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第五章 垣間見る過去とそれぞれの道
エピローグ
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「雨は弱まれど未だ止まず……ね」
喫茶店から出て、遠ざかり小さくなっていく赤い傘をしばらく見守った後、空を見上げて何となく呟く。
喫茶店にお互い駆け込むように入った頃に比べれば随分と弱くなったとはいえ、天から落ちてくる雨粒は未だ健在であった。
俺は赤い傘から背を向けると、ズボンのポケットに手を入れると元来た道を雨に当たるのも構わず歩く。
俺も佐藤さんも、退職後にお互いどうしているかどこかで気になっていた者同士だったのだと思う。
それが、今回の件でお互いのシコリがある程度取れたのなら、今後どちらかからアポを取って会うという事はないだろう。
それこそ、今回のような縁でもない限り。
「……縁……か。思えば、ここに来てから俺はいろんな縁に巡り合っているな」
それは新しい会社の人達であったり、新しい近所の住人であったり……。
祖国から逃げてきて俺の家に住み着いてしまった妙な二人組であったり……だ。
「さて。それじゃあ、腹を好かせているであろう猫とお姫様に何か美味しいものでも買っていってやるかな」
俺はさっきの喫茶店でやや軽くなってしまった財布の中身を心配しつつも、車に向かって足を進めた。
今日からしばらくの間はきっとこんな天気が続くのだろう。
そう、感じた。
◇◇◇◇
「あれ? 俺の飯は?」
夕飯の時間。居間のテーブルの上に並べられた料理の数々は見事に俺の前を避けて金髪とリリの前だけに置かれている。
ちなみに、俺が帰りに買ってきたケーキも2人の前にしか置かれていなかった。
「えぇ?」
しかし、俺の発言を聞いたリリは俺の方に顔を向けると、本当に、心のそこから驚いたように声を上げた。
何だよその顔。寧ろ俺がその顔を向けたいわ。
「お夕飯前に女の人と二人でお店に行ってたのにご飯いるの?」
「…………」
……どーりで背中のお目目が静かだと思ったわ。
こうやって嫌味たっぷりな仕打ちを目論んでいたわけですね?
帰ってきたら一切口を開かないくせに顔だけはめっちゃニッコニコだったから不思議に思ってたけど、こういう事かい。
「いや、確かに知り合いと喫茶店に行ってきたのは事実だけど、飲み物しか飲んでないからな?」
「へー。そうなんだ? 何だかその女の人の分までお金を払って上げてたみたいだけど、おいくらだったのかな? 私には散々お金の事頼むって言ってたのに、今日またATM? で、お金出したでしょ。2人で飲んだ飲み物のお金と、今日のお料理のお金。どっちが高いか知ってる?」
……ヤバい。
こいつは本気で怒っていらっしゃる。
何より、さっきまではまるで感じなかったのに威圧感が凄い。ひょっとして、これが魔力ってやつかな?
俺は助けを求めるように視線を金髪に向けるが、テーブルの反対側に座っている金髪は終始下を向いたまま肩を震わせていた。
どうやらあいつもリリの威圧感に恐怖を……と、思っていたら、チラッと上げた金髪の瞳が完全に笑いを堪えたそれだった。
……あの野郎。
後で絶対に折檻してやるからな。
だが、俺は賢い男だ。
出来れば今すぐにでもテーブルを飛び越えて金髪にドロップキックを浴びせてやりたいのは山々なのだが、今の状況でそんな事をすればどうなるかは火を見るよりも明らか。
何しろ、今回のリリの怒りの原因が「女」と「金」だ。
これだけ聞くと俺ってどんなダメ男? と思ってしまいそうだが、別に悪い事をしたわけじゃないはずだ。
だが、今のリリにそんな事を言っても無駄だろう。まして、この状況で金髪を構ったらまた別の女と……と、なりそうな気がする。
ならば、俺の取る手段は一つだった。
「そうだな。今日は水で我慢するよ。俺」
「うん。そうだよね。あ、コップと水道はあっちね」
それすらセルフサービスですか。そうですか。
何時もの甲斐甲斐しいリリさんは今日は臨時休業のようですね!
