冒険者ゴートの一生

ケバブ

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三章

セカの街の冒険者達5

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雨季もそろそろ終わるかという時期に差し掛かってきた頃、俺は冒険者組合で魔狼の討伐がされたことを聞き森での依頼を再び受けていた。

依頼内容は以前も受けたことがあるヨギ草の納品だ。雨季の間は余り受ける人が居ないらしく何時もより少し報酬が高くなっていたからだ。

久しぶりに入る森は連日の雨の影響か前来た時よりも鬱蒼としているように感じる。少しだけ警戒心を強めながら穂先が鉄となった新しい槍を握り森へ入って行った。

警戒しながら森へ入ったものの蓋を開けてみれば何時通りのヨギ草採取で拍子抜けというか一安心というか。

「前採集した所を確認して回れば大丈夫そうだな…」

一つ目の納品袋が半分までいったところで水の魔道具を取り出し喉を潤し、プラムをかじる。街の外に依頼で行く時に持っていく果物の変化で季節の移ろいを感じるとは、冒険者らしいのか風情がないのか。なんて下らないことを考えつつそろそろ出発しようと身体を解していたその時、そこまで遠くない所から腹に響くような獣の咆哮が聞こえてきた。

「っ!?」

直ぐ様体勢を低くし耳を澄ます。

改めて聞いてみると鳴き声の種類は二種類で争っているのだろうか、かなり激しい。恐らく片方は複数の鳴き声がしたから狼かなにかだろう。となると鳴き声の感じと今もなお複数の狼と戦えている事を考えると、もう片方の生き物として考えられる生き物は熊位しか思い付かない。

おおよそ状況が掴めたところで避難を始めなければ。まだ依頼のヨギ草は集まっていないが、安全第一だ。万が一熊と狼が争っているところに出くわしでもしたらたまったもんじゃない。

鳴き声のする方向をよく聞き森から出ようと移動を始める。

野性動物の嗅覚では既に存在がばれているかもしれないので、下手に音をたてて注意を引かないように静かに離れないと。


ゆっくりとだが着実に距離を離していき、少しずつ鳴き声が小さくなっていく。

この調子で距離を離すことが出来ればと思った瞬間、片方の鳴き声が聞こえなくなった。


クソッ!


内心悪態をつきながら槍を背負い森の外に向けて走り出す。

熊が殺られたのかこっちに向かって逃げているのかは知らないが、結構な数の足音と狼の鳴き声がかなりの速さで近づいている。

「ガルアァァア!!」

必死に走るも狼の鳴き声は段々と大きくなっていく。

メキメキと枝を折るような音が聞こえて来た。これ以上速さを維持するのはは足も息も限界だ。

逃げ切るのは不可能と判断し一瞬後ろの様子を伺うと、そこには満身創痍でこちらに向けて逃げてくる熊とそれを追う普通の狼より一回り大きい目が真っ赤な狼が五体。

「畜生っ!赤い目!魔狼じゃねえか!」

大きさと熊を襲う獰猛さ、そして普通の動物ではあり得ないほどの真っ赤な目。後ろにいる狼が魔狼なのは明らかだ。

今は木々が邪魔しているのと、熊がギリギリのなか反撃しているからか、狼がいたぶって遊んでいるお陰で追い付かれてないが時間の問題だ。

このままでは後ろの熊が抵抗しなくなり次第何匹かこっちに来るかも知れない。

考えてる暇はない。
どうにかして熊が暴れつつ足を止めるようにして、囮になって貰わないと。

ポケットの小石握り一瞬振り向く。

熊と目が合う。

熊からもお前を囮にして生き延びるのだという強い意思を感じる。実際にそう思っていたかはわからないが、生きたいという本能がそう感じさせたのかもしれない。

だがこちらもこんな所で死んでられないんだ。

手首のスナップを利かせ投擲。当たったかどうかの確認はせずに斜めに再び全力疾走。

「グァアア!?」

鳴き声と急に目に走った衝撃のせいで暴れまわったため折れる枝の音を聞くと熊の足止めは出来たようだ。


そのまま一心不乱に駆け抜け、森を出て少ししたところで足に限界がやってきた。這う這うの体で倒れ込みながらも目線だけは森へと向ける。

「冗談じゃっ、ねえぞっ」

後ろから足音や鳴き声はしなかったはずだ。

それなのに何故森から赤い瞳を持った狼がゆっくりと出てくるのか。

一体なのは不幸なのかせめてもの救いなのか。

逃げるほどの体力はもう無い。とにかく今は戦うしかない。

「来るなら来いっ!」

魔狼と戦ったことは有るにはある。だがその時は罠で傷を負わせた上で村の男衆で安全に戦ったのだ。

こんな障害物一つもない平原で一対一なんて想定外も程がある。

どうやって獲物をいたぶろうか考えているのだろうか、ニヤリと笑っているようにも見える魔狼を睨み付け俺は改めて気合いを入れ直し槍を構えた。
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