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母のミトコンドリア
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※今回は創作やインセンティブに関係のないエッセイになります。ご容赦ください。
ひょんな事から遺伝子の検査を受けた。母から、お前もいい歳になっているから遺伝的な疾患の可能性を調べておけと半ば強引に検査をさせられた。費用は母持ちであったのがせめてもの救いである。
元来、私は様々なことに懐疑的な人間であるからして、たかだか唾液を調べただけで何がそんなに分かるもんかと思っている。だが親の言うことを無下にもできずしぶしぶ唾液を綿棒で拭い小瓶に入れて投函した。
しばらくして送られてきた検査結果には自分の知らない色々な事が長々と書き記されていた。
まず、私は子供の頃から筋がね入りの運動嫌いなのだが筋力がつき易いタイプでありアスリート向けの身体の構造をしているそうだ。
わりかし長寿な傾向もあると言われた。
炭水化物よりも脂質を選ぶ傾向にもあるらしい。
糖尿病になり易いから気をつけろと言われた。
男性特有の癌になり易いのでイソフラボン をとっておくと良いということだ。
甘いものは好きではなく、買いだめもしないし歯ぎしりをしやすいタイプでもあるそうだ。
正直言ってこんなものは朝のニュースなどで流れている星座占いとさほど変わらないと思った。まるで他人の事のようであるし、私のことのようでもある。当たるも八卦当たらぬも八卦といったところか。
三十年以上生きているからこそ言えるが全ては可能性の話であり、現状と比べてどうかと言えばほとんどが当てはまらない。こんな物に安くない金を支払ってしまった母を思うと年老いたなと思わざる得ない。
もちろんこの検査が眉唾ものだったと言っているわけではない。ここに挙げたこと以外にも実に多種多様な検査結果を事細かに書いてくれている。だがどれも私に当てはまるかと聞かれれば「そうかなぁ」と首を傾げたくなることばかりである。まるで他人を見ている気分だ。私の人生となんら関係のない人のデータを見させられている気がする。これは私のひねくれた性格も起因している。「貴方という人はこうではありませんか?」と言われるとつい「いやそうではない」と反論したくなる。私の様な人間にとっては高額で知ることのできる遺伝子の示す可能性とて、ネットニュースの占いと価値を違えない。
とはいえ人間というのは都合の良い生き物で、面白いなとか自分にとって良いと思える情報に関しては好意的に受け取る。
例えば私のミトコンドリアハプログループはM7というらしい。よく分からないのだがこれは母から遺伝する物らしく、つまり私の母のミトコンドリアハプログループもM7ということになるようだ。このグループは幻の大地「スンダランド」と言われる場所の出身と考えられていて、アイヌや沖縄の原住民といった日本初期の原日本人である可能性が高いそうだ。現在の多くの日本人は縄文時代に九州に上陸して増えていった人種が多いそうだが、このM7はそれらとは違いその時代から既に北海道と沖縄に住んでいた人々らしい。これに関しては諸説あるので確かなソースであるとは言い難いが、朝のニュース番組の占いと同レベルだと考えればそこまで気にしないだろう。
しかしだからなんだ、という話なのだが検査を受けろと強制してきた母から受け継いだのが希少な原日本人のミトコンドリアであるというのだからなんとも面白いなと感じた。
常々母親と似たところが小津安二郎映画が好きという以外にほとんど無いなと思っていたのだが、母にも私と同じミトコンドリアがあると思うと、なんだが分からないが少しだけ繋がりを感じれた。これは私たち親子にとって大きな進歩である。
私は男なので自分の子供にはこのミトコンドリアが継承できないのが少しだけ残念である。母からもらったミトコンドリアはここで潰えることとなる。私は自分の子供に何を継承してあげれるのだろう。
ひょんな事から遺伝子の検査を受けた。母から、お前もいい歳になっているから遺伝的な疾患の可能性を調べておけと半ば強引に検査をさせられた。費用は母持ちであったのがせめてもの救いである。
元来、私は様々なことに懐疑的な人間であるからして、たかだか唾液を調べただけで何がそんなに分かるもんかと思っている。だが親の言うことを無下にもできずしぶしぶ唾液を綿棒で拭い小瓶に入れて投函した。
しばらくして送られてきた検査結果には自分の知らない色々な事が長々と書き記されていた。
まず、私は子供の頃から筋がね入りの運動嫌いなのだが筋力がつき易いタイプでありアスリート向けの身体の構造をしているそうだ。
わりかし長寿な傾向もあると言われた。
炭水化物よりも脂質を選ぶ傾向にもあるらしい。
糖尿病になり易いから気をつけろと言われた。
男性特有の癌になり易いのでイソフラボン をとっておくと良いということだ。
甘いものは好きではなく、買いだめもしないし歯ぎしりをしやすいタイプでもあるそうだ。
正直言ってこんなものは朝のニュースなどで流れている星座占いとさほど変わらないと思った。まるで他人の事のようであるし、私のことのようでもある。当たるも八卦当たらぬも八卦といったところか。
三十年以上生きているからこそ言えるが全ては可能性の話であり、現状と比べてどうかと言えばほとんどが当てはまらない。こんな物に安くない金を支払ってしまった母を思うと年老いたなと思わざる得ない。
もちろんこの検査が眉唾ものだったと言っているわけではない。ここに挙げたこと以外にも実に多種多様な検査結果を事細かに書いてくれている。だがどれも私に当てはまるかと聞かれれば「そうかなぁ」と首を傾げたくなることばかりである。まるで他人を見ている気分だ。私の人生となんら関係のない人のデータを見させられている気がする。これは私のひねくれた性格も起因している。「貴方という人はこうではありませんか?」と言われるとつい「いやそうではない」と反論したくなる。私の様な人間にとっては高額で知ることのできる遺伝子の示す可能性とて、ネットニュースの占いと価値を違えない。
とはいえ人間というのは都合の良い生き物で、面白いなとか自分にとって良いと思える情報に関しては好意的に受け取る。
例えば私のミトコンドリアハプログループはM7というらしい。よく分からないのだがこれは母から遺伝する物らしく、つまり私の母のミトコンドリアハプログループもM7ということになるようだ。このグループは幻の大地「スンダランド」と言われる場所の出身と考えられていて、アイヌや沖縄の原住民といった日本初期の原日本人である可能性が高いそうだ。現在の多くの日本人は縄文時代に九州に上陸して増えていった人種が多いそうだが、このM7はそれらとは違いその時代から既に北海道と沖縄に住んでいた人々らしい。これに関しては諸説あるので確かなソースであるとは言い難いが、朝のニュース番組の占いと同レベルだと考えればそこまで気にしないだろう。
しかしだからなんだ、という話なのだが検査を受けろと強制してきた母から受け継いだのが希少な原日本人のミトコンドリアであるというのだからなんとも面白いなと感じた。
常々母親と似たところが小津安二郎映画が好きという以外にほとんど無いなと思っていたのだが、母にも私と同じミトコンドリアがあると思うと、なんだが分からないが少しだけ繋がりを感じれた。これは私たち親子にとって大きな進歩である。
私は男なので自分の子供にはこのミトコンドリアが継承できないのが少しだけ残念である。母からもらったミトコンドリアはここで潰えることとなる。私は自分の子供に何を継承してあげれるのだろう。
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