冒険者ゴートの一生

ケバブ

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二章

セカの街の下級冒険者3

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朝起きると、なにやら良い匂いが部屋まで漂ってきた。
この駆け出し荘に住み始めてから初めての経験に不思議に思いながらも身支度をし水筒に水をいれ下へ降りていく。なぜか受付の前にテーブルが置いてあり皿の上に何かが沢山乗っている。
すると受付のおばあさんに声をかけられた。

「知人にお芋を沢山貰っちゃってねえ、ただ蒸かしてお塩を振っただけだけど、もし良かったらいかがかしら」

「俺芋大好きなんでありがたく頂きます」

朝からついてるな。早速食べよう。村にいた頃はよく食べていた芋。少し懐かしさを覚えつつ食べてみるとホクホクで甘味があり、かけられた塩がとても良いあんばいだ。村で食べてた芋よりかなり美味しい。品種の違いかな。村では丈夫に育つ事が何よりで味は二の次だったし。
三個の芋を食べてお腹一杯。今日も元気に働けそうだ。

「お芋ご馳走さまでした。それでは行ってきますね!」

「はい。いってらっしゃい」

今日のおばあさんはいつもより楽しそうだ。


「下級の労働依頼か…」

冒険者組合に着いて依頼確認。すると今日は街の中での労働系の依頼が入っていた。本来街の外に出ないような安全な依頼は見習いに回って来ることが多いのだがなぜ下級の方に来たのか。不思議に思い依頼内容を確認すると納得。この依頼かなりの重労働だ。

・農作物の積み降ろし 十時から一七時まで 日給一万

農作業ではなく積み降ろしだけで一日仕事ということは、重い荷物を運び上げ下げするのを一日中やるということだ。並の体力じゃ絶対に持たないな。
でも安全な職場でこの報酬は非常に魅力的だ。依頼内容的に鍛練にも繋がるだろうし、ここはとられないうちに依頼を受けてしまおう。

依頼書を持って受付へいき作業場の場所を教えてもらう。東部の商業エリアにあるようで、駆け出し荘からも結構近い。これなら迷うことも無いだろうし行きますか。


「すみません、依頼を受けてきたんですが」

指定された場所に着くとそこには馬車が三台停まっていて従業員らしき人が懸命に倉庫から箱を積んでいる。きっと農作物を急ぎ運ばなければいけなくなったのだろう。俺の声が聞こえたのか指示を出していた少しふくよかな人物がやって来た。

「君が依頼を受けてくれた冒険者か、助かったよ。みての通り急ぎ農作物を隣街まで運ばなくてはいけなくなってね。いつもなら特に問題は無かったんだが、若手の従業員で怪我や風邪が重なってね。どうしても人手が足りなかったんだよ。体格も良いし活躍期待してる。作業は簡単。倉庫の箱をひたすら馬車に積むだけだ。正直相当大変な作業になると思うし、休憩時間外でもそれぞれの判断で水分補給はして良いからさ。よろしく頼むよ」

「わかりました。あ、ゴートと言います。よろしくお願いします」

名前を言うのをすっかり忘れていたので改めて伝えると、相手も慌てて自己紹介をしてくれた。

「ごめん、慌てて自己紹介もまだだったね。私はネル。この街で運送業と雑貨店を営んでいるんだ。店共々よろしく」

挨拶も済んだので10時には少し早いが作業に入ろう。
作業着の上を脱いで頭も普通の布を巻きベルトを外す。本格的に冒険者には見えなくなったかな。

「ゴート君そろそろお昼休憩にしよう!」

「はい!あと二つで一段落なのでそれを運んだら休みます」

残り二つの箱もパッと積み終える。仕事を初めてから二時間と少し。小休止を挟みつつひたすら箱を積み続けた。一箱二十キロ弱の箱をひたすら運び、積み上げる作業は確かに重労働だったが、森での依頼のように周りを警戒しなくて済むし鍛練にもなる。それにこういう単純作業は慣れたものである。

予備の布で汗を拭っているとネルさんがやって来る。

「ゴート君は凄いね!体力があるし何より一生懸命だ。お昼は持ってきてるのかい?無ければ一緒にどうだい?従業員の分もまとめて作ってもらっているんだ。
パンとスープだけだけど、スープは具沢山で美味しいよ」

確かに少し離れたところから良い匂いが。汗も結構かいたしスープは魅力的だ。厚意に甘えて頂くとしよう。しかし今日は朝に引き続きご馳走になることが多いな。なんかついてる日だな。

ネルさんや従業員と輪になって昼食をとる。確かにスープは具沢山でとても美味しい。特に今が旬なのか春カブと芋が沢山入っている。因みにこのスープはネルさんの奥さんが作っているらしく、ネルさんが惚気ていた。

午後も小休止を挟みつつひたすら作業した。17時になる頃には流石に少しくたびれてきたが何とかやりきった。下級の労働依頼恐るべし。

「ゴート君お疲れ様。本当に助かったよ。これ完了証明ね」

汗を拭き作業着を着直していると、ネルさんから完了証明を渡された。無事依頼完了だ。依頼達成に満足しながら帰る準備をしているとネルさんが少し悩みながら話をきりだしてきた。

「ゴート君、相談があるんだけど、ゴート君の都合が良ければ明日も同じ依頼を受けてもらえないかい?勿論指名依頼という形をとって、報酬も今日の額に加えて三千エル追加するよ」

まさかの指名依頼相談に驚いた。確かに重労働だけど安全で確実にこなせる依頼をわざわざ指名依頼にしてまで自分に頼む理由がわからない。指名依頼って普通の依頼より依頼者側の負担も大きかった気がするし。

こちらの困惑が伝わったのか、ネルさんが話を続ける。

「なぜ指名依頼にするのかが気になるかな?理由は簡単、ゴート君に指名依頼を出した方が明らかにリスクが低いからさ。明日確実に誰かが依頼を受けてくれるとは限らないし、仮に受けてくれたとしてもその冒険者がゴート君ほど真面目に働いてくれるとは限らない。それに考えてみて欲しいんだけど指名依頼を出すことによる私の負担はほぼ無いに等しいんだよ。負担額が増えるといっても下級依頼の範囲だからね」

自分の感覚ではもったいないと感じたけど、こんな大荷物を扱う商人にとっては当たり前の選択なのかもしれない。勿論今日積んだ荷物も商品の一部でしか無いだろうし。冒険者とは違う、依頼側の考え方の一部を学べたような気がして少し賢くなった気分だ。

「そういう事であれば、指名依頼ありがたく受けたいと思います」

「依頼は今日の夜出すことになると思うから前もって伝えておくけど今日と同じ時間に来てくれると助かるよ」 

「わかりました。明日もよろしくお願いします」

ネルさんに明日も依頼を受けることを約束して帰路につく。

共同浴場に寄って汗を流したらお楽しみ、バーガーの時間。おっちゃん曰く筋肉を使った日はとにかく肉が良いらしい。助言に従い肉がたっぷり挟んであるボリューミーなバーガーを食べる。うまい。肉が筋肉に染みる気がする。

明日も気合いを入れて頑張ろう。
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