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三章
セカの街の冒険者達6
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自分が負けるなんて微塵も思っていないのかはたまた、魔獣故の昂りか、魔狼が狂気染みた顔つきで駆けてくる。
このまま勢い良く飛びかかられてはたまったもんじゃない。
魔狼がある程度近付いた所で木製の槍をあえて横向きに投げる。
非常に素早い魔狼には当たる筈もなく、大きく横に避けられるがこれで良い。横に避けたことによって助走の分の力が無くなった。
今のうちに上着を脱ぎ左腕に巻きつけ鉈を逆手に持ち、右手に槍を構える。
左腕を前に出しつつジリジリと狼との距離を詰める。
首に牙や爪が届いたら確実にやられる。かつて無い緊張感の中槍をつき出しつつ時には魔狼の引っ掻きを避けつつ間合いを調整していく。
「ガルァア!」
焦れったいやり取りに痺れを切らしたのか、魔狼が牙を剥いて前に出している左腕に噛みついてきた。
「っし!」
魔狼が左腕に噛みつこうと大きく口を開けて飛び込んできた瞬間、左腕を口に対し直角に構え思いっきり突っ込む。
ビリビリッと左腕に巻いた上着が裂け腕に牙が突き刺さる。しかし腕に巻いた上着と牙の短い口の奥の方に腕を押し込めたおかげでまだ耐えられる。
「っつ、オラァ!」
右手の槍を魔狼の左目に向けて思い切りねじ込む。
「ガァアアア!」
魔狼が怯んだ瞬間に左腕を引き抜き鉈で右前足に一撃。
再び魔狼と生まれる距離。槍は目玉をつけたまま抜け落ちてしまった。
片目を潰された上、右前足にまで見過ごせない傷を与えた相手だ。魔狼には既に一切の驕りはない。
「クソッ!脳まで刺さってねえじゃねえか」
予定では槍の一撃で脳まで突き刺し一撃で決める予定だった。しかし魔狼が想像以上の反応を見せ目玉を潰す所までしか刺さらなかった。
左腕もまだ動くが流れ出る血は無視できない。手持ちのロープで手早く腕を縛り止血。鉈を右手に構え直し、左手には木製の槍。
再び襲いくる魔狼。
爪による引っ掻きは魔狼の足元が安定してない今、落ち着けば避けられる。隙を見て槍を突き出すもさっきの攻撃が余程堪えたのか予備動作で直ぐ距離をとられる。
体力的にもキツくなってきた。何処かで勝負に出ないと不味い。何か手段は…。一瞬の思考隙。
ズシンと体に重い衝撃。
「うぐっ」
ここに来て爪でも噛みつきでもなく体当たり。
予想外の攻撃に反応できず軽く飛ばされ倒れてしまう。
このままじゃ殺られる。咄嗟に槍を投げる。魔狼が一瞬怯んだ隙に鉈を左手に、右手にはナイフ。持ち変えたと同時に魔狼が走り出す。
「そのまま!」
突然の声に驚きつつも声に従いその場で迎え撃とうと構える。魔狼が俺を殺そうと飛びかかってきたその瞬間、目に入ってきたのは綺麗な赤。そのまま魔狼に吸い込まれるように当たったかと思うと爆音。さっき食らった魔狼のタックルよりも強い衝撃と結構な熱さを感じながら再び吹っ飛ばされる。
飛ばされながらも体勢を整え魔狼を見ると、所々焦げていてボロボロではあるが真っ赤な目は死んでいない。
すかさず右手のナイフを狼の左側に投擲し走り出す。
左側にナイフが来たことで右側に飛ぶ魔狼。そこを狙いさらに鉈を投擲。比較的万全な左前足で鉈を払う魔狼だが、そうなるとボロボロの右前足に体重がかかり体勢が崩れる。
走りながら拾った槍を魔狼の左目に全体重を乗せぶち込んだ後柄を蹴り離れる。
動かない魔狼。あんなに赤かった目が真っ白になっている。右目だけだが。
取り敢えず街に戻らないと。いや先に腕を洗うところからか。喉もカラカラだ。
急ぎ上の肌着を脱ぎバッグから水の魔道具を取り出し左腕を洗い、ついでに水を一口。幸い骨まで到達してる傷はない。後で医療組合で見て貰う必要は有るだろうけど。
「君!大丈夫かっ!?」
「なんとか…。さっきの魔法はあなたが?」
