結婚したい男と、結婚させたい奴等と、結婚したくない僕。の話

たまとら

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結婚が降りかかってきました

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ルカは吸い寄せられるように男を見た。

上からも眩かった金髪が。
暗い店にそこだけ明るい。

ルカはフードを外して顔を晒した。

男がはっと足を止める。

ルカはにっこりと笑いかけた。

三つ編みされた黒い髪が胸元に垂れている。
瑠璃色の瞳が、とろりと蕩けるようにこちらをみていた。
綺麗な顔だ。
半開きの唇が、悩ましい。
全身から誘うような雰囲気が立ち昇っていた。

「どぉぞ。こちらに。」

甘い声。


あ、媚薬様が廻ってるやん。
と、マルロは思った。
いつもがさつなルカが、なんかエロくて、マルロは二度見した。
そして、そのまそーっと気配を殺して消えて行く。
このまま部屋の確保と護衛にシフトチェンジしなくてはいけない。
~~従者はとても忙しいのだ。



向かい合わせに座って飲む。
男はマデウスと名乗った。

冒険者だという。
依頼の護衛を終えて、さっき帰って来たばかりだと言う。

冒険者生活を面白おかしく話してくれて、ルカは笑い。
媚薬の効果でねろりと手を握り。
うっとりと潤んだ目を向けた。

小さなテーブルの下で、男の脚の間に片足を突っ込んで。
男の膝を自分の両膝で締め付ける。


どうだいマルロ。
僕だって出来るんだぜ。

ふわふわと霞のかかった頭の中で、ルカはほくそ笑んだ。

初めて会った男に、ボディタッチすることにも歯止めが効かない…媚薬恐るべし。




「ねぇ、僕としない?」

溜め息を吐く様に耳元でそう囁く。
マデウスはすぐに握っていた手を唇にもっていった。
指先に当たるマデウスの唇にドキドキする。

「悪い子だ。いつもこうやって誘ってるのか?」

そのアクアマリンのような青い目が、色気を含んでじっと見返す。
くすりとルカは酔った顔を傾げた。
上気した首筋が、無造作に覗く。

「それは、内緒だよ。」

首筋に絡むほつれ毛に、マデウスはごくりと唾を飲み込んだ。

「ねぇ、しよう。」

ルカの言葉にマデウスが立ち上がる。
そっとルカの腰を抱いて歩き出す。

すっとマルロが差し出す鍵を手にして、階段を上がる。
もつれる様に消えて行く二人に、マルロはやれやれと息を吐いた。

出来る従者は、きっちりと三階を貸し切っていた。
もちろんルカの声を聴かれないようにだ。

酒と媚薬でふわふわするルカを抱き抱えてマデウスが消えていく。

三階からの唯一の通路になる階段に陣取って。
マルロは溜め息を吐いた。




『処女を捨てるっ‼︎』

ルカが仁王立ちでそう宣言したのは、一週間前だ。

いつもの竜舎で、ルカは拳を握ってそう宣言した。

竜の敷き砂をトンボで慣らしていたマルロは、ほえっ、と変な声をあげていた。


ルカは辺境伯の次男坊だ。
兄はマッチョなのに頭も良く、申し分の無い後取りで、ルカは結構甘やかされている。
おかげでときどき突拍子もない事を言い出す。

一足飛びに結果を宣言する事が多いので、マルロはじっとルカの思考の道筋を手繰った。

昨夜、領主様に呼ばれていた。

それだ。
それだよね。

うん。


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