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第六章 加速する愛
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しおりを挟む「うげっ……佐良さんから連絡きとったわ。ゼルと凛くんの方は??」
「俺にもきとるわ……ついでにオカンも」
俺も自分のスマホを見てみると、母さんと父さんと陣、それからシズと新田からも連絡が何件か来ていて、俺が既読したと同時に母さんから連絡がきた。
「母さん、うちに来るって。陣から聞いたんだと思うけど、こっちに帰ってきてから、10日も経ってるらしいよ」
「まじかいな……俺等の感覚やと、2日くらいなんやけど。凛不足になると、俺等結構やばいんやな」
「ゼル兄さんに凛が締められて、俺が呼ばれたのが2日後だったよ。凛はずっと目が覚めない状態だったけど、俺が寝室に入って、そのまた2日後に凛が愁さんを呼んでた」
「そっか、俺からしたら8日間だったけど、こっちでは4日間だったんだ……俺が使い物にならなすぎて、駿に部屋に閉じ込められた後は、本当に長く感じたよ」
「ちゅーか、佐良さん来るんやと、先に飯済ましとかんとな。洸は手伝ってや。凛くん、何食いたい??」
俺がオムライスが食べたいと言うと、ゼンと洸は台所に行き、俺はフラフラといつもの場所に行って、カイとレイと一緒に日光浴をする。ゼルはゼンのパソコンをいじっていて、愁はレンを庭に出すと、レンは気持ち良さそうにリラックスし始めた。
こうしてみると、うちの庭は動物園みたいだな。なんか動物達も出てきてるし、ルイ達がこの家での注意点とか話してくれてるし、大丈夫だとは思うんだけど、みんなウサみたいにならないといいな。
そうしてのんびりしていると、母さんと陣の声が聞こえ、インターホンと同時にスイセンが家に帰って来た。
「早ないか!? ゼル、出てくれや。スイセン、凛くんはまだ日向ぼっこ中や。邪魔するんやないで」
「まだ飯食っとらんのに……佐良さん、怒っとるんか??」
「カカ様、日向ぼっこなら僕もする」
スイセンと日向ぼっこするのは久しぶりだなあ。母さんと陣が来たなら、俺も行かないといけないけど……駄目だ。久しぶりにあったかくて動けない。月光浴は気持ちいいけど、日光浴はあったかいんだよなあ。
母さんと陣は家に入ってくると、愁を見て驚いた表情をし、俺と目が合うと溜息を吐いた。
「愁、会えて嬉しいわ。それと、痛かったでしょう……駿にも、天界で会える事を楽しみにしてると伝えて」
「佐良さん、すみません。俺、謝らないといけない事があって……凛くんを……」
「愁、それは謝んな。凛くんを共有したんは、俺等の我儘や。凛くんも受け入れてくれとる。謝るんやったら俺等の方や」
「せやな。俺等が洸と愁さんにも、凛を共有したかったから、子作りまでしてしもうた。せやけど、俺等は後悔しとらんし、凛も後悔しとらん」
ゼルの子作り発言に、陣が無言でこっちを見てくるが、知らんぷりをしていると、母さんまで俺の方を見てきた。
「はぁ……私は凛に怒ってるだけよ。子作りの事は知ってたわ。あんなに頭に響く鳴き声……天界の住人全員に、迷惑かけてたのよ。天界を通してこっちにまで響いてたわ。凛が止めれば、すぐに泣き止んだ筈よ」
こっちにまで聞こえてるとは思わなかった。でも、俺は寝てたし、どうする事も出来なかったもん。
俺がフイッと顔を背け、カイとレイに抱きつくと、それを見た母さんと陣は、少し違和感があったらしく、四人に俺の事を聞き、あっちでの事を全部説明し終えると、母様とあっちの天界の住人に怒りをつのらせる。
「凛、ごめんなさいね。それと、ありがとう。こっちの天界の住人には、私から説明しておくわ。それと、今度孫の顔が見たいわ!! うるさかったけど……本当にうるさかったけど、可愛いんでしょう??」
「相当うるさかったんやな。ほんますんません。俺等が鎌で切った後は、だいぶ大人しくなった方やったと思うんやけど……凛くんには敵わんよな」
「凛なんか、一言も喋らんで泣き止ませとったしな。相当怖かったんやろなあ。俺等でも、凛に怒られるんは、おっかないし」
洸と愁も同意するように、何度も頷いている。そしてご飯ができたのか、俺はゼンに呼ばれたのだが、明らかにご飯の量がいつもより多く、見ただけでお腹がいっぱいになってきた。
「ゼン……こんなに食べれない」
「せやけど食べなアカンよ。体重少し戻ったんやから、それなりに食べんと、栄養も回らんし、筋肉もつかへんで」
うぅ……食べたくない。食べたくないけど、ゼンと洸が作ったなら食べたい。でも……お腹が……
「凛、少しずつでええから食べてみ。案外食べ始めたら、食べれるかもしれんやん。今度から筋トレ付き合ったるから」
「分かった……今日の昼と夜の分は減らしてくれる??」
「減らしたら意味ないやん。昼と夜はいつも通りにしたるから、はよ食べてみ」
何故か期待の眼差しで、ぐいぐい勧められるため、渋々一口食べてみると、いつもよりだいぶ薄味で、急にお腹が空いてくる。
「やっぱ味付け無い方がええんやな。凛くんのオムライス、ケチャップ殆ど入っとらんで。匂いだけや」
「え……そうなの?? でも、普通に味するけど」
「兄さんが作ってる凛のサンドイッチって、味付けしてないじゃん?? だから、味無い方がいいんじゃないかと思って、ゼン兄さんに確認してみたんだよ」
「俺も無意識に薄味にしとったから、気にしとらんかったんやけど、確かに凛くんは俺の作ったやつ以外、なかなか食べれんし、もっと早く気づくべきやったわ。凛くんは匂いも敏感やから、それだけで味しとるように感じるやろ??」
俺の味覚が少しおかしいのか、ゼルが俺のご飯を一口食べると、殆ど味がしないと言って、すぐに自分のご飯を口に放り込んだ。その間、母さんはルベロを可愛がっていて、陣はスイセンと何かを喋っていた。
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