そんな針のムシロ状態で夕食の時間を過ごした俺だったが、深夜になってどうしても腹が減って眠れなくなって冷蔵庫を開けたら、ラップに包まれたおにぎりを2つ発見したのでレンチンして食った。
その後布団に戻った時も、朝起きた時も特にリリに何も言われなかったから、俺の為に用意してくれたものだと信じたい。
信じたいが……。
しばらくは女の人と2人で話すのは辞めようと心に誓った。
喫茶店から出て、遠ざかり小さくなっていく赤い傘をしばらく見守った後、空を見上げて何となく呟く。
喫茶店にお互い駆け込むように入った頃に比べれば随分と弱くなったとはいえ、天から落ちてくる雨粒は未だ健在であった。
俺は赤い傘から背を向けると、ズボンのポケットに手を入れると元来た道を雨に当たるのも構わず歩く。
俺も佐藤さんも、退職後にお互いどうしているかどこかで気になっていた者同士だったのだと思う。
それが、今回の件でお互いのシコリがある程度取れたのなら、今後どちらかからアポを取って会うという事はないだろう。
それこそ、今回のような縁でもない限り。
「……縁……か。思えば、ここに来てから俺はいろんな縁に巡り合っているな」
それは新しい会社の人達であったり、新しい近所の住人であったり……。
祖国から逃げてきて俺の家に住み着いてしまった妙な二人組であったり……だ。
「さて。それじゃあ、腹を好かせているであろう猫とお姫様に何か美味しいものでも買っていってやるかな」
俺はさっきの喫茶店でやや軽くなってしまった財布の中身を心配しつつも、車に向かって足を進めた。
今日からしばらくの間はきっとこんな天気が続くのだろう。
そう、感じた。
◇◇◇◇
「あれ? 俺の飯は?」
夕飯の時間。居間のテーブルの上に並べられた料理の数々は見事に俺の前を避けて金髪とリリの前だけに置かれている。
ちなみに、俺が帰りに買ってきたケーキも2人の前にしか置かれていなかった。
「えぇ?」
しかし、俺の発言を聞いたリリは俺の方に顔を向けると、本当に、心のそこから驚いたように声を上げた。
何だよその顔。寧ろ俺がその顔を向けたいわ。
「お夕飯前に女の人と二人でお店に行ってたのにご飯いるの?」
「…………」
……どーりで背中のお目目が静かだと思ったわ。
こうやって嫌味たっぷりな仕打ちを目論んでいたわけですね?
帰ってきたら一切口を開かないくせに顔だけはめっちゃニッコニコだったから不思議に思ってたけど、こういう事かい。
「いや、確かに知り合いと喫茶店に行ってきたのは事実だけど、飲み物しか飲んでないからな?」
「へー。そうなんだ? 何だかその女の人の分までお金を払って上げてたみたいだけど、おいくらだったのかな? 私には散々お金の事頼むって言ってたのに、今日またATM? で、お金出したでしょ。2人で飲んだ飲み物のお金と、今日のお料理のお金。どっちが高いか知ってる?」
……ヤバい。
こいつは本気で怒っていらっしゃる。
何より、さっきまではまるで感じなかったのに威圧感が凄い。ひょっとして、これが魔力ってやつかな?
俺は助けを求めるように視線を金髪に向けるが、テーブルの反対側に座っている金髪は終始下を向いたまま肩を震わせていた。
どうやらあいつもリリの威圧感に恐怖を……と、思っていたら、チラッと上げた金髪の瞳が完全に笑いを堪えたそれだった。
……あの野郎。
後で絶対に折檻してやるからな。
だが、俺は賢い男だ。
出来れば今すぐにでもテーブルを飛び越えて金髪にドロップキックを浴びせてやりたいのは山々なのだが、今の状況でそんな事をすればどうなるかは火を見るよりも明らか。
何しろ、今回のリリの怒りの原因が「女」と「金」だ。
これだけ聞くと俺ってどんなダメ男? と思ってしまいそうだが、別に悪い事をしたわけじゃないはずだ。
だが、今のリリにそんな事を言っても無駄だろう。まして、この状況で金髪を構ったらまた別の女と……と、なりそうな気がする。
ならば、俺の取る手段は一つだった。
「そうだな。今日は水で我慢するよ。俺」
「うん。そうだよね。あ、コップと水道はあっちね」
それすらセルフサービスですか。そうですか。
何時もの甲斐甲斐しいリリさんは今日は臨時休業のようですね!
そんな針のムシロ状態で夕食の時間を過ごした俺だったが、深夜になってどうしても腹が減って眠れなくなって冷蔵庫を開けたら、ラップに包まれたおにぎりを2つ発見したのでレンチンして食った。
その後布団に戻った時も、朝起きた時も特にリリに何も言われなかったから、俺の為に用意してくれたものだと信じたい。
信じたいが……。
しばらくは女の人と2人で話すのは辞めようと心に誓った。
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