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しおりを挟む「はじめまして。NO.100そして、満長誠様。わたくしはシュナ。ここまで足をお運びくださった中、誠に申し訳ありませんが、NO.100。わたくしの主人、ライディーン=クウォーツ様に貴方を会わすわけにはいきません。主人公の望みはあなただけです誠様。なので、どうかお引取りくださいNO.100」
肩がふんわりと膨らみ、胸元には大きな黒いリボン、白いレースがふんだんに施されたスカート。いわゆるメイド服を身に纏ったシュナは、その服に合わせたデザインのヘッドドレスがずり落ちないようにか可愛らしく深く礼をした。
踵の高い靴を履いているからだろうか、華奢なわりに大きくに見えた。
「永遠の人形はお呼びでないってか。俺だってあいつに会いたくて会いに行くわけじゃねえよ」
「どうせ殺されるんだ。イオがいたって同じだろう」
俺達の挑発的な言動にもシュナは眉一つ動かさなかった。
「そうですか。・・・・仕方ありませんね」
シュナはそう言うと無表情で拳を握り、腰を落とす。戦う気らしい。あの格好で。
「いいのか?女だからって手加減しないぜ」
「構いません。わたくしに痛覚はありません」
「まさかこいつ、イオと同じ、っ!」
シュナの正体を悟ったマコトが瞬時にを抜き構える、シュナは初めて表情を変えた。それは、まるで人間を馬鹿にするような嫌な顔である顔。
「絶魔だけでは私は倒せません。誠様」
「ずいぶんな自信を持っているみたいだな。だが、僕は女だろうと容赦はしない」
「構わないと申した筈です。その意味のない刀ではわたくは勿論、虫一匹傷一つ付けることはできませんから」
その馬鹿にした表情を一切変えないシュナを見て、マコトはうろたえた。
「そんな、はったりを」
「はったりではございません。主人は『その刀は二本同時に使わなければ意味をなさない』そうおっしゃりませんでしたか?」
マコトは明らかにシュナに気圧されていた。
そして、仕方がないというような顔で 魁天に手をかけた。しかし、その顔に微量の余裕さえみられない。
駄目だ。
俺は、 魁天を抜こうとしたマコトの右手を押さえた。
「待て。こいつは、俺がやる」「イオ?」
俺にはなぜマコトが二刀を同時に抜きたがらないのかはわからない、だがライディーンの持っていた刀だ。何か裏があるはず。
それなら、俺が戦うまでだ。
「No.100、無駄です。貴方にわたくしは倒せません」
「どうかな?」
俺は、脚部のリミッターを外し腕まくりをした。
前へ跳躍。拳を握ったままシュナに突っ込む。シュナは相変わらず表情を変えず、構えの形のままだった。機械といっても相手は女。体型による性能上、力の設定は男より弱いはず。
このまま勢いで突っ込めばいける。
俺は、シュナを見据え拳を振るう。
「っ!」
しかし、シュナは軽々と俺の拳を手の平に受け止め、両肩を掴み飛び越え、着地と同時に背中を膝蹴りした。
「くそっ」
振り返るとすぐに強烈な右フックが繰り出される。俺はそれをバックステップで受け流し、顔面への蹴りを食らわす。しかし、シュナは怯まない。
「くそ、やっぱ核を見つけないとダメか」
シュナの容赦ない手刀の連打を紙一重で避けながら、核のありかを捜す術を考えた。
「っあ!」
探り探りの攻撃と防御の末、足がもつれた。無防備になった俺を見つめるシュナの勝利に満ちた顔と刃物のような鋭い手刀。あんなの食らったら核を叩かれなくとも一発で動作能力を失ってしまう。
ギィィィィィン!
