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第一話 クズ勇者、改心する
その九
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これからどうやってカネを稼ぐか話し合っていた時、マルタは一冊のノートをテーブルの上に置いた。
オレはそれを手に取り、パラパラとめくる。何かの地図が描かれていて、そこにいろいろとコメントが書いてあった。
「ああ、それは――」
マルタは言いづらそうな顔を見せて、「ファーナンド遺跡の情報を集めていたんだ」と応えた。
「――えっ?」
三種の神器のひとつ、『神書アスタリアズノート』があるとされるダンジョン。それが、ファーナンド遺跡。
勇者パーティとして、これからそこへ向かう予定だった。
前の人生では、そこで惨敗を喫し、仲間のロゼルを死なせてしまう。そんな場所だ。
「そうか……ファーナンド遺跡の――」
考えてみれば、神剣クサナギを手に入れた時も、神盾アイギスの時も、マルタがいろいろと調査してくれていたんだよな。きっと、それって大変な労力だったはずである。
オレたちが『勇者パーティ』だとチヤホヤされ浮かれていたころ、コイツはオレたちのために情報集めをしてくれていたんだ。
そして、このファーナンド遺跡の情報も――これを得るために、他の冒険者から話を聞いたり、ギルド内にあるクエスト報告書とかを探し回って書き出したのだろう。王立図書館まで行って、古文書を調べたりしたのかもしれない。
「こんなに献身的なオマエをバカにして、最後はクビにしたんだな――」
そんなことをつぶやいてしまう。
パーティのためにガンバっていたコイツを、『役立たず』だの『ウスノロ』だの、平気で罵っていたんだ。オレって救いようのないクズな人間だったんだと、本当に恥ずかしくなる。天罰を食らって当然だ。
「えっ? なに?」とマルタが聞いてくるので、「いや、独り言だ」と誤魔化した――
んっ? 待てよ――もしかしたら、前の人生で、マルタはファーナンド遺跡に行ったんじゃないだろうか?
この情報を使い、『神書アスタリアズノート』を手に入れていたとしたら?
神書の効果がどういうモノなのか、詳しくはわかっていない。ただ、莫大な知識の集積なのだと古文書に書き残されているらしい。
そこに、錬金術の知識があるとしたら?
それで、錬金術のチカラと魔力を手に入れたとしたら?
もちろん、何もかもただの憶測だ。なにより、マルタに戦闘スキルはない。ダンジョンにひとりで入って生きて帰れるだろうか?
ましてや、神書まで手に入れられるなんて――
オレはもう一度ノートを確認する。いくつかのルートが詳細に描かれていた。その中にはモンスターの出現率が低い場所を選んで進めるルートもある。
「こんなルートがあったとは――」
かなり遠回りになるが、モンスターと遭遇しなければ、戦闘スキルのないマルタでもダンジョンの最深部にまでたどり着ける。最後にボス戦があるので、やはり非戦闘員ひとりで神書を手に入れるのは奇跡に近いのだが――
「それでも、運が良ければ――」
神書を手に入れ、前の人生でそうだったようにマルタが錬金術士としての能力が目覚めるのだとしたら――そうなれば、オレとマルタは人類最強のコンビになるだろう。
なにせ、『元』ではあるが、勇者と呼ばれるまでになった最強の剣士に、人類を滅ぼすほどの能力を持った錬金術士――それだけのチカラを持つ二人が組めば、もうギルドや権力者に頭を下げる必要なんてないじゃないか!
「――いや、待てよ」
オレは大事なことを忘れていた。
マルタは『能力』に目覚めたことで、魔族と手を組み、人類を滅ぼしたんだ。だとしたら、あえて『能力』を目覚めさせないほうがイイのでは?
…………人類が滅ぶことで、何か問題あるか?
そうだよ――前の人生では、オレの失敗を責め、捨て去り、笑ったヤツらじゃないか?
なんだ、考えるまでもない。最良な判断は、魔族を従え、人類を滅ぼすほどのチカラを持つことになるマルタに取り入ること! そして、自分だけでも破滅を回避する! 闇堕ち上等じゃないか!
