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第三話 クズ勇者、ダンジョンへ行く
その七
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「な、なに? グエル?」
マルタが驚いて、そうたずねてきた。
「なあ、魔族ならリッチを召喚できると思うか?」
オレの突拍子のない質問に、全員が互いの顔を見合っている。あ、またやっちまった?
そりゃあ、いきなり『魔族』なんて言葉が出てきたら、不思議に思うよなあ……
「い、いやあ。ちょっと、気になってな。ハ、ハ、ハ」と、ニヤケる。
もう一度、みんなの表情を見ると、怪訝な表情から、呆れた表情に変わった。ナタリアがひとつため息をついて、こう応える。
「――魔王軍にはネクロマンサーがいて、上級アンデットの召喚し、戦力にしている――そう、聞いたことがある」
幹部クラスの魔族ならリッチも召喚可能――やはり、そうか。オレは、大聖堂前で会った男の声を思い出していた。
どこかで聞いた声だと思ったが――アレは、魔族――前の人生でオレを魔人化したアイツの声だ。
あの魔族がこの街にやってきている? 前の人生では、その記憶はない。もしかしたら、忘れているだけかもしれないが――いずれにしても、それならばリッチを召喚するのが誰か容易に想像が可能だ。
「キサマ、この街で魔族を見たのか?」
ナタリアの質問に即答できない。まさか、前の人生でオレを魔人化させた魔族がいた――なんて言えないもんなあ……
「えーと……そう! さっき、大聖堂の前で、突然、男に声をかけられたんだよ。『この大聖堂の外壁になぜ獰猛な神獣の像が置かれているのか?』とか言われてね。外壁を守るためなのだが、そんな迷信を人間はなぜ信じるのか――なんて言っていたよ」
うん、ウソはついていない。
「――ソイツが魔族だと?」
そ、そうか――それじゃ、ただのヘンなオヤジだよな――あと、なにか……そうだ!
「その男、そう言って、突然、姿が消えたんだよ!」
「姿が……消えた――?」
全員、呆然とオレを見ている。
うわぁ! オレは何を言っているんだぁ? そんな話をしたら、『キサマの頭がおかしくなったんじゃないか?』と言われるだけじゃないかぁ! オレは頭を抱える。
「そうか――それは、魔族の可能性があるな――」
「――えっ?」
ナタリアが腕組をして、「うーん」と唸る。
「私なら、『幻覚でも見てしまったのだろうか――』と考え、他人に話すことを躊躇ってしまうのだが――なるほど、魔族ならそんな芸当ができるかもな?」
あれ? なんか、信じてくれている?
「さすがグエルですね。ふつうなら、魔族とは考えず、『自分の頭がイカれたのか?』と恥ずかしくなるところですが、そこは勇者と呼ばれたほどの男です! そういう発想があるのですね!」とロゼルも言う。
なんか、ふたりとも言葉に何かトゲがあるような――まあ、イイか。
「ソイツの容姿は金糸の刺繍が全体に張り巡らされた、紺のジャケットを着ていた」
「紺のジャケット? 顔は? 年齢は何歳くらいだった?」
顔? 年齢? あれ? 思い出せない。いったい、どういう顔をしていた?
悩んでいるオレの顔をみて察したのか、「まあ、イイでしょう」とロゼルは笑う。
「そういった人物を見かけたら、注意することにします」
その時、部屋のドアをたたく音が――ナタリアが開ける許可を出すと、聖職者の姿をした男性が入ってきた。
「大司教様、クローゼ様がいらっしゃっています」
――えっ? すると、王国騎士団の軍服を着た屈強な男が入ってきた。
「クローゼ――」
相変わらず、不愛想だ。こちらに歩み寄ると、ナタリアとフィルに向かって、それぞれ頭を下げた。なんだよ、こいつもフィルの正体に気づいていたのか? オレとマルタはスルーってのも気に食わねえ。
「ロゼル、アレンが呼んでいる。これからファーナンド遺跡へ行くそうだ」
「――えっ?」
今からダンジョンへ? もう午後だぞ? そりゃあ、ダンジョンは地下なので昼も夜も関係ないが――
「やれやれ、ウチのリーダはせっかちのようです」
呆れた表情を見せたロゼル。「それでは――」と頭を下げた。
「ロゼル、クローゼ――ムリはするなよ」
オレが声をかけると、ロゼルはニッコリと、クローゼは「フ……」とつぶやき、部屋を出て行った。
「さて、オレたちもそろそろ帰ろうか?」
オレがそういうと、マルタが「ボクたちもこれからダンジョンへ向かうの?」とたずねてきたので――
「まさか、今日はゆっくりして明日の朝から行くさ。それでも、アイツらに追いつけるだろう。なにせ、こちらには大陸一番のナビがいるからな」と、マルタの頭を撫でるのだった。
マルタが驚いて、そうたずねてきた。
「なあ、魔族ならリッチを召喚できると思うか?」
オレの突拍子のない質問に、全員が互いの顔を見合っている。あ、またやっちまった?
