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彼の屋敷
しおりを挟む「じゃあ、僕の家に行こうか」
「ん?ぼろ屋敷じゃねえか」
そこは少年が出てきた古ぼけた店で、しばらく使われていないのか至るところにもクモの巣が張ってあり、すでに崩壊しそうであった。
「こ、こんなところ住めるか!!やっぱ辞め・・・ギャア!!」
マリアンヌは背中を少年に押され、入り口に入ってしまう。マリアンヌは振り返り彼に怒鳴ろうとするが、周りの景色がぐにゃりと曲がり、明るくなった。
(あ、あれ・・・)
そこは広い丘の上であった。そこにポツンと一軒の屋敷があり、丘の下には小さな町が見える。マリアンヌがポカンとその景色を見ていると、ぐにゃりと何もない空間から少年が現れる。
「ひゃあ!!びっくりした」
「移転魔法だよ。ここは北にあるラザリル付近だ。王都のあの家と繋げてある」
「ラザリル・・・だいぶ遠いところなんだな」
ラザリルは王都から馬車で二日程かかる場所である。温泉も出る、自然の町だと言われているのだが、田舎が好きでないマリアンヌは行ったことがなかった。
「・・・まあまあ大きな屋敷じゃん」
「どこぞの貴族の別荘だったみたいだよ。それを買ったんだ」
(貴族じゃないのに、もうこんな家買える程稼いでるってことか・・・)
少年はマリアンヌを屋敷の中に招いた。木造の作りであるこの家は、一階部分にリビングやキッチンがあり、二階には部屋がいくつか並び、広いお風呂が付いている。書斎兼仕事場は地下にあり、地下といっても窓から空が見えるので不思議である。
(ここも何かの魔法が使われてるのか?)
裏庭には薬草が植えてあり、その隣の馬小屋には五頭もの牛が馬小屋にいた。
「ひっぃ!!馬・・・」
マリアンヌは動物が苦手である。何より汚いし臭いからだ。
(ここには絶対近づかないどこうっと)
「じゃ、これが契約書。君の魔力を込めてからサインしてね」
(・・・隅々まで読んどかないと。騙されないぞ)
隅っこに小さく「違反すれば死に至る」などと書かれていないか目を凝らした。
──雇用主の指導に従い従順に勤務すること。
──給金一年/五百トール。衣食住保証で毎月お小遣いあり。給金の支払いは一年後まとめて支払う。ただし一年以内に辞めれば給金はなしとなる。
──休暇は基本自由だが、外出は雇用主の許可が必要。
「辞めたら給金なしだって!?」
「そりゃ君みたいに魔力がある者をまた見つけるのは大変だろう、途中で辞められたらとっても困る。その為の高い給金だ」
(五百トール・・・たった・・・たった一年ガキの手伝いしとけばいいんだろ。チョロすぎる)
「するの?しないの?」
「・・・やる」
マリアンヌは魔力をペンに込め、契約書にサインをした。その下に、彼もユーグと自身の名を書き加える。これは魔法使いたちや魔力持ちの貴族の契約方法で、それには強く効力を持つ。
(一年、やってやろうじゃねえか)
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