追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

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第四話 クズ勇者、捕まる

その三

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 数人の看守から、殴り蹴りを加えられ、ロゼルを殺したことと、神書のありかを白状するように要求された。まあ、この程度は、前の人生で奴隷だった時に受けた仕打ちと比べたらたいしたことはない。そのまま、一時間ほど耐えていると、新たな人物が部屋に入ってくる。

「無様なモノだな。勇者が聞いてあきれる」

 拷問でまぶたが腫れてしまい、人物の姿がよく見えない。しかし、この声に聞き覚えがある――

「アレン――」

 オレの代わりにファーナンド遺跡に向かって、神書を手に入れる前に逃げ帰ったアレン・ブラフォードである。もう一人の声も聞こえた。どうやら、マコーミックも一緒のようだ。

「さあ、オレから奪った神書をどこに隠したか言え!」
「――ところで、どうしてオレが神書を手に入れたことを知っている?」
「――えっ?」

 アレンの顔色が変わった。わかりやすいヤツだ。
 アレンはオレが神書を手に入れる前に逃げ出していた。だから、オレが神書を持っていると知らないはずだ。

 そもそも、オレがファーナンド遺跡に行ったことも教えていなかったのだから――

 あれ?
 ひょっとして、これってチャンスじゃないか?

『解――そのとおりです。このまま、アレンを追及しましょう。それによって、彼がウソをついていると知らしめるのです』

 そうか。それなら――

「アレン。オレが神書を手に入れたことを誰に教えてもらった?」
「だ、黙れ! ダンジョンを攻略し、神書を手に入れたのはオレだ! それをオマエが奪ったのだろ!」
「ほう。じゃあ、どうやって奪われたのか教えてくれよ」
「なっ!」

 コイツは自尊心の塊だ。昔からそういうヤツだった。だから、自分のモノを奪われたという屈辱を受け入れるはずもない。
 だから、こういう質問に対して、たとえウソでも奪われた状況を他人に話すはずがない。そもそも、オレが奪ったというウソをついた時点で破綻しているのだ。

「うるさい! そんなこと。どうでもイイだろ!」
「言えないよな。だって、本当はオマエ、ダンジョンを制覇せずに、逃げ帰ったもんな。神書なんて手にしていないもんな」

 オレが笑うと、それを聞いていたマコーミックや衛兵たちが、懐疑的な表情になって、互いの顔を見ている。

「おい、アレン。それは本当なのか?」

 マコーミックの質問にアレンは顔を真っ赤にする。

「デタラメだ! コイツがウソをついているだけだ! この大ウソつきが!」

 そう言って、こん棒を手にすると、オレの顔をそれで殴った!

「グファッ!」とオレは口から血を吐き出す。さすがにアレンのチカラは看守の衛兵とは比べものにならない。かなりのダメージだ。

「どうだ! 思い知ったか! ウソをつきましたと謝れ!」

 そう言って、また殴る。

「オレはウソをついていない。じゃあ、ダンジョン最下層をどうやって攻略したか言ってみろよ」
「な、なんだと――」
「最下層はどうなっていた? どんな敵がいた? どうやって、敵を退けた? 神書はどこにあった? 他に何があった?」

 当然、答えられるわけがない。アレンは顔を真っ赤にする。

「うるさい! うるさい! オレはダンジョンを制覇した! そして神書を手に入れた。それをオマエが奪ったんだ! さあ、言え! 神書はどこにある!?」

 気が狂ったようにこん棒を振り回し、オレを殴るので、それを見ていたマコーミックや看守も目を背ける。

「顔を殴るのはやめてください! 話すことができなくなったら、聞き出せなくなります」

 看守がそう言う。ありがたい。これ以上、殴られたらイイ男が台無しになってしまう。

「くそ――」とアレンは悔しそうな顔を見せる。

 かなり、フラストレーションが溜まってきたみたいだな。それじゃ、奥の手を出しますか――

「そうそう、ロゼルが死んだと思っているようだけど、ヤツは生きているよ」
「――えっ?」とアレンが目を丸くする。
「オマエが見捨てたロゼルは、ピンピンしてるぞ」

 まあ、魔力は失ってしまったがな。

「ふ、ふざけるな! アイツが死んだのをオレは見た。リッチが投げたクサナギがロゼルのカラダに刺さって死んだんだ!」
「あれ? おかしいな? ロゼルはオレが殺したんじゃないのか?」

 さすがに、それで衛兵が浮足立ってきた。
「ちょ、ちょっと、隊長を呼んできます」と部屋を出ようとした。

「待て! 誰が部屋を出てイイと言った!」とアレンが看守を呼び止める。
「いや、しかし――」
「オレは王国将軍、ジョージ・ブラフォードの息子だぞ。オレの指示を無視したらどうなるかわかるだろ?」

 そんな脅しを相手に向かって言うので、看守のカラダは震えていた。
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