16 / 22
森の午後 ― 春の息吹と兄の決意
しおりを挟む
ドバンは森の切り株に腰をおろし、風の向きを確かめた。
「……多分、北の要塞が完成しないのは、この暖かい風のせいだな。
建材の凍結が解けて、作業が進まないらしい」
アンナ
「それって、いいことなの?」
「いいさ。敵の動きも鈍る」
そう言いながら、ドバンは落ち葉の下に転がる木の実を拾い上げた。
「おっ、うまいな。これ、持って帰っていいか?」
「いいけど……誰に?」
「マリアに食べさせてやりたい」
アンナ
「えっ? 彼女?」
「いや、うちの女中。ばあやの孫だ」
ドバンは少し照れくさそうに笑う。
「きっと、リスが木の実を食べるみたいに、頬いっぱいでかじると思うんだ。かわいいぞ」
その瞬間、ハーバードが吹き出した。
「はははっ! お前がそんな顔で“かわいい”とか言う日が来るとはな!」
アンナも笑い転げる。
「お兄さま、恋バナみたい!」
「ち、違う!」とドバンが耳まで赤くなり、
ロウエルが肩をすくめた。
「ま、森は恋も芽吹く場所ってことだな」
ハーバード
「お、うまいこと言った!」
森に笑い声が広がる。
枝の上で小鳥が鳴き、
その音に混じって、またひとすじ、
王都へ向かう柔らかな風が吹いた。
王弟との再会 ― 木の実とシコ姫
王都の外れ、夕暮れの庭。
王弟は薄手のマントを翻しながら、ドバンを出迎えた。
「おや、森の風の使者がわざわざ来てくれたのか」
ドバンは懐から布包みを取り出す。
「たいしたものじゃありません。森の木の実です」
王弟は目を細める。
「ほう、森の恵みか。
……だが、森には手を出さないでくれと言われているんだろう?」
「ええ、妹が“森は触るな”と」
王弟は包みを受け取りながら、
「木の実が、和平の締結条件ってわけか?」と、
いたずらっぽく笑った。
「いいさ。あの“シコ姫”は元気そうで何よりだ」
ドバンは吹き出しかけて、口元を押さえた。
「シコ姫……舞ってるつもりだったんだがな」
王弟は笑みを深める。
「どちらでも構わん。結果が出ているなら、それが正解だ」
「怒られるな、きっと」
ドバンは頭をかきながら苦笑した。
「まあ、怒る元気があるなら上出来だ。
この国には、まだ笑いが残っている証拠だ」
王弟の声は、冗談の奥にほんのわずか温度を帯びていた。
木の実の香りが、冬の空気にほんのりと広がっていく。
王弟ラジーヤの語り ― 王の病と沈む王国
王弟ラジーヤは、木の実を一粒指で転がし、
静かに噛みしめた。
「……甘いな。森の味がする」
ドバン
「王都では、もうこんな味、ありません」
ラジーヤは頷く。
「そうだな。
王の病が始まってからというもの、
食卓からは色も香りも消えた。
肉は灰色、パンは粉の匂いしかしない。
それでも、皆“神の試練”と呼んで口を閉ざしている」
彼はゆっくりと椅子の背にもたれた。
「要塞ができたら、この国は終わる。
多大な金銀を抱えたまま、燃え尽きるようにな」
ドバン
「……金銀があっても、使わなければ意味がないじゃないですか」
ラジーヤは目を細めた。
「人は、持つことそのものに安心を覚える。
飢えた者ほど、金貨を握りしめる。
使わず、誰にも渡さず、朽ちていく――
それがこの国の姿だ」
沈黙。
暖炉の火が、ぱちりと弾ける。
「王の病も、それに似ている」
ラジーヤの声は低く、苦味を帯びていた。
「身体が朽ちても、玉座を離さない。
命よりも“持つ”ことに縛られている。
あの方にとって、王冠は生命そのものなんだ」
ドバンは息を呑んだ。
「……つまり、治すことは……」
「できんよ」
ラジーヤは木の実をもうひとつ摘んで、指先で砕いた。
「病を癒す魔法は、もう王城にはない。
義聖女の魔法は、延命だけを繰り返している。
命をつなぐ代わりに、国を削っているんだ」
ドバンはゆっくりと拳を握りしめた。
「……生かされているんじゃなく、吸われている……」
ラジーヤ
「そう。
この国は、いずれ“命の借金”で倒れる。
ただ、いつになるかは、誰にもわからん」
その言葉のあと、長い沈黙が落ちた。
木の実の香りが、かすかに甘く漂っている。
<王弟ラジーヤの真実>
