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33 新しい友達
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チェリーの家から小屋に帰ると、
丁度お風呂から戻ってきたルイが居たので、皆で小屋でお茶を飲むことになった。
ついでにお土産のママの肉料理も出す。
それで、モリリナがチェリーの話をすると、ルイは笑い転げ、マリアは顔をしかめた。
「その子すごいな!」
「笑い事じゃないよルイ。お前があの子と結婚しろ!」
「セシルめちゃくちゃ言うなぁ」
「モリリナ様、危険なのでその方にはもう近づかない方がいいです」
「うーん。でもセシルを取られないためには勝たなくちゃいけないんじゃないの?」
「はぁ? モリリナ何言ってるの? 僕は君が勝つとか負けるとか関係なく君のものに決まってるでしょ!」
「わかってるけど。あの子を納得させるにはそれしか思い付かないんだもの」
「モリリナは旅に出てからちょっと変に進化してるな。な、この肉料理ちょっとくれよ。工房に持っていきたい。すげー美味い」
「いいよ。マリア、お皿に取り分けてあげて」
「はい。ルイ様、こういう肉料理がお好きですか? でしたら私、チェリー様のお母様に教えてもらえないか頼んでみますが」
「ああ! 頼むよマリア! 俺、ギアデロの肉料理って好きな味だ!」
「マリア、ありがとう! ルイいっぱい食べてね!」
「はい。私もここに来てから料理が楽しくて」
「あ! マリア、ママの所に行ったらチェリーのことも探って! 予測不能な強敵なの!」
「かしこまりました」
「モリリナ、そんなことしなくても大丈夫だよ。今度来たら、僕が話をする」
「え?」
「あいつ邪魔」
「う、うん。わかった」
セシルが初めて見るようなちょっと怖い雰囲気を出しているので戸惑う。
「モリリナ、セシルはほんとはそんな感じだぞ。いつもお前の前でだけふにゃふにゃしてんだよ」
「そ、そうなんだ......ビックリしちゃった」
「少しづつ慣れようね」
なんだかセシルの笑顔が黒い。
「う、うん」
次の日、牧草の広場で意外な人物に会った。
「ジミー?」
赤毛でソバカスの男の子が、牧草地の端っこにしゃがんで葉っぱの絵を描いていた。
「あ......」
モリリナに気づいて、慌てて立ち上がりペコッとお辞儀をする。
「どうしたの?」
「あ、は、はいっ。あの私、植物が好きで。ギアデロではあまり植物を見ることがないのでスケッチを......すいません。勝手に入ってきてしまって。だ、だめですよ、ね?」
「えと。たぶん大丈夫だと思うよ。ね、スケッチ見ても?」
ジミーの絵を見て驚いた。
モリリナは芸術センスがあるわけではないし、はっきり言うと疎いと思う。
だけどジミーの絵は、モリリナから見ても才能があるのだとわかった。
ただの葉っぱの絵だ。
普通の牧草を1本描いただけ。
それなのに、特別なものを感じた。
「ジミーこれ」
「モリリナ!!」
セシルの声がして振り向くと、怖い顔をして走ってくる。
「セシル?」
走ってきたセシルはモリリナの前に、ジミーから庇うように立つ。
「誰だ」
「セシル?」
「あ、あのわ、私は、あ、あ、」
ジミーはビクビクと縮こまり、口から声が出なくなり、固まってしまった。
「誰かと聞いてるんだ」
「や! セシル! ジミーだから!」
「ジミー?」
「ほら、チェリーの!」
「ああ、それで? そのジミーがモリリナに何の用?」
セシルの声はとても怖くて、ジミーは益々萎縮してしまう。
「セシル! 」
モリリナはセシルの前に回り込んで、頬を両手で包む。
「大丈夫よ。ジミーはわたしになんにもしてないよ」
「......」
モリリナはセシルを抱き締める。
抱きついたセシルはほんの少し震えていて、とても心配したのだとわかる。
「ほんと?」
「うん。セシル、すごく心配してくれたのね」
