【R18】嫌いで仕方のない相手なのに惚れ薬をかぶりました

AMふとん

文字の大きさ
14 / 16

14話

しおりを挟む

「……まさか逃げ出すとはな。どれだけ第二部隊が無能かということを知らしめた結果というか」
「イース、他の部隊の話よ。それ以上言うのはやめておきなさい」
「まあ、その通りか」

 人手不足だとガリュツィは告げていたが、さすがに限度というものがある。イースは静かに息を吐き出しながら隣に立つミエルを見つめた。今日も楚々とした白いワンピースを着ている。銀の髪と青い瞳の彼女によく似合ったし、なにより、硬い防具に体を包んではいないから、鍛えた中でも、ところどころの柔らかさは見えた。例えば胸とか。

 イースは無表情にミエルをじっと見下ろした。そうしなければ勝手に顔がおかしくなる。「……嫌、だったのに……」 ミエルは小さく呟き、ふいと顔を逸らした。こうなれば、騎士団の威信をかけた捜索である。彼らに再度の任務が回ってきたのは、おかしくはない話だった。

「ネズミ男は私達の顔は、もう知っているでしょう。だったら意味がないと思うんだけど」
「釣れるのがあいつ一匹じゃないだろ。規模を考えると複数人が売買を行ってるはずだからな」
「そう、だけど……」

 ミエルだって、わかってはいる。けれども、どうにもむずかゆい。
 イースとは、残り数日ばかりの胸の痛みに知らないふりをしてしまえば、きっとどうでもよくなることなのに。こうして、まるで似合わない服を着て、彼の前で着飾って隣に立つだなんて、ひどく恥ずかしかった。

(鏡の前に立って見たときは滑稽だったわ)

 ひどく見慣れないものだ。いや、リョート家にいたころは、これでもいっぱしの格好はしていたつもりだが、そのときよりもずっと背が伸びているし硬い表情をしていた。(でも) かわいい、と言われたイースの言葉を思い出して、おべっかに決まっている、と首を振った。今日はいつものように髪を上げているから、真っ赤な首元がイースからもよく見えた。

「ミエル?」

 お前、どうしたんだと声をかけようとしたときだ。

「おう、イース。ミエルか」
「そろそろ交代だ。俺たちも見回りに参加する」
「え、ああ、ん、ん?」

 聞き覚えのある声の主に目を向けて、彼らはパキリと時をとめた。ゴツゴツした筋肉の男たちが、仲良く手を繋いでこちらに手を振っている。もちろん、同僚であり、自身は彼らの後輩である。しかし。ミエルとイースは目を魚のようにして彼らを見つめた。片方は、ひらひらと可愛らしい服を着ている。下手をすると、ミエルよりも愛らしい服だ。「…………」 ミエルはそっと自身の服の裾をひっぱった。何か虚しくなった。

「い、いえ先輩方、そ、それは、ちょっと」
「ははは! まっさか俺たちもおかしくなったわけじゃねえよ! 幻影魔法だ!」
「あ、あ、ああー……あ?」

 納得をしたような、していないような。イースはこめかみに人差し指を置きながらも困惑した。

「お前達だけで見回りをさせるのも効率が悪い。なんとかならんかとうちの団長が第二部隊の団長に提案したんだ。幻影魔法が得意なんだろう?」

 変化までさせてしまうと、さすがに普段の動きができないからなあ、とふりふりと服を揺らす彼と、うなずきながらしっかと手をつなぐ男二人に、な、なるほどお、とさすがに後輩であるため、ミエルとイースは静かに返事をした。中々体をはっている。

『うちの連中は、お前以外でかいガタイのやつらばかりだからな! お前に断られると、さすがにきついと思っていたところだ!』

 以前にゲラゲラと笑っていた団長の姿をイースは知っている。まさか本当にさせるとは、と呆れたような気持ちだ。それじゃあ、お願いしますとなんとも言えない顔つきで返答をしながら、去っていく先輩二人の姿を見つめた。いなくなると、イースはミエルの手を静かに握った。「え、あの、イース……」 すでに見回りの任は解かれている。それなら、こんなことをする必要はない。

 キスをしようとした。でも明らかにひと目がある。イースはミエルの手をつなぎながら、ずんずんと進んでいく。路地裏に連れ込み、壁に押し倒しキスをした。驚きながらもミエルもイースに合わせた。訓練が終われば、互いにキスをする。考えてみればひと月前に繰り返していたことだ。それが、すっかりミエルの部屋に変わってしまっていたわけだが。

