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第三章 大事な繋がり

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 なんかふわふわして気持ちいい。安心する。なんだろう、なんか揺れてる??


 目を開けると、ゼンが俺を抱いてるところだった。


「凛くん、起きたん?? 気分どうや??」


「ンん……きもちいい……ゼルは」


「ゼル!! ええ加減、機嫌直せや!!」


 ゼンが動きを止めてゼルを呼ぶと、ゼルは気まずそうに俺のところへ来た。


「凛……怒っとる??」


「怒ってない。寧ろありがとう。俺あのままだったら、みんなに迷惑かけてた」


「凛くん、騙されたらアカンよ。こいつのコレ演技や!!」


 え?? でも悲しんでる気がするけど……


「最近はゼルばっか凛くん抱いてたやん。せやから、今日は俺だけで抱く言うたらコレや。凛くんから誘われたくてやっとるだけやから、無視でええよ」


「凛、俺嫌われてでも止めたかっただけなんや。あそこで止めんと、凛は無理するやろ??」


 やっぱり、嘘は言ってない気がする。それにゼルはいつも俺の事考えてくれる。それはゼンも一緒だし、二人が俺を求めるなら、こういう時くらい俺も二人に応えたい。


「ゼン、明日はゼンにあげるから、今日は二人と一緒がいい。ゼルもきて」


「よっしゃ!!」


「凛くん!! コイツよっしゃ言うとる!!」


 それは俺にも聞こえたけど……まあいいや。ゼンとゼルになら騙されてもいい。


 その後、ゼンもゼルも一回では終わらなく、それでも俺の腰が痛くなる事はなかったが、代わりにお腹がムズムズして仕方なかった。


 そして次の日、ゼンの方は試合に勝つ事ができ、俺達の方も無事に決勝まで駒を進める事ができた。そして春高出場は決定したものの、決勝はやはり火獅子が勝ち上がってきた。


 決勝当日、ゼルが前に言ってた通り、ゼンが一緒に来てくれて、俺は二人にガッチリ固定されている。


「……凛、お前嫌な時は嫌だと言った方がいいぞ」


 先生は何を言ってるんだ?? 嫌な事なんかないんだけど。


「監督サン、何が嫌なんか教えてほしいんやけど」


「せやで、別にええやん。みんな喜んどるんやし」


「男のファンは凛くんだけでいいんだけど」


「凛くんは兄さんのファンじゃないよ」


「そうだな。愁のファンとか、あり得ないだろ」


「次は男漁りでも始めれば??」


「うん……不純なファンはいらない」


 ゼン、ゼル、愁さん、駿さん、剛さん、祐希さん、リュカさんの順で喋っていくが、今回はマスクもメガネもしていないため、すぐにバレて会場の前が大変なことになっている。


 母さんも、うるさいからって普通シーズン中に寄越すか?? 午前中だけだとしても、高校生の試合見て気合なんて入らないだろ。


「俺は関係ない。ゼンは最初から見に来るって、先生に話しておいたじゃないですか」


「いや、どう考えても……はぁ、まあいいや。俺は知らない人。他人だ他人。何も見てない」


 先生は体育館の中に入り、俺達もついて行くと、愁さんだけがその場に残されて、みんな中へ入ると、当たり前のように風狼の場所で、カメラを設置し始める。


 みんなカメラ好きだな……そういえば俺二人の写真持ってない。撮らせてほしいって言ったら撮らせてくれるかな。


「凛、どうしたん?? はよアップ行くで」


「う、うん」


 俺がゼルと一緒にアップに行こうとすると、ゼンが俺の手を引っ張った。


「凛くん、どうしたんや??」


「え……えっと、俺二人の写真持ってないなって思っただけで……」


「凛くんのスマホ貸して」


 俺はゼンにスマホを渡すとゼルも呼んで、背景に誰も写らないように、俺を真ん中にして写真を撮ってくれた。


 ゼンとゼルの初めての写真だ!!


 俺は嬉しくて、その写真をずっと見ていると、二人がいきなり抱きついてきた。


『……可愛すぎるやろ!!』


「別に写真くらい撮ったらええやん。一枚撮ったくらいでこんな喜ぶと思わんかった」


「凛が撮りたい時に撮ったらええよ。一緒に撮りたいなら、言ってくれてええしな」


「ううん、これで十分。ありがとう……ゼン、行ってくるね!!」


 俺はゼルと一緒にアップへ行き、その後コート練習に入った。火獅子の二人の視界には入らないように。


「凛、大丈夫やから、大人しくしとってな」


 試合開始前、俺はゼルに頭を撫でられ、ゼンの方も見ると、俺が見えるのを分かってて、大丈夫だと口パクで言ってくれた。


「うん、大丈夫。俺ちゃんと見てるから」


 ゼンとゼルが大丈夫だって言うなら大丈夫だ。ちゃんと待てるし、2セット目で出たとしても、きっとちゃんとできる。


 俺は深呼吸をして、嫌な事を忘れるように、みんなが頑張ってる試合を見て集中する。忘れると言っても、中学の時みたいに一人じゃない。みんな居るし、ゼンもゼルも……ついでにファルコンの人達もいるのだと、あの頃とは違うのだと自分の中の、奥深くに潜って目を閉じ、開いた時には火獅子の二人は気にならなくなった。

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