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傲慢ゾンビ
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歳をとる毎に自分が傲慢になっていくのが分かる。
子どもの頃は無知で馬鹿な少年だった。失敗が多く学びも少ない。嫌な事は全て後回しにする子でしょっちゅう周りの大人に叱られていた。
それがある日気が付いてしまった。失敗から多くを学び次へ活かすことの大事さ。上手く立ち回ることで大人たちからは叱責されなくなり煩わしさから解放されること。中身の出来不出来はあまり意味がない。ただ一生懸命にやってなるべく失敗をしないこと。それが重要であった。馬鹿でも一生懸命な人間に世間は優しい。ということ。
この十五年はがむしゃらに頑張った。かつて「出来ない子」のレッテルを貼られた少年はそのイメージ払拭し「出来る奴」と呼ばれる様になった。本当は「出来る奴」というよりも「やってる奴」というのが正しい。
自分に出来ることは素早くやる。出来ないことで取り組む姿勢が大切。それをやり続け様々な現場をくぐり抜けた。真に頭の良い人間には見破られてしまうが、大概の人には真面目で一生懸命な男に見えたと思う。
そして私はかつて自分に足りなかったものを手にした。経験と自信である。これらは非常に役に立った。
何をするにも必要であり、全ての行動に対して説得力を生じさせた。
「あの人が言うならきっとそうなんだろう」
いつしかそう言われる様になっていた。
そして中年となり、私は更なる経験と自信を積み重ねた。そして、とある病を患った。
傲慢である。
これらは知らず知らずのうちに身体に蓄積してゆき気が付いた時には全身から溢れ出る程になっていた。オマケにもう、減ることはない。頭でいくら分かっていても取り除くことができないのである。
世に言う「頑固ジジイ」というのはこうして産まれるのかと納得がいった。
先日、私はふと何故こんな傲慢な人間になってしまったのか考えたことがあった。
きっと私は悔しかったんだと思う。
今まで散々バカだのアホだの言われてきて、それを払拭せんが為に一生懸命やってきた。そのおかげもあって何とか他人様から認められる人間になれたのだが、それを実力と勘違いし、そして「自分はこれだけやってきたんだ。何も知らない奴が偉そうに言うな」という感情を抱く様になってしまったのだ。
一生懸命にやっているからこそ傲慢になってしまう事がある。それを中年になってやっと理解した。
小説を書くという趣味もまた、私を傲慢にしていると思う。
小説はある種、独りで創り続けるものである。しかし私のもうひとつの趣味である音楽は時に何人かの意思を介在させひとつの物を創るという厄介な作業がある。
今回、自分が傲慢だと気が付かされた原因は音楽制作にあった。
十年以上一緒やってきた仲間と初めてアルバムを作ったが思いの外時間がかかった。そして最後に最後で実にくだらないところで衝突した。
結果無事に入稿は完了し配信に至ったわけだが、十年以上も続く関係でこんな事で喧嘩になってしまのかと落胆した。最初は相手の頑固さに腹を立てていたが、その前に仕事で別の相手とも衝突したことを思い出し、自分に原因があるのではと考える様になった。
人間は浅ましいもので最後の最後まで自分に非があると認めるのがいやだった。
しかし家族とも最近頻繁に衝突していたこともありいよいよ私は自分が傲慢を溢れさせ周りにぶつかり続けている岩石様だと悟ったのだ。
二年に及ぶ音楽の企画が終了し、長い付き合いの友人と電話で話し合った時、最後に彼がこんなことを言った。
「ようやく悲願が達成できたと思ったけど、出来た日からもう次が創りたい。またやろう」
私はこの言葉に胸を打たれた。正直もう次はないだろうと思っていたのだでこんなことを言われると思っていなかった。
私は「もちろん」と言ったが心底驚くとともに彼の大人な物言いについ恥ずかしくなってしまった。
私は家庭も仕事も趣味も上手くやろうと思って自分なりに一生懸命である。しかしそれが時に傲慢さを招き、他人に迷惑をかけてしまう。
もう半分くらい生きたかなと思っていたが人生はまだまだ学ぶことが多すぎる。だとしたら人生はよっぽど時間が足らないと思う。
久しぶりに音楽活動で曲をリリースしました。各社配信ストアで視聴できますので良ければ聴いてみてください。
https://linkco.re/rEVGG9xG
