追放されたクズ勇者の死に戻り ~「オマエはクビだ」からやり直したオレは、破滅フラグを折りまくる~

テツみン

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第四話 クズ勇者、捕まる

その六

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「そ、それはともかく、衛兵の動きはどうなのですか?」

 エオリアの顔を手で押しながら、フィリシアは質問する。すると、エオリアは真顔になって――

「あきらかに不可解です。武装した衛兵が本部の周りをウロウロしているとのこと」

 それに、冒険者ギルドのギルドマスター、マコーミックやアレン・ブラフォードが衛兵本部に入っていったのを確認したと言う。

「アレンも!?」
「はい。この件、冒険者ギルドが関わっているのは間違いないようですね。残念ながら、衛兵本部長からは何も聞き出せませんでしたが――」
「おそらく、神書を狙っているのだと思います」
「神書? どういうことですか?」
「グエル様は、神書アスタリアズノートを手に入れました」
「なんだって!! 神書を手に入れた!?」

 エオリアが大声を出すので、フィリシアは口に人差し指を立てた。

「す、すみません。取り乱してしまいまして――しかし、それは本当なのですね?」
「はい。神剣クサナギは拘束されたときに没収されてしましたが、神書はある方法で隠されています。おそらく、まだグエル様が持っているはずです」

 このことは一部の者しか知らないはずだけど、なんらかの方法で冒険者ギルドが知ることになり、それを手に入れて冒険者ギルドとアレンの手柄にしようと考えているのでは――フィリシアはそう考えた。

「なるほど。たしかに、それならグエル殿とマルタ殿が拘束された理由がわかります」

 そうなると、今頃、神書の在処を聞き出すため、ふたりを拷問しているはずだ――エオリアは、そう想像する。

「ですので、ふたりを助け出してほしいのです。なんとかなりませんか?」

 そう言われても――とエオリアは考え込む。

「それにしても、腑に落ちません」
「なにがですか?」
「あのクズ勇者……失礼、グエル殿のことです。まるで別人のように、見受けられます」

 冒険者ギルドをクビにされても、運び屋のマルタを擁護し、自ら勇者の称号を陛下に返上しにきた。ザブレロでは勇者の仕事ではないと見向きもしなかったゴブリン退治を引き受けたり、ファーナンド遺跡を制覇しても、それを誇ることをしない。

「クズで、傲慢で、色欲で、利己的なあの男が、突然、仲間思いの真人間になっている。まさに、勇者のような行動――いったい、何があったのでしょう?」

 なんか、ボロクソな言われ方をしているので、フィリシアは苦笑いになる。

「そういえは、ザブレロに行ったのですよね? いかがでした?」
「はい、想像以上にゴブリンが徘徊してました。あのままでは、数日以内にザブレロの町は襲われていたでしょう」

 グエルが駆除した群れ以外にも、二カ所でゴブリンの群れがいたようだ。それを、エオリア率いる騎士団が駆逐したらしい。

 あの地域で、これほどゴブリンが集まることはめずらしい。何か異変が起きている可能性があるかもしれないが、今のところ、それ以外の異常な状況は見つかっていないとのこと。

「そうですか――」
「ザブレロの衛兵には、周辺の警備を怠っていたうえに自分たちでゴブリンを始末したとウソをつくから、さんざん怒鳴っておきましたよ。殿下たちがいなかったら、オマエたちは死んでいた。今からでも謝っておけ。さもなければ、もっとへき地が勤務地になるぞ――と、脅しておきましたが――」

 そういえば、ザブレロの衛兵が自分たちを探し回っているという話があったと、フィリシアは思い出す。

「実は、グエル様が衛兵たちに、『自分たちでゴブリン退治をした』と説明しろ――そう言ったのです」
「そうですか――前のグエル殿なら、他人に手柄をゆずるなんて決してしなかったでしょうに――それと、町はずれに住む老婆から聞きました。高価な品物を孫のために与えてくれた――と。彼こそが自分たちの望む『勇者』なのだと、そう言っていましたよ」
「そうだったのですね――」とフィリシアもウレシそうだ。

「殿下、あのクズ――失礼、グエル殿になにがあったのでしょうか?」

 ゴブリンが潜んでるという、危機を見抜く察知力。何の見返りも要求せず、民のために戦う献身さ。そして、自分の成果を驕らない謙虚さ。まさに、彼こそが理想の勇者像である。

「そうですね。おそらくは――」
「おそらくは?」

「愛でしょう!」

 ――――――――はい?

「私の愛が届いたのです。強く、やさしく、それでいて、献身的なお方。グエル様は私たちが望んでいた理想の勇者となったのです! きっと、愛ゆえに成しとけられた奇跡でしょう!」

「は、はあ――」とエオリアは気の抜けた返事をする。

「それはともかく、早くグエル様を――」

 その時、激しい揺れと、大きな爆発音が聞こえた。フィリシアとエオリアは、「何が起きた!?」とバルコニーに出る。原因はすぐにわかった。

「あ、アレはいったい、何なんだぁ!?」
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