便利スキル持ちなんちゃってハンクラーが行く! 生きていける範疇でいいんです異世界転生

翁小太

文字の大きさ
6 / 37
はじまり

6 お仕事妖精

しおりを挟む

 地球にも確か靴屋のおじいさんが寝てる間に仕事をかたずけてくれる妖精の話があったような気がするが、こちらの世界にも似たような話がある。
 無害な魔物で時折食卓にのぼる一角ウサギに乗っていて、背丈はウサギの半分ほど、女性は美しくすらっとした体躯と、光る鱗粉の落ちる翅があり、男性はずんぐりむっくりした横に大きな体に蔦が絡まってできたような羽がある姿をしている。
 よく晴れた月の夜に窓辺にミルクと指輪を置けば女性の妖精が来て刺繍や掃除などの家事を片付けてくれ、水と石を置けば男性の妖精が来て小さな採掘や畑を耕しておいてくれる。窓辺にそれらを置いた日はけして夜中に家の中を歩き回ってはいけない。もしもその妖精の姿をちらりとでも見れば怒った妖精が家の中をめちゃくちゃにしていってしまうから。というおとぎ話だ。
 妖精を『プラニー』と呼ぶ。確か地球では『ブラウニー』と呼ばれていたはずなのだが、どことなく音の響きが似ていて面白い。
 この妖精たちが実在していて商人たちの家に勝手に忍び込んでこんなものはこんなものは御用入りではありませんか?と言っているていで手紙を送りつけて『移動』で商品を配達すればいい。大抵の都市部では警備のために転移魔術などによる重要施設への妨害魔法がかけられていると聞くが、『移動』のスキルではそれらの妨害魔術は聞かないとスキルウィンドウに明記されているので心配いらない。むしろ妨害魔術がかけてあるにも関わず物を移動できるならそれが妖精の実在性の証明にもなるだろう。この世界では神や魔法の存在は実在のものであるし、実在しなさそうなユニークスキルよりもよっぽど信じやすいはず。
 そうなってくると今度は筆跡だ。この科学技術が発達していない世の中であっても識字率が低いからこそ筆跡鑑定というのは裁判でも重要な証拠になると聞いたことがある。
 となれば、筆跡をごまかすすべが必要になる。と、そこで思いついたのだがもしもこの世界に手打ち式のタイプライターがあれば確かに文字としては読めるが明らかにハンコで押している文字に筆跡もくそも無いのだからそこから個人を特定はできないのではないか?
 しかもこの世界にはタイプライターはまだ普及していないはずだ。貴族はどんな書類にも代筆屋を使っていると聞いたし、筆跡が証拠になる世の中でタイプライターを流行らせるのは貴族がいい顔をしないだろう。逆に犯罪者にはバカ受けするかもしれないが、見つければ大騒ぎの大物取りになるに違いない。
 それに実は俺は商人ギルドだけでなく、冒険者ギルドや薬物ギルドにも末端ながら席を置いている。といっても商業ギルド以外はハッキリ言って幽霊構成員も甚だしい。ぶっちゃけ他のギルドの構成員になれないと読めない書庫の資料が読みたいがために登録したようなものだ。それらの資料をまとめて書籍なんかも作りたい。といっても大量に印刷して配りたいわけではなく、いくつか見知っているギルドに進呈したい程度なのでタイプライターで清書できればいいのだ。正直、てこの原理で打てるタイプライターと、金属を加工して文字を組んで作る活版印刷なら、タイプライターのほうが多少機能をあきらめれば再現できそうってだけの話なのだが。
 個人的にはこの世界のもので劣化版でも再現できる物だけを流通させたい、そこに間違いはない。なのでちゃんとこの世界のものだけで再現できるかどうかをテストすべきだ、ゆえにそこら辺の材料の確保もしないとならない。
 それからこんな話に乗ってくれそうな商人の選定。
 つまりこの時点で俺が着手しなくちゃいけないのは木製タイプライターの作成と、それらを作るのにこの世界でも問題ないという確証だ。
 実際自分で作って試せなくても普通にそういうものが存在しているという情報が確認できれば着手しても問題ない。
 とりあえず今のところは毛糸の編み物は存在するのでそろそろ夏の終わりでこれから秋を迎えようとしている最中だから毛糸のショールやレース編みなどは問題ないことにしよう。アクリルの高発色の毛糸だけど、染色の技術に関しては各工房が匿秘しているのだから俺の作品だけ高発色でもなんら問題ない。とりあえず久々の編み物だから100均で売っている編み物キットを買ってみよう。
 さーて、これからもっと楽しくなるぞ。
 楽しむぜ!異世界転生!!
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

小さな貴族は色々最強!?

谷 優
ファンタジー
神様の手違いによって、別の世界の人間として生まれた清水 尊。 本来存在しない世界の異物を排除しようと見えざる者の手が働き、不運にも9歳という若さで息を引き取った。 神様はお詫びとして、記憶を持ったままの転生、そして加護を授けることを約束した。 その結果、異世界の貴族、侯爵家ウィリアム・ヴェスターとして生まれ変ることに。 転生先は優しい両親と、ちょっぴり愛の強い兄のいるとっても幸せな家庭であった。 魔法属性検査の日、ウィリアムは自分の属性に驚愕して__。 ウィリアムは、もふもふな友達と共に神様から貰った加護で皆を癒していく。

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...