3&5recordings「violet」
子どもの頃は無知で馬鹿な少年だった。失敗が多く学びも少ない。嫌な事は全て後回しにする子でしょっちゅう周りの大人に叱られていた。
それがある日気が付いてしまった。失敗から多くを学び次へ活かすことの大事さ。上手く立ち回ることで大人たちからは叱責されなくなり煩わしさから解放されること。中身の出来不出来はあまり意味がない。ただ一生懸命にやってなるべく失敗をしないこと。それが重要であった。馬鹿でも一生懸命な人間に世間は優しい。ということ。
この十五年はがむしゃらに頑張った。かつて「出来ない子」のレッテルを貼られた少年はそのイメージ払拭し「出来る奴」と呼ばれる様になった。本当は「出来る奴」というよりも「やってる奴」というのが正しい。
自分に出来ることは素早くやる。出来ないことで取り組む姿勢が大切。それをやり続け様々な現場をくぐり抜けた。真に頭の良い人間には見破られてしまうが、大概の人には真面目で一生懸命な男に見えたと思う。
そして私はかつて自分に足りなかったものを手にした。経験と自信である。これらは非常に役に立った。
何をするにも必要であり、全ての行動に対して説得力を生じさせた。
「あの人が言うならきっとそうなんだろう」
いつしかそう言われる様になっていた。
そして中年となり、私は更なる経験と自信を積み重ねた。そして、とある病を患った。
傲慢である。
これらは知らず知らずのうちに身体に蓄積してゆき気が付いた時には全身から溢れ出る程になっていた。オマケにもう、減ることはない。頭でいくら分かっていても取り除くことができないのである。
世に言う「頑固ジジイ」というのはこうして産まれるのかと納得がいった。
先日、私はふと何故こんな傲慢な人間になってしまったのか考えたことがあった。
きっと私は悔しかったんだと思う。
今まで散々バカだのアホだの言われてきて、それを払拭せんが為に一生懸命やってきた。そのおかげもあって何とか他人様から認められる人間になれたのだが、それを実力と勘違いし、そして「自分はこれだけやってきたんだ。何も知らない奴が偉そうに言うな」という感情を抱く様になってしまったのだ。
一生懸命にやっているからこそ傲慢になってしまう事がある。それを中年になってやっと理解した。
小説を書くという趣味もまた、私を傲慢にしていると思う。
小説はある種、独りで創り続けるものである。しかし私のもうひとつの趣味である音楽は時に何人かの意思を介在させひとつの物を創るという厄介な作業がある。
今回、自分が傲慢だと気が付かされた原因は音楽制作にあった。
十年以上一緒やってきた仲間と初めてアルバムを作ったが思いの外時間がかかった。そして最後に最後で実にくだらないところで衝突した。
結果無事に入稿は完了し配信に至ったわけだが、十年以上も続く関係でこんな事で喧嘩になってしまのかと落胆した。最初は相手の頑固さに腹を立てていたが、その前に仕事で別の相手とも衝突したことを思い出し、自分に原因があるのではと考える様になった。
人間は浅ましいもので最後の最後まで自分に非があると認めるのがいやだった。
しかし家族とも最近頻繁に衝突していたこともありいよいよ私は自分が傲慢を溢れさせ周りにぶつかり続けている岩石様だと悟ったのだ。
二年に及ぶ音楽の企画が終了し、長い付き合いの友人と電話で話し合った時、最後に彼がこんなことを言った。
「ようやく悲願が達成できたと思ったけど、出来た日からもう次が創りたい。またやろう」
私はこの言葉に胸を打たれた。正直もう次はないだろうと思っていたのだでこんなことを言われると思っていなかった。
私は「もちろん」と言ったが心底驚くとともに彼の大人な物言いについ恥ずかしくなってしまった。
私は家庭も仕事も趣味も上手くやろうと思って自分なりに一生懸命である。しかしそれが時に傲慢さを招き、他人に迷惑をかけてしまう。
もう半分くらい生きたかなと思っていたが人生はまだまだ学ぶことが多すぎる。だとしたら人生はよっぽど時間が足らないと思う。
久しぶりに音楽活動で曲をリリースしました。各社配信ストアで視聴できますので良ければ聴いてみてください。
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3&5recordings「violet」
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