ラジーヤは、火の揺らめきを見つめながら言った。
「持てる者の渇望と、持たない者の渇望――
結局、同じものなんだ」
ドバンは目を細める。
「……金銀、ですか」
「そうだ」
ラジーヤはゆっくりと木の実を指で転がした。
「持たない者は、金銀を欲しがる。
持てる者は、金銀を失うことを恐れる。
どちらも“奪われる”ことを恐れている。
皮肉なことに、王の病も、それに似ている」
ドバン
「……どういう意味です?」
ラジーヤの声が少し低くなった。
「義聖女の魔法の源――あれは、王の病そのものだ。
彼女は王から命を吸い上げ、その残滓を魔力に変えている。
王が死ねば、彼女も消える。
だから、延命をやめられない」
ハーバードが息を呑んだ。
「つまり……聖女は、王の命で魔法を保っている?」
ラジーヤは頷いた。
「そうだ。
それがこの国の支配の根。
死と延命が抱き合って眠っている。
――滑稽だろう? 金銀のようにな」
そして、木の実をひとつ口に放り込む。
「俺は、これでいい」
火の光が彼の頬を照らした。
「この木の実は、森の命から落ちたものだ。
誰の血も、命も吸っていない。
……それだけで、十分だ」
沈黙が落ちる。
薪がぱちりと弾けた。
ドバンは、拳を握りしめて言った。
「王は……救えると思いますか?」
ラジーヤは、しばらく考え、そして静かに答えた。
「――もう、救うという形では救えない。
だが、終わらせ方は選べるかもしれない」
「……多分、北の要塞が完成しないのは、この暖かい風のせいだな。
建材の凍結が解けて、作業が進まないらしい」
アンナ
「それって、いいことなの?」
「いいさ。敵の動きも鈍る」
そう言いながら、ドバンは落ち葉の下に転がる木の実を拾い上げた。
「おっ、うまいな。これ、持って帰っていいか?」
「いいけど……誰に?」
「マリアに食べさせてやりたい」
アンナ
「えっ? 彼女?」
「いや、うちの女中。ばあやの孫だ」
ドバンは少し照れくさそうに笑う。
「きっと、リスが木の実を食べるみたいに、頬いっぱいでかじると思うんだ。かわいいぞ」
その瞬間、ハーバードが吹き出した。
「はははっ! お前がそんな顔で“かわいい”とか言う日が来るとはな!」
アンナも笑い転げる。
「お兄さま、恋バナみたい!」
「ち、違う!」とドバンが耳まで赤くなり、
ロウエルが肩をすくめた。
「ま、森は恋も芽吹く場所ってことだな」
ハーバード
「お、うまいこと言った!」
森に笑い声が広がる。
枝の上で小鳥が鳴き、
その音に混じって、またひとすじ、
王都へ向かう柔らかな風が吹いた。
王弟との再会 ― 木の実とシコ姫
王都の外れ、夕暮れの庭。
王弟は薄手のマントを翻しながら、ドバンを出迎えた。
「おや、森の風の使者がわざわざ来てくれたのか」
ドバンは懐から布包みを取り出す。
「たいしたものじゃありません。森の木の実です」
王弟は目を細める。
「ほう、森の恵みか。
……だが、森には手を出さないでくれと言われているんだろう?」
「ええ、妹が“森は触るな”と」
王弟は包みを受け取りながら、
「木の実が、和平の締結条件ってわけか?」と、
いたずらっぽく笑った。
「いいさ。あの“シコ姫”は元気そうで何よりだ」
ドバンは吹き出しかけて、口元を押さえた。
「シコ姫……舞ってるつもりだったんだがな」
王弟は笑みを深める。
「どちらでも構わん。結果が出ているなら、それが正解だ」
「怒られるな、きっと」
ドバンは頭をかきながら苦笑した。
「まあ、怒る元気があるなら上出来だ。
この国には、まだ笑いが残っている証拠だ」
王弟の声は、冗談の奥にほんのわずか温度を帯びていた。
木の実の香りが、冬の空気にほんのりと広がっていく。
王弟ラジーヤの語り ― 王の病と沈む王国
王弟ラジーヤは、木の実を一粒指で転がし、
静かに噛みしめた。
「……甘いな。森の味がする」
ドバン
「王都では、もうこんな味、ありません」
ラジーヤは頷く。
「そうだな。
王の病が始まってからというもの、
食卓からは色も香りも消えた。
肉は灰色、パンは粉の匂いしかしない。
それでも、皆“神の試練”と呼んで口を閉ざしている」
