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仕事は始まらない??
しおりを挟む「じゃあ、今からこのショベルを持って」
「は・・・?」
ユーグに連れてこられたのは、地下の部屋ではなく、裏庭の馬小屋であった。そこには五頭の馬がおり、ユーグが訪れると嬉しそうにユーグに近づいていく。
「ひぃっ・・・」
マリアンヌはそこから離れようと後退るが、ユーグはマリアンヌの腕を引き、一頭一頭に挨拶をさせた。
「ほら、これがホワイトだ。白くて綺麗だろう、それでこっちがブラウン。お調子者だ」
「おめえ、ネーミングセンスねえな。馬の色まんまじゃねえか」
マリアンヌは「じゃ、挨拶は済んだし地下室で仕事に・・・」と去ろうとすると、ユーグが引き留める。
「君の今日の仕事はこいつらの世話だよ。まず藁を新しいのに変えて、糞も掃除するんだ」
「・・・は?」
「彼らはお利口だから、ちゃちゃっと魔法で片づけようとすると怒るんだ。だからこうやって毎日世話をしてるって訳」
そう言ってユーグは一頭の馬に乗った。
「じゃ、ちょっと走ってくるからやっておいてね」
「っ・・・ちょ、ちょっと!!」
引き留める前にユーグはその場を馬に乗り去ってしまった。猫背であるにも関わらず、馬に乗ると背筋が伸びて、後ろ姿が少しかっこよく見えたのは、目の錯覚だとマリアンヌは思いたい。
「・・・」
「ヒヒン!!」
「ひっ・・・」
少し近づくだけでも馬は大きな声を発した。マリアンヌが怖がっているのが分かるのか、馬たちも興奮しているようだ。
「臭い、汚い、うるさい・・・こんなんやってれるか!!」
マリアンヌはショベルを投げ捨て、馬小屋を出た。マリアンヌは風呂に入ってゴシゴシと体を洗い、部屋に閉じ籠ってふて寝することにした。
+
+
+
──バンッ!!──
「・・・ねえ、何してるの?仕事、与えたよね。無能なの?」
「っ・・・あんなん魔法使う仕事じゃねえだろ!!馬の世話なんて平民みたいなことするなんて聞いてねえよ!!」
「馬ってすごく敏感なんだよ。衛生も悪かったら病気になるし、毎日世話が必要な動物なんだ」
ユーグはマリアンヌの体を引きずり、馬小屋の隣にあるさらに小さな小屋にマリアンヌを入れた。
「ここは鳥小屋だったんだけど、今使ってないから、しばらくここで反省しといて」
「っ・・・や、やめろ!!出せ、鬼畜眼鏡!!」
小屋の扉を開けようとも鍵がかかっている上に魔法で補強しているそうなので、押してもびくともしない。
「雇用主に酷い言葉遣いだね。僕に‘ごめんなさいマスター’って言って土下座するまで出さないから」
「そ、そんなこと言う訳ねえだろ!」
「じゃ、しばらく反省しといて。いつまで持つかな」
「絶っっ対に言わねえからな」
コツコツと本当に彼がその場を離れていく音が聞こえてくる。
(あの鬼畜野郎・・・)
マリアンヌは小屋の中で『無』との戦いが始まった。
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