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王都、宿泊の乱
2 ロアンはやっぱり迂闊かな
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ベッドと小さなテーブルのある部屋。
でも小さな手水舎がついている。
なんとか捩じ込んでくれて良かった。
知らない街で彷徨わなくて済む。
今夜はゆっくり眠れるな。
そう思いながらロアンは浴場に向かった。
支配人が「宿は騎士団で貸切になるので、今なら人がおりませんよ」と教えてくれたからだ。
玄関から轟轟と津波の様な声がする。
肺活量の多い兵士が、宴会場はこっちだと振り分ける声が響いていた。
ロアンは慌てて浴場に入った。
流石に宿の風呂は広く、誰もいなくてしんしんと湯気だけがこもっている。
《脱がない》
《見せない》
《触らせない》
この三無い標語はデコピン付きで姉さまに叩き込まれた言葉だ。
パルディル国の薬草研究所に出稼ぎに行くと決まったら、物理的に叩き込まれた。
ティガルの国民は小柄でおとなしい民族だ。
しかも黒髪で紫や紫紺の目がスタンダードだ。
生まれた時から周りがそうだったので何も考えていなかったが、世間一般では珍しいらしい。
しかも王族は桃色に近い目をしているので
「攫われて、売られるよ。」
と、姉さまは身も蓋もない脅しをかけた。
この、人より山羊の多い土地でのほほんと暮らしてきた性格に
「危機意識を刻むのよ‼︎」
と、三無い標語を呪文のように呟きながら出発までデコピンされた。
今では額の痛みが安全装置だ。
広い湯にゆったり浸かり、備え付けのいい匂いの石鹸で洗う。
何せ「安宿は危ない!それくらいなら野宿よ。」
という姉さまの薫陶で(どうせ宿のお金も無いし)野宿をしてきた。国にいる時も、山岳で走り回って薬草採取で野宿していたから、それは全然苦じゃ無かった。
のんびり湯から上がり、ほかほかにご機嫌で部屋に向かっていたら
ダダダッと階段から2つの物体が転げる様に降りてきた。
咄嗟に飛び退く。
うっわ、イノシシみたい。と見送っていたら
「このインポ野郎!」
と二階から怒鳴り声が響いた。
ゆっさゆっさとお胸を揺らして、僅かな布を付けた綺麗なお姉さんがずんずんと降りてくる。
大股で来るから腰の切れ込みがちらちらして、ばいんとしたお胸が小さな布から溢れそうで、ロアンはひぅっと赤くなった。
目元を孔雀色に飾ったお姉さんと目が合う。
まつげで縁取られた目は大きくなり、直ぐに険悪に顰まった。
「畜っ生、あのババア‼︎
こんなちっこい子を送りやがって!」
赤い唇がそう叫ぶと、ロアンの前でしゃがんだ。
切れ込みであらぬ所が見えそうで冷や冷やする。
目の高さが合うと、お姉さんは苦しそうにロアンを見てから頭を優しく撫で上げた。
「この上の飛竜の間だよ。頑張んな。」
そして自分の結い上げた髪からびらびらした簪を引き抜いて、きゅっと握らせた。
「あたしはランナってんだ。花兎って店にいるから。
困ったことがあったらおいでね。」
~~~飛竜の間?
お姉さんは負けんじゃないよ!
と一方的に喋って立ち去った。
~~ナニ?
手の中にはびらびらの簪が一本。
~~これ、届けろってこと?
知らない人だったけど、、悪い感じはしなかった。
んん?お使いを頼まれたってこと?
二階の飛竜の間ってとこにコレを届けるの?
何が何だかわからないが、尋ねられる人はいなかった。
向こうから賑やかな音が鳴り響き、従業員は荷物を抱えてばひゅんと高速で通過する。
しばらく考えていたロアンは
「まぁ、宿の中だし。直ぐそこだし。」
と、階段を登り出した。
すぐ後悔する事は、いうまでも無い。
でも小さな手水舎がついている。
なんとか捩じ込んでくれて良かった。
知らない街で彷徨わなくて済む。
今夜はゆっくり眠れるな。
そう思いながらロアンは浴場に向かった。
支配人が「宿は騎士団で貸切になるので、今なら人がおりませんよ」と教えてくれたからだ。
玄関から轟轟と津波の様な声がする。
肺活量の多い兵士が、宴会場はこっちだと振り分ける声が響いていた。
ロアンは慌てて浴場に入った。
流石に宿の風呂は広く、誰もいなくてしんしんと湯気だけがこもっている。
《脱がない》
《見せない》
《触らせない》
この三無い標語はデコピン付きで姉さまに叩き込まれた言葉だ。
パルディル国の薬草研究所に出稼ぎに行くと決まったら、物理的に叩き込まれた。
ティガルの国民は小柄でおとなしい民族だ。
しかも黒髪で紫や紫紺の目がスタンダードだ。
生まれた時から周りがそうだったので何も考えていなかったが、世間一般では珍しいらしい。
しかも王族は桃色に近い目をしているので
「攫われて、売られるよ。」
と、姉さまは身も蓋もない脅しをかけた。
この、人より山羊の多い土地でのほほんと暮らしてきた性格に
「危機意識を刻むのよ‼︎」
と、三無い標語を呪文のように呟きながら出発までデコピンされた。
今では額の痛みが安全装置だ。
広い湯にゆったり浸かり、備え付けのいい匂いの石鹸で洗う。
何せ「安宿は危ない!それくらいなら野宿よ。」
という姉さまの薫陶で(どうせ宿のお金も無いし)野宿をしてきた。国にいる時も、山岳で走り回って薬草採取で野宿していたから、それは全然苦じゃ無かった。
のんびり湯から上がり、ほかほかにご機嫌で部屋に向かっていたら
ダダダッと階段から2つの物体が転げる様に降りてきた。
咄嗟に飛び退く。
うっわ、イノシシみたい。と見送っていたら
「このインポ野郎!」
と二階から怒鳴り声が響いた。
ゆっさゆっさとお胸を揺らして、僅かな布を付けた綺麗なお姉さんがずんずんと降りてくる。
大股で来るから腰の切れ込みがちらちらして、ばいんとしたお胸が小さな布から溢れそうで、ロアンはひぅっと赤くなった。
目元を孔雀色に飾ったお姉さんと目が合う。
まつげで縁取られた目は大きくなり、直ぐに険悪に顰まった。
「畜っ生、あのババア‼︎
こんなちっこい子を送りやがって!」
赤い唇がそう叫ぶと、ロアンの前でしゃがんだ。
切れ込みであらぬ所が見えそうで冷や冷やする。
目の高さが合うと、お姉さんは苦しそうにロアンを見てから頭を優しく撫で上げた。
「この上の飛竜の間だよ。頑張んな。」
そして自分の結い上げた髪からびらびらした簪を引き抜いて、きゅっと握らせた。
「あたしはランナってんだ。花兎って店にいるから。
困ったことがあったらおいでね。」
~~~飛竜の間?
お姉さんは負けんじゃないよ!
と一方的に喋って立ち去った。
~~ナニ?
手の中にはびらびらの簪が一本。
~~これ、届けろってこと?
知らない人だったけど、、悪い感じはしなかった。
んん?お使いを頼まれたってこと?
二階の飛竜の間ってとこにコレを届けるの?
何が何だかわからないが、尋ねられる人はいなかった。
向こうから賑やかな音が鳴り響き、従業員は荷物を抱えてばひゅんと高速で通過する。
しばらく考えていたロアンは
「まぁ、宿の中だし。直ぐそこだし。」
と、階段を登り出した。
すぐ後悔する事は、いうまでも無い。
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