彼はゆっくりと椅子の背にもたれた。
「要塞ができたら、この国は終わる。
多大な金銀を抱えたまま、燃え尽きるようにな」
ドバン
「……金銀があっても、使わなければ意味がないじゃないですか」
ラジーヤは目を細めた。
「人は、持つことそのものに安心を覚える。
飢えた者ほど、金貨を握りしめる。
使わず、誰にも渡さず、朽ちていく――
それがこの国の姿だ」
沈黙。
暖炉の火が、ぱちりと弾ける。
「王の病も、それに似ている」
ラジーヤの声は低く、苦味を帯びていた。
「身体が朽ちても、玉座を離さない。
命よりも“持つ”ことに縛られている。
あの方にとって、王冠は生命そのものなんだ」
ドバンは息を呑んだ。
「……つまり、治すことは……」
「できんよ」
ラジーヤは木の実をもうひとつ摘んで、指先で砕いた。
「病を癒す魔法は、もう王城にはない。
義聖女の魔法は、延命だけを繰り返している。
命をつなぐ代わりに、国を削っているんだ」
ドバンはゆっくりと拳を握りしめた。
「……生かされているんじゃなく、吸われている……」
ラジーヤ
「そう。
この国は、いずれ“命の借金”で倒れる。
ただ、いつになるかは、誰にもわからん」
その言葉のあと、長い沈黙が落ちた。
木の実の香りが、かすかに甘く漂っている。
<王弟ラジーヤの真実>
ラジーヤは、火の揺らめきを見つめながら言った。
「持てる者の渇望と、持たない者の渇望――
結局、同じものなんだ」
ドバンは目を細める。
「……金銀、ですか」
「そうだ」
ラジーヤはゆっくりと木の実を指で転がした。
「持たない者は、金銀を欲しがる。
持てる者は、金銀を失うことを恐れる。
どちらも“奪われる”ことを恐れている。
皮肉なことに、王の病も、それに似ている」
ドバン
「……どういう意味です?」
ラジーヤの声が少し低くなった。
「義聖女の魔法の源――あれは、王の病そのものだ。
彼女は王から命を吸い上げ、その残滓を魔力に変えている。
王が死ねば、彼女も消える。
だから、延命をやめられない」
ハーバードが息を呑んだ。
「つまり……聖女は、王の命で魔法を保っている?」
ラジーヤは頷いた。
「そうだ。
それがこの国の支配の根。
死と延命が抱き合って眠っている。
――滑稽だろう? 金銀のようにな」
そして、木の実をひとつ口に放り込む。
「俺は、これでいい」
火の光が彼の頬を照らした。
「この木の実は、森の命から落ちたものだ。
誰の血も、命も吸っていない。
……それだけで、十分だ」
沈黙が落ちる。
薪がぱちりと弾けた。
ドバンは、拳を握りしめて言った。
「王は……救えると思いますか?」
ラジーヤは、しばらく考え、そして静かに答えた。
「――もう、救うという形では救えない。
だが、終わらせ方は選べるかもしれない」
84
あなたにおすすめの小説
不器量令嬢は、婚約破棄の断罪が面倒くさい
あんど もあ
ファンタジー
不器量なマルグリットは、婚約者の美しい第一王子からずっと容姿を貶められる日々。とうとう王立学園の卒業パーティーで王子に婚約破棄を宣言され、「王子から解放される! それいいかも!」となったが、続く断罪が面倒くさくて他の人に丸投げする事にする。
婚約お断り令嬢ですわ ~奇行で縁談を潰していたら本命騎士に再会しました~
鍛高譚
恋愛
婚約話? 結構ですわ。
私には――子供の頃に命を救ってくれた“黒髪の騎士”がいるのですから。
公爵令嬢アンネローゼ・フォン・グレイシアは、才色兼備の完璧令嬢……だった。
だが、ある日から突如“奇行”に走り始める。正座で舞踏会に参加? スープにストロー? 謎のポエム朗読?
そう、それはすべて――望まぬ婚約をぶち壊すため!
王族、貴族、策略家、演技派……次々と舞い込む政略結婚の話。
アンネローゼはあの手この手で縁談をぶった斬り、恋も名誉も自由も手に入れる!
すべての婚約破棄は、たった一人の人に出会うため――
「破談のアンネローゼ様」が貫く、“本当の婚約”とは?
痛快!恋愛ざまぁ×ラブコメディ×ハッピーエンド!
破談上等のお嬢様が、本物の愛を掴むまでの逆転劇が今、始まりますわ!
