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意外なオファー
しおりを挟む(くそっ、こんな所で死んでたまるか)
マリアンヌは汚い路地に落ちていたビール瓶の欠片を手にした。
「上等だ、かかってこい魔法野郎」
「・・・」
身構えるも少年が襲ってくる様子がない。不思議そうにマリアンヌを見るだけである。暫く無言が続き、やっと少年が言葉を発したのだが、小声で聞こえずらくてマリアンヌは耳を傾けた。
「魔力が少しだけどある・・・貴族かな・・・でも格好もボロボロだし・・・」
「てめぇ、ボソボソ何言ってんだ」
少年が意味不明な言葉を発するとポンッ!!と音がし、マリアンヌの手のガラスの欠片は、兎の縫いぐるみになっていた。
「うん、ガラス瓶より縫いぐるみのほうがいいよね・・・」
「うわぁ、なんだこれ!!」
マリアンヌはその縫いぐるみを手放した。少年は魔法を使ったのだ。
「君は、だあれ?」
「っ・・・名乗る程のもんじゃ」
(まだ、バレてない。逃げるぞ・・・)
「あっ!!あそこ!!」
マリアンヌは太陽に向かって指を差し、少年がそちらに注意を向けたところで走りだそうと足を一本化踏み出した。
『◈↖¡:⇏◑◊』
(ぐっ・・・)
彼は呪文を唱える。するとマリアンヌが一歩踏み出そうも足が動かなくなってしまった。
「負けてたまるか!!ふんっ・・・!!」
力を込めて前に進もうとする。すると足がピクリと動いたようだ。
「おりゃああああああ!!」
さらに力を込めると、一歩前進した。
「へえ、僕の魔法で動けるなんて、すごく興味深いね・・・」
パチリと指を鳴らすと、マリアンヌの上に画面のようなものが映されていた。そこにはマリアンヌのプロフィールが書かれていた。
名前:マリアンヌ(元ヨーク侯爵マリアンヌ=スペクト)
住所:なし
学歴:国立女子学園卒業
職業:なし(元悪役令嬢)
魔力:微量だがあり
特殊能力:前世の記憶あり
補足:婚約破棄され平民落ちし、只今お金が底を尽き、さ迷い中
(職業、元悪役令嬢ってなんだよ、まんまじゃねえか!!)
マリアンヌがその画面を見て憤慨していると、少年は興味深そうにそのプロフィールを見ている。
「け、消せ!!お前だろう、こんな画面出したのは」
「ああ、あの噂の性悪侯爵令嬢?へえ、前世持ちか。面白い・・・」
少年は良いことを思いついたと、マリアンヌの前に立った。ふっと足の抵抗がなくなり、バランスを失ったマリアンヌは再び地面に倒れることとなる。見上げると彼は手を差しのべていた。
「ねえ一年だけ、僕の助手にならない?」
「・・・助手!?」
(魔法使いの手伝いをするってことか?)
「魔法なんて、たいして使えねーのにか?」
「魔力が少しでもあれば大丈夫。今人手が足らなくてね。毎日の生活費も保証するよ」
(・・・でもこいつの助手なんて・・・何か裏があるんじゃないか?)
「一年辞めずに手伝ってくれたら、五百トールあげるよ」
「ご、五百トール!?」
五百トールあれば貴族であった以前の生活と同じように生活しても三年は生活できる金額である。贅沢好きであったマリアンヌにとって、生唾もののオファーであった。
「やるの?僕忙しいからあと三秒で帰っちゃうよ。いーち、にー、さー「や、やる!!」
マリアンヌは差し出されていた少年の手を取った。
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