「……イース、その」

 困惑するミエルの顔を見ながらも、イース自身、おかしくなっていることに気がついていた。だから引く。そう思っていたはずだった。なのに、ちらりと彼を見上げながら、「……するの?」 彼女の小さな声を聞くと、たまらなくて、勝手にミエルのふとももに手が伸びてしまっていた。「あ……」 するすると小さな布をひきぬく。荒い息を吐き出しながら、彼女にキスした。


 ***


「ん、んっ、ん、ん、ん……っ!!」

 ミエルは必死に声を押さえ込み、イースに尻をつきつけた。壁に両手をつきながら、自身の秘所でイースのペニスをこすっている。ぬとぬとと滑りがよく、ふと間違えれば、埋め込まれてしまいそうだ。

「ふざけんなよ、お前、かっわいいんだよ……っ!!」
「いやあ……」

 ボタンの隙間から手を伸ばして、ミエルの豊満な胸を揉みしだいた。手のひらをつないで、恋人のふりをする。ひどい拷問だった。一瞬の幸せを感じる度に虚しくなって、彼女を抱きしめたくなる。「こういうの、もっと着ろっていっただろ。そりゃ、好きなかっこをすりゃいいけどな」 もったいない、なんて思うのは、イースの勝手な感想だ。言われる側にしてはたまったものではないだろう。

 好きな女が可愛らしい服を着て、こちらに尻を振っていると思うと、ひどく胸が痛くなって何度だって抱きしめたい。こんなことを言っても、嫌と強くつっぱねられるだけと思っていたのに、意外なことにもミエルは耳元を真っ赤にしたまま、「う」と、喉の奥から小さな悲鳴を上げていた。「い、いやよ……」 結局、言葉は変わらないのだが。「恥ずかしい、もの……」

 ひどく、予想とは違う言葉だった。

「あっ……」

 びくりとミエルが震えた。「う、く……」 イースも、唇を噛み締めた。わずかにひっかかった彼女の入り口に、このまま埋めてしまおうかと思った。彼女の膣に、ぴたりとイースのペニスがくっついている。どくどくと聞こえる心臓の音は、彼だけのものではない。少し、進んだ。「あっ、あっ……」 ミエルが足先を伸ばして、彼を受け入れようとしている。本当に少しだ。ぴたりと時を止めていた。

 よくぞそこで止まったものだと、自分自身でも驚いた。彼女の中にわずかに埋まった自身のそれを見つめた。壁に手をつけさせていたミエルを反転させて、今度は正面のまま壁に押し付け、片足を持ち上げた。彼女の膣を、こすりつけるように命じる。こちらも腰を動かした。ぐちょぐちょとひどい音が聞こえている。

「着ろよ。なあ、かわいいからさ」
「む、むりよ」
「なんで」
「たくさん、持ってない……」
「じゃあ買ってやるよ。今度」

 今度。
 任務ではなく、休日に、一緒に出かけて。
 言おうとして、口を閉ざした。次の休日は、すでに彼女とイースの魔法は解けている。またすっかりと忌み嫌う仲になっているかもしれない。だから、セックスなんてしなくて正解だ。もう殆ど、しているようなものだが。
 言葉の代わりに、キスをした。そうして、言葉を飲み込んだ。イースは、最後まで耐えてみせた。立派なものだった。けれども、ミエルは耐えきれなかった。好きな男に、好き勝手に体を触られ、幾度も危うく膣をいじられる。苦しかった。

 その夜のことだ。変わらずミエルのもとを訪ねたイースに、彼女は懇願した。「お願いイース」 震えた声で、彼を誘った。

「お願い、最後まで、して」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

姫騎士とオークの新婚家庭に悩みは尽きない

葦原とよ
恋愛
女だてらに王城勤めの近衛騎士であるフレイヤと、生真面目なオークの植物学者のゲルハルト。種族の「普通」から外れた二人は、それはそれは仲の良い夫婦だった。 けれども二人には真剣な悩みがある。 ゲルハルトのものが大きすぎて入らない。 それは当人たちにとっては非常に悩ましい問題だった。 ある日、フレイヤは友人のフレデリカからサキュバスの営む魔法香油店には『夜の魔法香油』があると聞き、喜び勇んでゲルハルトを連れて店に行くことに… ——— オムニバス形式の『魔法香油』シリーズです。 単体でも読めますが、『ヒルダの魔法香油店』を先に読まれると、より楽しめるかと思います。 この作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

淫紋付きランジェリーパーティーへようこそ~麗人辺境伯、婿殿の逆襲の罠にハメられる

柿崎まつる
恋愛
ローテ辺境伯領から最重要機密を盗んだ男が潜んだ先は、ある紳士社交倶楽部の夜会会場。女辺境伯とその夫は夜会に潜入するが、なんとそこはランジェリーパーティーだった! ※辺境伯は女です ムーンライトノベルズに掲載済みです。

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

処理中です...