「またモリリナが誰かに襲われて、怪我をしてしまったらって。怖かった」
チェリーとのケンカは、モリリナには自信になったけれど、
セシルの心には傷を付けたのだ。
「セシルごめん。心配させてしまって」
「君をいつも守りたいのに」
「ちゃんとセシルは守ってくれてるよ。私も不注意だったから。もっと気を付けるから」
「うん......」
セシルに抱きつく。
震えが収まるまで暫くかかった。
セシルから体を離し、ジミーを見ると、彼はそのままの位置で固まっていた。
「ジミー、セシルよ。わたしの婚約者なの。ビックリさせてごめんね」
「は、はい......」
「それで? 彼は何を?」
セシルはまだ警戒しているようで声が硬い。
モリリナは、ジミーが植物が好きで絵を描きに来ていたことを話す。
ジミーはまだ怯えていて、自分では上手く話せなそうだったから。
「それでね! ジミーの絵がとてもステキなのよ!」
ジミーに絵を借りて、セシルに見せる。
「へぇ」
セシルも驚いたようだ。
「ね、セシル。ジミーがここに来て絵を描いてもいい? わたし彼の絵が好きだわ」
「そう......」
睨むセシルに、怯えるジミー。
困ったなぁ。とモリリナは思う。
「セシル......」
「......わかったよ」
「ありがとう! ジミー、いいって!」
「でも、モリリナに何かしたら許さないからね」
「しないよ! ね? ジミー?」
「は、はい! 変なことなんてそんな!」
ジミーは、ぶんぶんと首も手も振って否定する。
こうしてジミーが時々、絵を描きに来るようになった。
付き合ってみると、彼は真面目で優しく、正直で、モリリナはジミーがとても好きになった。
セシルもルイもジミーと友達になった。
本名はジェミニー・ギアデロ。
王子様なのにジミーという名前は変わってるなぁと思っていたのだ。
それに歳も16歳で、成人してて驚いた。
ギアデロ人は小柄なのである。
同じ位の歳にみえるのだが。
ちなみに、チェリーも16歳らしい。
セシルとモリリナより8つも年上なのだ。
チェリーも、セシルがまだ8歳なことを知らないんじゃないだろうか?
丁度お風呂から戻ってきたルイが居たので、皆で小屋でお茶を飲むことになった。
ついでにお土産のママの肉料理も出す。
それで、モリリナがチェリーの話をすると、ルイは笑い転げ、マリアは顔をしかめた。
「その子すごいな!」
「笑い事じゃないよルイ。お前があの子と結婚しろ!」
「セシルめちゃくちゃ言うなぁ」
「モリリナ様、危険なのでその方にはもう近づかない方がいいです」
「うーん。でもセシルを取られないためには勝たなくちゃいけないんじゃないの?」
「はぁ? モリリナ何言ってるの? 僕は君が勝つとか負けるとか関係なく君のものに決まってるでしょ!」
「わかってるけど。あの子を納得させるにはそれしか思い付かないんだもの」
「モリリナは旅に出てからちょっと変に進化してるな。な、この肉料理ちょっとくれよ。工房に持っていきたい。すげー美味い」
「いいよ。マリア、お皿に取り分けてあげて」
「はい。ルイ様、こういう肉料理がお好きですか? でしたら私、チェリー様のお母様に教えてもらえないか頼んでみますが」
「ああ! 頼むよマリア! 俺、ギアデロの肉料理って好きな味だ!」
「マリア、ありがとう! ルイいっぱい食べてね!」
「はい。私もここに来てから料理が楽しくて」
「あ! マリア、ママの所に行ったらチェリーのことも探って! 予測不能な強敵なの!」
「かしこまりました」
「モリリナ、そんなことしなくても大丈夫だよ。今度来たら、僕が話をする」
「え?」
「あいつ邪魔」
「う、うん。わかった」
セシルが初めて見るようなちょっと怖い雰囲気を出しているので戸惑う。
「モリリナ、セシルはほんとはそんな感じだぞ。いつもお前の前でだけふにゃふにゃしてんだよ」
「そ、そうなんだ......ビックリしちゃった」
「少しづつ慣れようね」
なんだかセシルの笑顔が黒い。
「う、うん」
次の日、牧草の広場で意外な人物に会った。