「ああ。魔獣相手だったし明らかに危険だったから介入させて貰った。私はアーク、セカの街の五級冒険者だ」
凄い魔法だと思ったけど五級冒険者だったとは俺の運も捨てたものじゃ無いかもしれない。
「助けてくれてありがとうございます。俺の名前はゴート、同じくセカの九級冒険者です」
「九級だって!?何故九級冒険者が魔狼と…そもそもこんなところに魔狼なんて…。いや、今は街に戻ることが先決だな。この森になにか起きている事は確実のようだし一緒に冒険者組合へ行こう」
「助かります。今は普通の狼や猪でも苦労しそうなんで…」
アークさんの助けを借りて武器を回収し今までの経緯を説明しながら街へ戻る。
アークさんは五級への昇級のため三ヶ月程他の街で依頼を受けていたらしく、その後にこの街に来た俺は面接点がなかったようだ。
「なるほど。組合が討伐を確認した以上一体は確実に仕留めたのだろう。想定外だったのはそれ以外に六体も魔狼が居たことだ。そもそもあの森で魔狼が同時に七体も発生したなんで聞いたことがない。これは組合だけでなく領主様も含め検討せねばなるまい」
「という事は今起きてることは異常事態ってことですか?」
「間違いなくな」
「これからどうなっちゃうのかな…」
魔狼との激戦の疲れ、相対した時の無力感や魔狼の複数出現。不安や焦燥。冒険者になって初めて湧き上がる感情に弱音が涙と溢れ出す。
「ゴート、顔を上げ胸を張れ」
アークさんからの予期せぬ言葉に顔を上げる。
先を歩くアークさんはこちらを振り向くことなく語りだす。
「お前は九級冒険者ながら魔狼の群れから生存し、単体とはいえ魔狼相手にあそこまで戦い、結果生き延びた。そしてお前が生き延びたからこそ魔狼の複数出現という街にとって非常に重要な情報を得ることができたんだ。情報を持ち帰る。冒険者としてこれ程大切なことは無い。だからこそだ。街に帰り、冒険者組合に入る時は胸を張り、冒険者らしい顔をするんだ」
「一方で冒険者は色々な感情、思いを経験しなければ強くはなれない。…だから門の前までは存分に感情を吐き出せ。それが良い冒険者への糧となる」
俺は暫くの間アークさんの足跡を追いながら街へ戻った。
このまま勢い良く飛びかかられてはたまったもんじゃない。
魔狼がある程度近付いた所で木製の槍をあえて横向きに投げる。
非常に素早い魔狼には当たる筈もなく、大きく横に避けられるがこれで良い。横に避けたことによって助走の分の力が無くなった。
今のうちに上着を脱ぎ左腕に巻きつけ鉈を逆手に持ち、右手に槍を構える。
左腕を前に出しつつジリジリと狼との距離を詰める。
首に牙や爪が届いたら確実にやられる。かつて無い緊張感の中槍をつき出しつつ時には魔狼の引っ掻きを避けつつ間合いを調整していく。
「ガルァア!」
焦れったいやり取りに痺れを切らしたのか、魔狼が牙を剥いて前に出している左腕に噛みついてきた。
「っし!」
魔狼が左腕に噛みつこうと大きく口を開けて飛び込んできた瞬間、左腕を口に対し直角に構え思いっきり突っ込む。
ビリビリッと左腕に巻いた上着が裂け腕に牙が突き刺さる。しかし腕に巻いた上着と牙の短い口の奥の方に腕を押し込めたおかげでまだ耐えられる。
「っつ、オラァ!」
右手の槍を魔狼の左目に向けて思い切りねじ込む。
「ガァアアア!」
魔狼が怯んだ瞬間に左腕を引き抜き鉈で右前足に一撃。
再び魔狼と生まれる距離。槍は目玉をつけたまま抜け落ちてしまった。
片目を潰された上、右前足にまで見過ごせない傷を与えた相手だ。魔狼には既に一切の驕りはない。
「クソッ!脳まで刺さってねえじゃねえか」
予定では槍の一撃で脳まで突き刺し一撃で決める予定だった。しかし魔狼が想像以上の反応を見せ目玉を潰す所までしか刺さらなかった。
左腕もまだ動くが流れ出る血は無視できない。手持ちのロープで手早く腕を縛り止血。鉈を右手に構え直し、左手には木製の槍。
再び襲いくる魔狼。
爪による引っ掻きは魔狼の足元が安定してない今、落ち着けば避けられる。隙を見て槍を突き出すもさっきの攻撃が余程堪えたのか予備動作で直ぐ距離をとられる。
