カレが王子に就職しちゃった事の傾向と対策とその考察

たまとら

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7日前

2 エネメ 街道

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王都に続く幹線道路は舗装されている。
リュスベル領のような小さな領地でも、道幅は大きい。
王が各領主へ命じたからだ。
いざという時に軍隊が迅速に移動できるようにと王命を発したが、ようは各領地が余計な力を付けない様にと金を吐き出させたのだ。

ゾルダン様が王になる前はローラシア王国は特に大きくも無く豊かでも無く、周辺国に紛れ込んだほどほどの小国だったという。
その頃はリュスベルも領地では無く、パンゲア族の治める小さな国だったという。


そんな事、エネメは知らない。
エネメが生まれた時はリュスベルは巨大なローラシア王国の北にある、小さな領地だった。

昔。
42年前に、ゾルダン様の成人の宴でソレは起こった。
父王を殺害して立王を宣言したのだ。
そして周辺国を次々と併呑していった。

ゾルダン王は苛烈だった。
その赤い髪は血を吸ったからだと言われ、通った後は屍しか無いと言われた。
無駄を嫌って捕虜は作らなかった。
抵抗する者は老人も子供も全て首を刎ねて進んでいく。
その容赦の無さに震え上がった国はすぐに降伏していった。
血塗れの奔流は真っ直ぐにエタミル国へと進んだ。

本来なら袖を擦り合うこともない程に遠いエタミル国へと、膨れ上がった濁流は雪崩れ込んだ。
それは真っ直ぐ城へと向かった。
城にいる者はシャザリア女王だけを残して、二歳に満たない幼児の首さえ跳ね飛ばされた。
生き残ったシャザリア女王は民草を盾に取られてゾルダン王の王妃になったのだ。

以来、王は側妃も娶らずシャザリア王妃だけを妃とした。


そんなゾルダン王は善政を敷いた。
併呑した国は領地として分配し、善政を行っていた国王は自分に忠誠を誓わせてそのまま領主とした。
悪政の国王は断罪され、戦いの功績のある者が領主となった。
身内でも不正は許さず、見せしめに首を刎ねた。
税はローラシア王国では一律で、理不尽にな税を押し付けられなかった民は次第にゾルダン王を受け入れていった。

そして42年、王国は平和だった。

その王妃がもう時間がないのだと迎えが来たのだ。


パンゲア族はリュスベルに住まう詠う民だ。
古くから天界の門へと魂を送るために詠って来た。
だから馬車に詰め込まれて、城に向かっているのだ。



「ラスタは"養い子"で王子になったんでさ」

髭面のゼロスおじさんがワハハと笑った。

『城に行くから、来れなくなる』とラスタに告げられた次の春。
確かに行商にラスタはいなかった。
ゼロスおじさんに心配だと言ったら、がっしゅがっしゅと頭を撫で回されて、心配無用だと笑われた。
王子になったと言われて、もう会えなくなるんだってしょぼけたらゼロスおじさんはまた心配無用だと笑った。

「成人したら帰ってきまっさ。
 待っててやってくだせぇ!」

たてがみみたいな赤い髪で、おじさんは行商人というより山賊みたいだ。

帰ってくる?
と小さく聞いたら、おじさんは歯を剥き出してサムズアップした。
ゼロスおじさんはいい人だ。


昔の事を夢に見ながら、エネメは城を目指す。
城に行けばラスタに会えると思うと、心の奥がこしょこしょと暖かかった。
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