「ジミー?」
赤毛でソバカスの男の子が、牧草地の端っこにしゃがんで葉っぱの絵を描いていた。
「あ......」
モリリナに気づいて、慌てて立ち上がりペコッとお辞儀をする。
「どうしたの?」
「あ、は、はいっ。あの私、植物が好きで。ギアデロではあまり植物を見ることがないのでスケッチを......すいません。勝手に入ってきてしまって。だ、だめですよ、ね?」
「えと。たぶん大丈夫だと思うよ。ね、スケッチ見ても?」
ジミーの絵を見て驚いた。
モリリナは芸術センスがあるわけではないし、はっきり言うと疎いと思う。
だけどジミーの絵は、モリリナから見ても才能があるのだとわかった。
ただの葉っぱの絵だ。
普通の牧草を1本描いただけ。
それなのに、特別なものを感じた。
「ジミーこれ」
「モリリナ!!」
セシルの声がして振り向くと、怖い顔をして走ってくる。
「セシル?」
走ってきたセシルはモリリナの前に、ジミーから庇うように立つ。
「誰だ」
「セシル?」
「あ、あのわ、私は、あ、あ、」
ジミーはビクビクと縮こまり、口から声が出なくなり、固まってしまった。
「誰かと聞いてるんだ」
「や! セシル! ジミーだから!」
「ジミー?」
「ほら、チェリーの!」
「ああ、それで? そのジミーがモリリナに何の用?」
セシルの声はとても怖くて、ジミーは益々萎縮してしまう。
「セシル! 」
モリリナはセシルの前に回り込んで、頬を両手で包む。
「大丈夫よ。ジミーはわたしになんにもしてないよ」
「......」
モリリナはセシルを抱き締める。
抱きついたセシルはほんの少し震えていて、とても心配したのだとわかる。
「ほんと?」
「うん。セシル、すごく心配してくれたのね」
「またモリリナが誰かに襲われて、怪我をしてしまったらって。怖かった」
チェリーとのケンカは、モリリナには自信になったけれど、
セシルの心には傷を付けたのだ。
「セシルごめん。心配させてしまって」
「君をいつも守りたいのに」
「ちゃんとセシルは守ってくれてるよ。私も不注意だったから。もっと気を付けるから」
「うん......」
セシルに抱きつく。
震えが収まるまで暫くかかった。
セシルから体を離し、ジミーを見ると、彼はそのままの位置で固まっていた。
「ジミー、セシルよ。わたしの婚約者なの。ビックリさせてごめんね」
「は、はい......」
「それで? 彼は何を?」
セシルはまだ警戒しているようで声が硬い。
モリリナは、ジミーが植物が好きで絵を描きに来ていたことを話す。
ジミーはまだ怯えていて、自分では上手く話せなそうだったから。
「それでね! ジミーの絵がとてもステキなのよ!」
ジミーに絵を借りて、セシルに見せる。
「へぇ」
セシルも驚いたようだ。
「ね、セシル。ジミーがここに来て絵を描いてもいい? わたし彼の絵が好きだわ」
「そう......」
睨むセシルに、怯えるジミー。
困ったなぁ。とモリリナは思う。
「セシル......」
「......わかったよ」
「ありがとう! ジミー、いいって!」
「でも、モリリナに何かしたら許さないからね」
「しないよ! ね? ジミー?」
「は、はい! 変なことなんてそんな!」
ジミーは、ぶんぶんと首も手も振って否定する。
こうしてジミーが時々、絵を描きに来るようになった。
付き合ってみると、彼は真面目で優しく、正直で、モリリナはジミーがとても好きになった。
セシルもルイもジミーと友達になった。
本名はジェミニー・ギアデロ。
王子様なのにジミーという名前は変わってるなぁと思っていたのだ。
それに歳も16歳で、成人してて驚いた。
ギアデロ人は小柄なのである。
同じ位の歳にみえるのだが。
ちなみに、チェリーも16歳らしい。
セシルとモリリナより8つも年上なのだ。
チェリーも、セシルがまだ8歳なことを知らないんじゃないだろうか?
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