体力的にもキツくなってきた。何処かで勝負に出ないと不味い。何か手段は…。一瞬の思考隙。
ズシンと体に重い衝撃。
「うぐっ」
ここに来て爪でも噛みつきでもなく体当たり。
予想外の攻撃に反応できず軽く飛ばされ倒れてしまう。
このままじゃ殺られる。咄嗟に槍を投げる。魔狼が一瞬怯んだ隙に鉈を左手に、右手にはナイフ。持ち変えたと同時に魔狼が走り出す。
「そのまま!」
突然の声に驚きつつも声に従いその場で迎え撃とうと構える。魔狼が俺を殺そうと飛びかかってきたその瞬間、目に入ってきたのは綺麗な赤。そのまま魔狼に吸い込まれるように当たったかと思うと爆音。さっき食らった魔狼のタックルよりも強い衝撃と結構な熱さを感じながら再び吹っ飛ばされる。
飛ばされながらも体勢を整え魔狼を見ると、所々焦げていてボロボロではあるが真っ赤な目は死んでいない。
すかさず右手のナイフを狼の左側に投擲し走り出す。
左側にナイフが来たことで右側に飛ぶ魔狼。そこを狙いさらに鉈を投擲。比較的万全な左前足で鉈を払う魔狼だが、そうなるとボロボロの右前足に体重がかかり体勢が崩れる。
走りながら拾った槍を魔狼の左目に全体重を乗せぶち込んだ後柄を蹴り離れる。
動かない魔狼。あんなに赤かった目が真っ白になっている。右目だけだが。
取り敢えず街に戻らないと。いや先に腕を洗うところからか。喉もカラカラだ。
急ぎ上の肌着を脱ぎバッグから水の魔道具を取り出し左腕を洗い、ついでに水を一口。幸い骨まで到達してる傷はない。後で医療組合で見て貰う必要は有るだろうけど。
「君!大丈夫かっ!?」
「なんとか…。さっきの魔法はあなたが?」
「ああ。魔獣相手だったし明らかに危険だったから介入させて貰った。私はアーク、セカの街の五級冒険者だ」
凄い魔法だと思ったけど五級冒険者だったとは俺の運も捨てたものじゃ無いかもしれない。
「助けてくれてありがとうございます。俺の名前はゴート、同じくセカの九級冒険者です」
「九級だって!?何故九級冒険者が魔狼と…そもそもこんなところに魔狼なんて…。いや、今は街に戻ることが先決だな。この森になにか起きている事は確実のようだし一緒に冒険者組合へ行こう」
「助かります。今は普通の狼や猪でも苦労しそうなんで…」
アークさんの助けを借りて武器を回収し今までの経緯を説明しながら街へ戻る。
アークさんは五級への昇級のため三ヶ月程他の街で依頼を受けていたらしく、その後にこの街に来た俺は面接点がなかったようだ。
「なるほど。組合が討伐を確認した以上一体は確実に仕留めたのだろう。想定外だったのはそれ以外に六体も魔狼が居たことだ。そもそもあの森で魔狼が同時に七体も発生したなんで聞いたことがない。これは組合だけでなく領主様も含め検討せねばなるまい」
「という事は今起きてることは異常事態ってことですか?」
「間違いなくな」
「これからどうなっちゃうのかな…」
魔狼との激戦の疲れ、相対した時の無力感や魔狼の複数出現。不安や焦燥。冒険者になって初めて湧き上がる感情に弱音が涙と溢れ出す。
「ゴート、顔を上げ胸を張れ」
アークさんからの予期せぬ言葉に顔を上げる。
先を歩くアークさんはこちらを振り向くことなく語りだす。
「お前は九級冒険者ながら魔狼の群れから生存し、単体とはいえ魔狼相手にあそこまで戦い、結果生き延びた。そしてお前が生き延びたからこそ魔狼の複数出現という街にとって非常に重要な情報を得ることができたんだ。情報を持ち帰る。冒険者としてこれ程大切なことは無い。だからこそだ。街に帰り、冒険者組合に入る時は胸を張り、冒険者らしい顔をするんだ」
「一方で冒険者は色々な感情、思いを経験しなければ強くはなれない。…だから門の前までは存分に感情を吐き出せ。それが良い冒険者への糧となる」
俺は暫くの間アークさんの足跡を追いながら街へ戻った。
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