そりゃあ、いきなり『魔族』なんて言葉が出てきたら、不思議に思うよなあ……
「い、いやあ。ちょっと、気になってな。ハ、ハ、ハ」と、ニヤケる。
もう一度、みんなの表情を見ると、怪訝な表情から、呆れた表情に変わった。ナタリアがひとつため息をついて、こう応える。
「――魔王軍にはネクロマンサーがいて、上級アンデットの召喚し、戦力にしている――そう、聞いたことがある」
幹部クラスの魔族ならリッチも召喚可能――やはり、そうか。オレは、大聖堂前で会った男の声を思い出していた。
どこかで聞いた声だと思ったが――アレは、魔族――前の人生でオレを魔人化したアイツの声だ。
あの魔族がこの街にやってきている? 前の人生では、その記憶はない。もしかしたら、忘れているだけかもしれないが――いずれにしても、それならばリッチを召喚するのが誰か容易に想像が可能だ。
「キサマ、この街で魔族を見たのか?」
ナタリアの質問に即答できない。まさか、前の人生でオレを魔人化させた魔族がいた――なんて言えないもんなあ……
「えーと……そう! さっき、大聖堂の前で、突然、男に声をかけられたんだよ。『この大聖堂の外壁になぜ獰猛な神獣の像が置かれているのか?』とか言われてね。外壁を守るためなのだが、そんな迷信を人間はなぜ信じるのか――なんて言っていたよ」
うん、ウソはついていない。
「――ソイツが魔族だと?」
そ、そうか――それじゃ、ただのヘンなオヤジだよな――あと、なにか……そうだ!
「その男、そう言って、突然、姿が消えたんだよ!」
「姿が……消えた――?」
全員、呆然とオレを見ている。
うわぁ! オレは何を言っているんだぁ? そんな話をしたら、『キサマの頭がおかしくなったんじゃないか?』と言われるだけじゃないかぁ! オレは頭を抱える。
「そうか――それは、魔族の可能性があるな――」
「――えっ?」
ナタリアが腕組をして、「うーん」と唸る。
「私なら、『幻覚でも見てしまったのだろうか――』と考え、他人に話すことを躊躇ってしまうのだが――なるほど、魔族ならそんな芸当ができるかもな?」
あれ? なんか、信じてくれている?
「さすがグエルですね。ふつうなら、魔族とは考えず、『自分の頭がイカれたのか?』と恥ずかしくなるところですが、そこは勇者と呼ばれたほどの男です! そういう発想があるのですね!」とロゼルも言う。
なんか、ふたりとも言葉に何かトゲがあるような――まあ、イイか。
「ソイツの容姿は金糸の刺繍が全体に張り巡らされた、紺のジャケットを着ていた」
「紺のジャケット? 顔は? 年齢は何歳くらいだった?」
顔? 年齢? あれ? 思い出せない。いったい、どういう顔をしていた?
悩んでいるオレの顔をみて察したのか、「まあ、イイでしょう」とロゼルは笑う。
「そういった人物を見かけたら、注意することにします」
その時、部屋のドアをたたく音が――ナタリアが開ける許可を出すと、聖職者の姿をした男性が入ってきた。
「大司教様、クローゼ様がいらっしゃっています」
――えっ? すると、王国騎士団の軍服を着た屈強な男が入ってきた。
「クローゼ――」
相変わらず、不愛想だ。こちらに歩み寄ると、ナタリアとフィルに向かって、それぞれ頭を下げた。なんだよ、こいつもフィルの正体に気づいていたのか? オレとマルタはスルーってのも気に食わねえ。
「ロゼル、アレンが呼んでいる。これからファーナンド遺跡へ行くそうだ」
「――えっ?」
今からダンジョンへ? もう午後だぞ? そりゃあ、ダンジョンは地下なので昼も夜も関係ないが――
「やれやれ、ウチのリーダはせっかちのようです」
呆れた表情を見せたロゼル。「それでは――」と頭を下げた。
「ロゼル、クローゼ――ムリはするなよ」
オレが声をかけると、ロゼルはニッコリと、クローゼは「フ……」とつぶやき、部屋を出て行った。
「さて、オレたちもそろそろ帰ろうか?」
オレがそういうと、マルタが「ボクたちもこれからダンジョンへ向かうの?」とたずねてきたので――
「まさか、今日はゆっくりして明日の朝から行くさ。それでも、アイツらに追いつけるだろう。なにせ、こちらには大陸一番のナビがいるからな」と、マルタの頭を撫でるのだった。
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