カクヨムで収益化を狙っているけど、どうやらダメかもしれない

三文士

文字の大きさ
14 / 15

傲慢ゾンビ

しおりを挟む
 歳をとる毎に自分が傲慢になっていくのが分かる。

 子どもの頃は無知で馬鹿な少年だった。失敗が多く学びも少ない。嫌な事は全て後回しにする子でしょっちゅう周りの大人に叱られていた。

 それがある日気が付いてしまった。失敗から多くを学び次へ活かすことの大事さ。上手く立ち回ることで大人たちからは叱責されなくなり煩わしさから解放されること。中身の出来不出来はあまり意味がない。ただ一生懸命にやってなるべく失敗をしないこと。それが重要であった。馬鹿でも一生懸命な人間に世間は優しい。ということ。

 この十五年はがむしゃらに頑張った。かつて「出来ない子」のレッテルを貼られた少年はそのイメージ払拭し「出来る奴」と呼ばれる様になった。本当は「出来る奴」というよりも「やってる奴」というのが正しい。

 自分に出来ることは素早くやる。出来ないことで取り組む姿勢が大切。それをやり続け様々な現場をくぐり抜けた。真に頭の良い人間には見破られてしまうが、大概の人には真面目で一生懸命な男に見えたと思う。

 そして私はかつて自分に足りなかったものを手にした。経験と自信である。これらは非常に役に立った。

 何をするにも必要であり、全ての行動に対して説得力を生じさせた。

「あの人が言うならきっとそうなんだろう」

 いつしかそう言われる様になっていた。

 そして中年となり、私は更なる経験と自信を積み重ねた。そして、とある病を患った。

 傲慢である。

 これらは知らず知らずのうちに身体に蓄積してゆき気が付いた時には全身から溢れ出る程になっていた。オマケにもう、減ることはない。頭でいくら分かっていても取り除くことができないのである。

 世に言う「頑固ジジイ」というのはこうして産まれるのかと納得がいった。

 先日、私はふと何故こんな傲慢な人間になってしまったのか考えたことがあった。

 きっと私は悔しかったんだと思う。

 今まで散々バカだのアホだの言われてきて、それを払拭せんが為に一生懸命やってきた。そのおかげもあって何とか他人様から認められる人間になれたのだが、それを実力と勘違いし、そして「自分はこれだけやってきたんだ。何も知らない奴が偉そうに言うな」という感情を抱く様になってしまったのだ。

 一生懸命にやっているからこそ傲慢になってしまう事がある。それを中年になってやっと理解した。

 小説を書くという趣味もまた、私を傲慢にしていると思う。

 小説はある種、独りで創り続けるものである。しかし私のもうひとつの趣味である音楽は時に何人かの意思を介在させひとつの物を創るという厄介な作業がある。

 今回、自分が傲慢だと気が付かされた原因は音楽制作にあった。

 十年以上一緒やってきた仲間と初めてアルバムを作ったが思いの外時間がかかった。そして最後に最後で実にくだらないところで衝突した。

 結果無事に入稿は完了し配信に至ったわけだが、十年以上も続く関係でこんな事で喧嘩になってしまのかと落胆した。最初は相手の頑固さに腹を立てていたが、その前に仕事で別の相手とも衝突したことを思い出し、自分に原因があるのではと考える様になった。

 人間は浅ましいもので最後の最後まで自分に非があると認めるのがいやだった。

 しかし家族とも最近頻繁に衝突していたこともありいよいよ私は自分が傲慢を溢れさせ周りにぶつかり続けている岩石様だと悟ったのだ。

 二年に及ぶ音楽の企画が終了し、長い付き合いの友人と電話で話し合った時、最後に彼がこんなことを言った。

「ようやく悲願が達成できたと思ったけど、出来た日からもう次が創りたい。またやろう」

 私はこの言葉に胸を打たれた。正直もう次はないだろうと思っていたのだでこんなことを言われると思っていなかった。

 私は「もちろん」と言ったが心底驚くとともに彼の大人な物言いについ恥ずかしくなってしまった。

 私は家庭も仕事も趣味も上手くやろうと思って自分なりに一生懸命である。しかしそれが時に傲慢さを招き、他人に迷惑をかけてしまう。

 もう半分くらい生きたかなと思っていたが人生はまだまだ学ぶことが多すぎる。だとしたら人生はよっぽど時間が足らないと思う。


 


 久しぶりに音楽活動で曲をリリースしました。各社配信ストアで視聴できますので良ければ聴いてみてください。

https://linkco.re/rEVGG9xG

3&5recordings「violet」
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

投稿インセンティブで月額23万円を稼いだ方法。

克全
エッセイ・ノンフィクション
「カクヨム」にも投稿しています。

アルファポリスの禁止事項追加の件

黒いテレキャス
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスガイドライン禁止事項が追加されるんでガクブル

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

処理中です...