負けを覚悟し、思わず目を閉じた瞬間に響いた金属が激しくぶつかり合う音。
「マコト」「・・・・っ、だ、大丈夫か?」
マコトはシュナの攻撃の衝撃で波打った刀を必死に握ってこちらを振り返った。受け止めたというのか?俺でさえ負けを悟ったあの攻撃を。彼女はとどめを刺すつもりだった。かなりの力だったはずなのに。
一体何なんだ?こいつの力は。
「・・・・」
「邪魔をされては困ります誠様。たとえ貴方様であろうと」
「っ!」
シュナはマコトの襟をつかむと、抵抗する間さえ与えず、ボールを投げるかのようにいとも簡単に投げ飛ばしてしまった。マコトは近くの大樹に背中を激しく強打。そのままずるずると地に突っ伏した。
「マコト!」「人の心配をしている場合ですか?No.100。するならばまずご自分の身の安全を考えたほうがよろしいですわ。貴方はここでわたくしに壊されるのですから」
「さて、どうかな?」
俺は、シュナの手刀を受け止め、右腕を抱え込み、肩に背負い込み投げ付けた。西洋武術の技一本背負い。しかし、シュナは足が浮いたと同時に俺の背中を踏み台にし、高く跳躍。だが、これは俺の計算通り。重力に逆らう事なくスカートが翻り、人工皮膚に覆われた無機質な脚部パーツがあらわになる。俺は、脚部の要であり弱点である膝の裏に指を食い込ませ、ぼきりと折る。シュナが怯んだ隙にもう片足を同様に折る。両足を折られたシュナは、着地もままならずそのまま地面に崩れ落ちた。
「・・・・それで勝ったおつもりですか?」
シュナは動く術を失ったはずなのに冷静だった。
「わたくしは、主人に作られ愛された唯一の永遠の人形。こんな所では壊れません」
「っ!」
シュナは両眼をかっと開く。すると、そこから鋭い光が生まれ、俺の右の脇腹あたりを砕く。焼けた服と脇腹がプスプスと音を立てて皮膚が溶けた。
「〈高温光線〉の、挿入銃だと?」
頭蓋にレーザー銃を埋め込まれていたということは彼女の視界は右目だけだった筈だ。それであれ程の動きを可能にしていたということは、超音波などの探知機能まで備えているのだろう。しかし、パーツが増えるということは単純に重量も増す。彼女はかなりの改造を施されているのだろう。さすが変態と言うべきか。驚く俺に向け、シュナは左目から〈高温光線〉を打ち続ける。
「これじゃ近づけねぇ・・・!」
「う・・・・イオっ!」
意識を取り戻したマコトが絶魔を抜き、こちらへ駆け出す。
「来るな!」「でも・・・」
「いいから、そこで待ってろ!お前がここで死んだら元も子もないだろ」
どこだ・・・。シュナの核は。
心臓部。
いや、攻撃の時に庇うそぶりは見せなかった。腹部も同様だ。脚部はさっき破壊したも同然だ。
じゃぁ、あの自信がどこから出てくるんだ。
「どうしました?もう降参ですか?」
〈高温光線〉の連射は止まることなく続いた。
「イオ・・・・っ」
マコトはもどかしそうに剣をにぎりしめている。だが、奴の目的は明らかだ。みすみす渡すわけにはいかない。
ジュッ。
避け切れない光線が身体をかすめ、少しずつ溶かしていく。足が動かない奴に近づきも出来ないなんて。
「・・・・?」
しかし、シュナの打つ光線が俺の足や腕の可動部や、頭に当たる気配はまるでない。おかしい。狙いがまるでデタラメだ。
・・・・変だ。
そもそも、片目だけの挿入銃は、自動追従機能でも入って居ない限り狙いが定まりづらい上に口径はかなり小さい。しかし、運動機能と相性の悪い自動追従機能が備わっている割には彼女の動きが良すぎる。
それに、当たっても核や致命傷を与える部分に当てることは難しい。
そして、〈高温光線〉は明らかに俺を狙ってはいない。
シュナは自分を守っているんだ。
いや、性格には自分の左目を。
「はっ、わかったぜシュナ」
俺は身体を屈め、足元の石を拾い投げる。
「最後の悪あがきですか」
シュナの挿入銃によって石は一瞬にして灰になった。しかし、それはシュナに近づくためのフェイク。俺は、シュナとの間合いを一気に詰め、右手の人差し指と中指を重ねて振りかざす。
「お前の核は左目だぁぁぁ!」
指は、シュナの左目に深く刺さり、体中に電流が走った。シュナは轟音にも似た悲鳴を上げ、パーツが砕けた場所から機械油はがとめどなく溢れた。
これが、永遠の人形の死。
シュナの身体は、電気を帯びたまま痙攣していた。
それは、あまりにも悲痛な姿。
「あり、がと・・・」
「っ!」
だが、俺を見たシュナから思わぬ言葉が発せられた。
「これ、で‥‥あの、人か、ら‥解放され、る‥‥‥」
「・・・・え?」
シュナは、その言葉を最後にそのまま動かなくなった。それは、悪の呪縛から解放されたとても穏やかなだった。
俺は、冷たく重い彼女を強く抱きしめた。
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