僕とあんたのきもちイイまで、まだ100万マイル(比喩)はあるからな!

たまとら

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薬草研究所での生活

2 送り出すまでが戦場 テェイン

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「僕。出稼ぎに行きます!」

ロアンはきっぱりとそう言った。
頑固なロアンはこうなったら引かない。
本当言うと、その申し出は有り難かった。

ロアンの頭の中では、
→お金が足りない。
→働けばお金が貰える。
→よし、働きに行こう!
という三段活用が起きたのだろう。
でもそのホップ・ステップ・ジャンプは、案の定素敵なアイデアだけで。
何処でナニする。とか
何処で住む。とかを全く考えていなそうだ。
いや、頭が天使ちゃんなのはわかっているが…

頭痛でこめかみを揉みながら、テェインはルクゥと一緒にパルディル王国のリアルトに手紙をかいた。
リアルトは国立の薬草研究所に勤めている。
子供の時からティガルの薬草に興味津々だったから、ロアンを受け入れてくれるだろう。しかもロアンは"スー"(緑の人)だ。
一人で山に入って、野宿をしながら薬草採取してくる。
パルディルに旅する間も、草や木の近くにいれば野盗が現れても心配いらない。草木が護ってくれる。
それがスーの力だ。

我がティガルは貧しい。
でも超高級山青蛾の養殖を良しとしない判断をした。
それは大地や自然を壊さない為だ。
高地ゆえの気候は大地を乾燥させて、畑は余り実りが無い。
乾いた土は山頂の雪解け水で、春から初夏に潤う。
一斉に花が咲き、野草が芽吹く。

水が欲しい。豊富な水さえあれば…
と、以前も溜め池をつくる灌漑を検討した。
でも結局、大地に破壊を遺す事で放棄した。

妹のニリュが、書庫の隅でボロボロの地図を見つけた。
昔は地下水脈を調べていたようだ。
それを使えば大地を傷付けずに山の鞍部に水を誘導できるかもしれない。
有識者達が話し合い、父上が決意した。
こうして灌漑プロジェクトが走り出し、さらにお金が必要になる。


ニリュは本のむしだ。いつも読んでる。
読むものを探し回って、書庫の端から端まで見ていた。
今でさえ本をろくに与えてあげられない。
これからもっと我慢させることになる。
そこでロアンは出稼ぎを決意したそうだ。

働いてお金を貯めます。
パルディルには大きな学校もあるそうですし、奨学金を取れば学費は免除されるそうです。
それに大きな図書館もあるそうです。
ニリュがパルディルの王都に来て、好きなだけ学べる様に
「僕、頑張りますからね‼︎」
そうぐっと拳を握るロアンに、無理だと言えるのか?
いや、それこそ無理だ。

頭を抱えているのはテェインだ。
テェインは市場や商工会で人を相手に交渉してきた。
中原の隣国にも出向いて渡り合って来た。

父上が"妖精王"と言われて舐める様に見られているのを知ってる。
黒髪という珍しい民族の上に、王族の瞳が桃色なのを欲しがる奴がいるのを知っている。

ふっ。短い息がしてロアンは目を向けた。
ロアンの目の前に黒い三つ編みの尻尾が踊っている。
山羊の毛を依った物に刺繍のされた綺麗なリボンが、三つ編みと一緒に宙を舞った。

とす。

白い指先が額を刺す。
「てっ‼︎」

とす。

「いてっ‼︎」

とす。

「な、何っ、姉さまっ?」

とす。

「痛いよっ‼︎」

おでこを隠す様に広げた手のひらの隙間に、狙い違わずテェインの指が刺す。

「脱がない。」 とす。
「見せない。」 とす。
「触らせない。よっ!」とす。
「外では顔を隠しなさい。」


その日から、お金の使い方を含めてテェインの教育的指導が始まった
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