わりとうがって見ちゃうって、ゲスいんですかね、自分。

たまとら

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竹取物語

執着と報復の狭間

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意識の無い体を、ごろりと転がした。

土の上で、顎が向こうにがくりと流れて、髪が水紋のように広がった。

目の前には、金の、鬱金の、紅の、碧の色。
いろいろな絹と刺繍で出来た着物の塊が、大きく視界を埋めて骸のように形を作っている。

その中で白い体がふるりと動く。
蛹の中の幼虫のように。
色の洪水の鎧の中から、細い腕と脛が伸びていた。

その陶器のような白さに、男はごくりと唾を飲み込んだ。

その音が異様に大きく響いて、ぎくりとする。


さすが、なよ竹。

脛は見たことのない程に滑らかで白い。
そして黒い本流のような髪が、頬に流れを作って顔を隠していた。
僅かに見える口元は、あどけなく開いてぽってりと紅色だ。


男は剥ぎ取った羽衣を、洞窟の隅へと放り投げた。

チカチカと断末魔の様に瞬くソレに気が付いて、ちっと舌打ちをする。

すぐさま足元にころがる頭程の石を乗せて、動かない様に抑えた。


意識の無いなよ竹に近づいて、十二単の裾を割る。
長袴を乱暴に引き摺り下ろした。


こんな無謀な事をしたのは、何故か。
決まってる。
俺が欲しかったからだ。


あの日。
庭に集まった主達に、行ってらっしゃいと見下ろしたあの目。
まるで慈悲深い天女の様な笑を浮かべていたあの目が。
拈華微笑と、貴族の公達たちがありがたがって平伏したあの目が。

そんなもんじゃ無かったからだ。

こっちを蟻のように見下し。
これからの競争を嗤っていた。
その目には、たとえ貴族といえど、人として映っていなかった。
人の足掻きがただ自分の愉しみでしか無い、あの目。

あの目に映りたくて、
あの目を組み敷きたくて、
獣のように餓えて求めて、生きて帰った。


上手くその体に飛び付いた時。
なよ竹は驚愕で目を見開いた。
その目が初めて自分を映した。

なよ竹が驚きで口を開けた。
その顔を頭の中で何度も思い出す。

主について、屋敷に日参した。
主の詩を花に結んで届けた。
その時の御簾ごしにも分かる、美しい顔。
扇越しに微笑む顔。

でも、その目は花を見るのと同じ。
決して人として認識していないものだった。

それが驚愕と焦りと憎しみにたぎって、真っ直ぐに睨みつけていた。



男はゆっくりと着物を剥ぐ。
重なり合った十二単は、まるで筍の薄皮の様に、細い体の両脇にうず高く重なった。

洞窟の土は剥き出しで、ござさえ引いていない。
でもこの分厚い着物が、豪華な敷物になっている。

最後の一枚は紅の絹物で。
その中に浮かぶ白い肢体は、あどけない程に小さかった。

そっと手を伸ばす。

顔にかかった髪を払い、首筋を撫であげ、薄い胸にぽっちりと浮かんだ飾りを指で捏ねる。

そのまま臍へと手を滑らせる。
筋肉も骨も、あるのがわからない程に滑らかだ。

薄く翳った陰毛の中で、眠っている濃い桃色の性器が、なよ竹が少年だと教えてくれる。


……綺麗だ。

むしゃぶりつきたい。

噛んで。
齧って。
舐めまわしたい。


傷つけるのを恐れて、そっと触れながら腿を持ち上げた。
細い両脚を持ち上げると、なよ竹の腰が浮く。
その白い尻の中に、まだ誰にも見せたことのない紅色の菊花が、ひっそりと隠れていた。
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