。
「なよ竹と同衾したいかーっ?」
「「「お、おうっ!」」」
恐る恐る声を上げて振り返ると、同じカラーの下人達がぎらついた目で鼻の穴を広げている。
ふんむぅ。
と、頷く。
「なよ竹が欲しいかぁーっ⁉︎」
「「おぉーっ‼︎」」
負けじと腹の底から声を上げた。
下人達のギラつきに後押しされてどんどん熱が湧き上がってくる。
公達たちは、婆さまの煽りに大きな声で叫んでいた。
こうしてレースが始まった。
応援ありがとうございます!
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