「偽物の聖女は要らない」と追放された私、隣国で本物の奇跡を起こしたら元の国が滅びかけていた件
歩人
ファンタジー
聖女リーゼロッテは、王太子カールに「お前の加護は偽物だ」と断じられ、
婚約を破棄された。代わりに聖女の座に就いたのは、愛らしく微笑む男爵令嬢エルゼ。
追放されたリーゼロッテが隣国に辿り着いたとき、その地は疫病に苦しんでいた。
彼女が祈ると、枯れた泉が蘇り、病は癒え、荒野に花が咲いた。
——本物の聖女の力が、ようやく枷を外されて目覚めたのだ。
一方、リーゼロッテを失った王国では結界が綻び始め、魔物が溢れ出す。
カールは今さら「戻ってくれ」と使者を送るが、リーゼロッテの隣には、
彼女の力を最初から信じていた隣国の若き王がいた。
「あの国に戻る理由が、もう一つもないのです」
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
「貧相な小娘」と罵った第一王子へ。番(つがい)は貴方ではなく、国王陛下(お父様)でした
しえろ あい
恋愛
「お父様、わたくし、あの方と目が合った瞬間、分かってしまったのです」
十六歳のデビュタントの夜、ルーセント侯爵令嬢フェリシアを待っていたのは、残酷な罵倒だった。第一王子カシウスは、可憐な白いドレスを纏った彼女を「貧相な小娘」と呼び、己の番(つがい)であることを真っ向から否定する。
会場に響く冷笑と、愛用の刺繍に込めた自信さえ打ち砕くような屈辱。しかし、絶望の淵に立たされた彼女を見つめていたのは、王子ではなく、圧倒的な威厳を放つ「ある男」だった。
魂を焦がすような熱い視線が重なり、静まり返る謁見の間。この出会いが、王室を揺るがす大事件の幕開けになるとは、まだ誰も知らない。自身の価値を否定された少女が、真実の愛によって世界で最も幸福な王妃へと駆け上がる、逆転溺愛ストーリー。
※小説家になろう様にも投稿しています※
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
【完結】婚約者?勘違いも程々にして下さいませ
リリス
恋愛
公爵令嬢ヤスミーンには侯爵家三男のエグモントと言う婚約者がいた。
先日不慮の事故によりヤスミーンの両親が他界し女公爵として相続を前にエグモントと結婚式を三ヶ月後に控え前倒しで共に住む事となる。
エグモントが公爵家へ引越しした当日何故か彼の隣で、彼の腕に絡みつく様に引っ付いている女が一匹?
「僕の幼馴染で従妹なんだ。身体も弱くて余り外にも出られないんだ。今度僕が公爵になるって言えばね、是が非とも住んでいる所を見てみたいって言うから連れてきたんだよ。いいよねヤスミーンは僕の妻で公爵夫人なのだもん。公爵夫人ともなれば心は海の様に広い人でなければいけないよ」
はて、そこでヤスミーンは思案する。
何時から私が公爵夫人でエグモンドが公爵なのだろうかと。
また病気がちと言う従妹はヤスミーンの許可も取らず堂々と公爵邸で好き勝手に暮らし始める。
最初の間ヤスミーンは静かにその様子を見守っていた。
するとある変化が……。
ゆるふわ設定ざまああり?です。
婚約破棄された伯爵令嬢ですが、辺境で有能すぎて若き領主に求婚されました
おりあ
恋愛
アーデルベルト伯爵家の令嬢セリナは、王太子レオニスの婚約者として静かに、慎ましく、その務めを果たそうとしていた。
だが、感情を上手に伝えられない性格は誤解を生み、社交界で人気の令嬢リーナに心を奪われた王太子は、ある日一方的に婚約を破棄する。
失意のなかでも感情をあらわにすることなく、セリナは婚約を受け入れ、王都を離れ故郷へ戻る。そこで彼女は、自身の分析力や実務能力を買われ、辺境の行政視察に加わる機会を得る。
赴任先の北方の地で、若き領主アレイスターと出会ったセリナ。言葉で丁寧に思いを伝え、誠実に接する彼に少しずつ心を開いていく。
そして静かに、しかし確かに才能を発揮するセリナの姿は、やがて辺境を支える柱となっていく。
一方、王太子レオニスとリーナの婚約生活には次第に綻びが生じ、セリナの名は再び王都でも囁かれるようになる。
静かで無表情だと思われた令嬢は、実は誰よりも他者に寄り添う力を持っていた。
これは、「声なき優しさ」が、真に理解され、尊ばれていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる