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第四章 縛りと役目

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~sideゼル~


 凛が俺に抱きついて眠ると、洸が無理をさせてしまったのかと慌てていたが、スイセンが言うには現実逃避したらしい。


「凛くん、何日ぶりに寝たんや??」


 最近は俺等が抱きすぎて、凛も寝てないもんな。本人は調子良い言っとるし、実際眠そうにもしとらんから、本当の事なんやろうけど、俺は正直寝たいわ。眠い訳やないけど寝るのは好きやし、休みがないから寝とらんだけやしな。


「凛が熱以外で寝てるとこ、初めて見た……可愛い」


 洸は凛の頬をつついて、だらしない顔をしていると、凛の髪色が凄い勢いで戻ってきてしまった。


「ッ!? あれ……俺、目使ってないのに。兄さん!! 俺なんかした!?」


「大丈夫や。多分寝とらんかった分、いっきに戻ってもうたんやろ。けどまあ……これじゃ誰も近づけんな」


 確かにこれじゃ無理やな……ちゅーか洸は大丈夫でも、耀もやばいんちゃう??


「カカ様綺麗!! やっと戻った!! 僕こっちの方が好き」


「兄さん達も、それって染めてるんだよね?? 凛に枷つけられる前は、兄さん達の色も何も視えなかったけど今なら視える」


 ん?? 視えなかったんか?? 俺等がオカン達の視えないのと同じなんかな。


「せやで。俺等も染めとるけど、凛くんみたいに頻繁には染めんな。凛くんは肉体が合わな過ぎるからな」


「でも、凛の髪サラサラで気持ちいい。ケアしてるの??」


「兄貴がケアしとるけど、抱くと髪の痛みもなくなるんよなあ……綺麗やろ」


 洸がコクコクと頷くと、本当に年下に見えてきて、もう兄さん呼びも違和感がなくなってきた。というよりワンコ感が強すぎて、カイとレイを見ているような気になる。


「おーい、そろそろ始ま……凛の髪色出ちゃったのか。それだと今日は帰ってもらうしかないな。周りに影響が出すぎる」


 なかなか戻らない俺達を、親父が呼びに来ると、凛を見て帰るように言ってきたが、手に持ってるスマホで連写しまくっている。


「親父、うっさいわ。凛くんが起きてまうやろ。せめて無音にしぃや」


「おっと、すまないね。洸はどうする?? 凛のそばに居た方がいいんじゃないか??」


 確かに、午後からずっと離れるってなると、洸の渇きがどうなるんか分からんな。この合宿終わった後の事も、どうするんか話し合わんといけんよな。


「でも俺……大丈夫。渇きはないし、耀が居るから寂しくない」


「ほんまにええんか?? 俺等は凛くん以外は甘やかさんで。大丈夫なら放っとくし、渇きで凛くんの事困らすんやったら容赦せんよ」


「洸、もう一回聞くで。ほんまに凛と離れて大丈夫なんやな??」


 洸は寝ている凛に抱きつくと、自然と俺にも抱きつくような形になり、案外優しく抱きしめているのだと分かる。


「離れたくない。明日どうなるのか、俺にも分からない。凛を傷つけるのは嫌だ」


「アホ、最初から言いや。凛くんが家族にする言うんやから、お前はスイセンを真似てみぃや。それでちょうどええくらいやろ」


「俺等の顔色窺うんもええけど、最優先は凛や。分かったなら、はよ行くで」


「お前達、大人になったなぁ」


 親父にはそう見えるんか。俺も兄貴もなんも変わったらんのやけど。これは危険か?? 誰でも受け入れるとか思われると嫌やな。


「違う、トト達変わらない。僕も洸も、カカ様縛る為。最近カカ様寝てない。トト達も寝てな……イタイッ!! ぅわあああん」


「余計な事言うなや。さっさと帰るで」


 兄貴はスイセンに拳骨をくらわせると、泣くスイセンの首根っこを掴んで更衣室を出て行った。


「親父……今の凛に言うなや。凛が聞いたら怒るからな……親父も巻き添えくらうで」


 あん時逃げたのと言い、耀が言ってた獣の王と言い、親父もなんかしらの獣なんやろうな。オカンの番やからなんも視えんけど……今も顔色悪いしな。ついでに洸も顔色悪くなっとるし。


 凛を抱えて兄貴についていき、俺は洸に道案内をする為に、洸の車に乗って家へ帰った。


「洸、寝室には絶対に入るなや。それ以外なら自由にしとってええから」


 家に入ると、先に着いていた兄貴は、寝室から出てきて扉を閉めた。スイセンは元のサイズに戻って、泣いてるくせに兄貴の裾を噛んで、後をついて行ってる姿は、熱が出た時の凛に似ていて、可愛いと思ってしまう。


「カカ様あぁ……起きてぇ。トトが僕の事……」


「お前はいつまで泣いとんのや。凛の事起こすなよ」


 俺が凛をソファに下ろすと、スイセンは凛を起こそうと頭を押しつけているが、よっぽどの事がない限り俺か兄貴が起こさないと、なかなか起きないだろう。
 

「洸、お前合宿終わったらどうするんや?? ちゅーか何歳なん?? ゼルよりは上なんやろ??」


「俺21歳になった……と思う。6月に10歳の身体で受肉したけど、レオに連れてきてもらっただけだから、誕生日はないんだ。でも地上に来たのが6月6日だから、戸籍上その日にしてある。今は奈良の体育大学に通ってるから大学三年生」


 成人しとるとは思えんのやけど……他人には大人なんか?? 耀も洸も、他の奴等と喋っとるとこ、愁さん以外は一回も見た事ないんやけど。


「そうか。成人しとるようには見えんけど……耀とはどうするか喋っとるんか??」


「耀は、俺みたいな渇きがなくなったから……離れてても良いって……離れてた方がいいんだって言ってる。その……凛には内緒にしてって言われてるんだけど……やっぱり凛じゃないと、枷がつけれなかったみたいで、印をつけようとした陣の事……そのまま襲っちゃったって。お腹の子供に、吸収されたって言って……ッ!!」


 アカン!! 寒気すると思ったら、凛が起きとる!! スイセンなんか、さっきまで泣いとったくせに、凛の腹ん中避難しとるし!!


「へぇ……面白そうな話してるね。俺も混ぜてよ」


「り、凛……怒らないで。耀も反省してて、凛に言おうと思ってたんだ。でも、陣と斗季に黙ってろって……ご、ごめんなさい」


 慌てる洸は凛に謝っているが、別に凛は怒ってない筈だ。これは陣に対してイラついている感じだ。


「大丈夫。怒ってないよ……でも、そうだな。洸は痛みに耐えた枷があるのに、耀だけ何もないっていうのは、どうなんだろうね?? 陣はさ、痛いのが嫌いなんだよ。耀の渇きが、なんでないのか分からなかったけど……そうだよね。孕ませるのが目的なら、まだ生まれてないお腹の子供に注いだら、自分のも少なからず混じるもんね」


 まあ、それやとスイセンの食事の事、真剣に聞いとったんも納得やわ。要は、完全に自分の子やないけど、混じってもうたから、仮の子になってもうた感じなんやろ。


 凛は洸の頭を優しく撫でながら、自分のスマホを探しているようで、キョロキョロとしている。


「凛くん、スマホか?? ちょい待っとってな」


 兄貴は凛のスマホを充電していたのか、寝室からスマホを持ってきて、俺は凛を自分の足の間に座らせ、凛が少しでも落ち着けるように、後ろから抱きしめてやった。

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