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第三章 大事な繋がり

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『凛!!』


 動かない凛を見て、ゼンとゼルは凛の下へ行く。ゼンは危うく上から飛び降りようとしていて、それは剛と祐希によって止められた。


「あれー? 白猫ちゃん死んだのー?? そんなわけないかぁ。番が生きてるし」


「鳴海、お前いい加減にしろ!!」


 ゼルが急いで凛を運び、体育館を出てゼンと柏木と一緒に、凛の容体を見ているなか、最後の挨拶を終えた鳴海が近寄って、鹿島がそれを止めていた。しかし、そんな言葉はゼンとゼルには聞こえず、代わりに剛と祐希が相手をした。


「おい、お前等。ツラ貸せ」


「ほんと、いつもの事ながら嫌な仕事だ。でも今のは……許せねぇなあ」


 剛と祐希は力尽くで二人を連れて行き、ゼン達の方は救急車は呼ばなくていいと判断した。


「本当に呼ばなくていいんだな??」


「あぁ、呼ばんでええよ。その代わり佐良さんには伝えといてくれん??」


「あと、風狼の奴等にもな。一応心配せんでええよって伝えといてや」


「はぁ……分かった。そんじゃ、あとは帰って休ませてやれ」


 そう言って柏木はいなくなり、ゼンとゼルは凛を連れて帰ろうとすると、リュカが来た。


「ゼン……凛に」


「分かっとる。ちゃんと言うとくし、これ以上隠せんやろ」


「兄貴、はよ行くで。天使は天使の仕事があるやろ」


 リュカはその場に置いていかれ、ゼン達は家へと帰った。一方、剛と祐希は鹿島と鳴海を引き連れて、人気のないとこまで行く。


「なんなんだ!! 離せよ!! 鹿島も何ついて行ってんだよ」


「うっさいな。番のくせに制御くらいしろよ」


「……番ったのは、凛と出会ってからだ。それに好きで番ったんじゃない」


「だからなんだ?? 番は番だろ。取り敢えず黙らせろ」


 鹿島は剛に言われるまま、それに従う。


りょう、黙って話を聞け」


 鹿島が鳴海に言うと、鳴海は顔を顰めながらも黙って話を聞く体勢になり、静かになったところで祐希が話しだす。


「まずお前達悪魔は、猫を何匹食った??」


「俺はゼロだ。凛が欲しかったが、逃げられた。鳴海もコレクションにしているだけで、まだ食べてない」


 それを聞いた祐希は、剛の顔をチラ見してから何処かへ行ってしまった。


「はぁ……また俺かよ。俺達の仕事は、こうやって悪魔と天使の仲介をする事だ。最初から天使を出したら、持ってる魂を慌てて食うやつがいるからな。まず絶対条件として、そのコレクションにした魂を全部渡せ。食べても天使には分かるからな。そしてここからはお前等次第だが、選択肢をやる。お前達の言う、ヴァルハラへの切符はスポーツだ。魂を食わずに、その肉体が朽ちるまで戦い続けろ。そしたら死神がお前等を迎えに行く」


 剛の言葉に、鳴海は目の色を変えたが、鹿島は乗り気ではない様子で剛を見る。


「鳴海の妄想だけでなく、あんた等も神話ごっこか?? 天使は暇なんだな。悪魔は所詮悪魔でしかないだろ」


「まあ、似てるってだけの世界だからな。そこは否定しないが、俺は天使ではない。祐希と番って堕天してる。その証拠にお前等と同じで、翼が片方しかないだろ」


 鹿島と鳴海は、番った時に片翼となった。それは二人で一つという事で、ゼルが鹿島と鳴海が付き合っていると言ったのも、これが原因だった。そして、翼を見せるように広げる剛もまた、片翼となっていて、天使同士が番うと堕天使となって、天使と悪魔の仲介役となる。


「……天使は俺達悪魔の敵だろ。何故交渉なんかする」


「神さんが、ヴァルハラ造ったのに寂しい~!!……なんて言い出したからな。それならスポーツで戦わせて、ついでに増えすぎたヒトと悪魔の中で、天界に行きたい者が居れば、条件が整っている場合に限り連れて行こうという事になった。そのせいで俺達堕天使は、肉体を与えられて地上に放り出されたってわけだ。ほんと迷惑な話だ。可愛い番とイチャイチャする事も出来な……」


「剛、何の話してんだよ……リュカ連れてきたけど、そっちはどうなったんだ??」


 祐希がリュカを連れてくると、鳴海と鹿島は表情が強ばり後ずさる。ヒトの皮を被った者達は、基本的に目を使わなければ、天使だろうが悪魔だろうが、死神だろうが、中身に気付く事はない。だから鳴海と鹿島は、天使がこんなに近くにいるとは思ってもいなかったのだ。


「少なくとも、この五月蝿い方は、行きたがってるな。その為に凛を狙ってたんだろうしな」


「その前に……魂」


 リュカがそれだけ言うと、鳴海は大事そうに持っていたスコアブックから、猫の魂を持つ者達の写真を出した。


「うわ……こんなに。しかも全部色違いかよ。はい、リュカ」


「可哀想な猫……いつの時代も猫は不幸だ。どうせ捨てられるなら、死神に拾ってもらった方がいい」


 写真をもらったリュカは、自分の仕事が終わったと言わんばかりにすぐ帰ってしまい、剛と祐希も魂の回収が終わった事で、鹿島と鳴海を残して去った。


「剛、あの二人はどうすると思う??」


「さあな。あとは本人達次第だろ……そんな事より、俺は早く祐希を抱きたい」


「やめろ。今シーズン中なんだから、そんな暇はない」


「チッ……シーズン終わったら、神さんに言って仕事減らしてもらうかあ」


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