オレは「フ、フ、フ――」と意味深な笑みを浮かべた。
「グエル? どうしたの? いきなり笑い出して?」
怪訝な表情を見せるマルタに、オレは「なあに、人生、どう転ぶかわからないな――と思っただけさ」と応える。
「――?」
言った意味がマルタには理解できなかったようだが、別に気にしない。今はオレだけが知っていればイイことだ。
『死に戻り』で得られたこのチャンス。『二回目の人生』では破滅をなんとしても回避する。そのために、マルタのチカラを利用するんだ! そうとなれば、もうのんびりはしていられない。
「マルタ! ファーナンド遺跡へ行くぞ!」
「――えっ?」
オレはそれを手に取り、パラパラとめくる。何かの地図が描かれていて、そこにいろいろとコメントが書いてあった。
「ああ、それは――」
マルタは言いづらそうな顔を見せて、「ファーナンド遺跡の情報を集めていたんだ」と応えた。
「――えっ?」
三種の神器のひとつ、『神書アスタリアズノート』があるとされるダンジョン。それが、ファーナンド遺跡。
勇者パーティとして、これからそこへ向かう予定だった。
前の人生では、そこで惨敗を喫し、仲間のロゼルを死なせてしまう。そんな場所だ。
「そうか……ファーナンド遺跡の――」
考えてみれば、神剣クサナギを手に入れた時も、神盾アイギスの時も、マルタがいろいろと調査してくれていたんだよな。きっと、それって大変な労力だったはずである。
オレたちが『勇者パーティ』だとチヤホヤされ浮かれていたころ、コイツはオレたちのために情報集めをしてくれていたんだ。
そして、このファーナンド遺跡の情報も――これを得るために、他の冒険者から話を聞いたり、ギルド内にあるクエスト報告書とかを探し回って書き出したのだろう。王立図書館まで行って、古文書を調べたりしたのかもしれない。
「こんなに献身的なオマエをバカにして、最後はクビにしたんだな――」
そんなことをつぶやいてしまう。
パーティのためにガンバっていたコイツを、『役立たず』だの『ウスノロ』だの、平気で罵っていたんだ。オレって救いようのないクズな人間だったんだと、本当に恥ずかしくなる。天罰を食らって当然だ。
「えっ? なに?」とマルタが聞いてくるので、「いや、独り言だ」と誤魔化した――
んっ? 待てよ――もしかしたら、前の人生で、マルタはファーナンド遺跡に行ったんじゃないだろうか?
この情報を使い、『神書アスタリアズノート』を手に入れていたとしたら?
神書の効果がどういうモノなのか、詳しくはわかっていない。ただ、莫大な知識の集積なのだと古文書に書き残されているらしい。
そこに、錬金術の知識があるとしたら?
それで、錬金術のチカラと魔力を手に入れたとしたら?
もちろん、何もかもただの憶測だ。なにより、マルタに戦闘スキルはない。ダンジョンにひとりで入って生きて帰れるだろうか?
ましてや、神書まで手に入れられるなんて――
オレはもう一度ノートを確認する。いくつかのルートが詳細に描かれていた。その中にはモンスターの出現率が低い場所を選んで進めるルートもある。
「こんなルートがあったとは――」
かなり遠回りになるが、モンスターと遭遇しなければ、戦闘スキルのないマルタでもダンジョンの最深部にまでたどり着ける。最後にボス戦があるので、やはり非戦闘員ひとりで神書を手に入れるのは奇跡に近いのだが――
「それでも、運が良ければ――」
神書を手に入れ、前の人生でそうだったようにマルタが錬金術士としての能力が目覚めるのだとしたら――そうなれば、オレとマルタは人類最強のコンビになるだろう。
なにせ、『元』ではあるが、勇者と呼ばれるまでになった最強の剣士に、人類を滅ぼすほどの能力を持った錬金術士――それだけのチカラを持つ二人が組めば、もうギルドや権力者に頭を下げる必要なんてないじゃないか!
「――いや、待てよ」
オレは大事なことを忘れていた。
マルタは『能力』に目覚めたことで、魔族と手を組み、人類を滅ぼしたんだ。だとしたら、あえて『能力』を目覚めさせないほうがイイのでは?
…………人類が滅ぶことで、何か問題あるか?
そうだよ――前の人生では、オレの失敗を責め、捨て去り、笑ったヤツらじゃないか?
なんだ、考えるまでもない。最良な判断は、魔族を従え、人類を滅ぼすほどのチカラを持つことになるマルタに取り入ること! そして、自分だけでも破滅を回避する! 闇堕ち上等じゃないか!
オレは「フ、フ、フ――」と意味深な笑みを浮かべた。
「グエル? どうしたの? いきなり笑い出して?」
怪訝な表情を見せるマルタに、オレは「なあに、人生、どう転ぶかわからないな――と思っただけさ」と応える。
「――?」
言った意味がマルタには理解できなかったようだが、別に気にしない。今はオレだけが知っていればイイことだ。
『死に戻り』で得られたこのチャンス。『二回目の人生』では破滅をなんとしても回避する。そのために、マルタのチカラを利用するんだ! そうとなれば、もうのんびりはしていられない。
「マルタ! ファーナンド遺跡へ行くぞ!」
「――えっ?」
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