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ラージヤ本気出す
しおりを挟む夜明け前の王城は眠らない。
ラジーヤは広間の地図を指でなぞりながら、側近に命じる。
「まずは子供たちを集めろ。街角でうろつくやつらを全部だ。
王宮の食堂を開け、風呂も使えるだけ使わせろ。家のない者はホールに入れる。理解したか?」
側近たちは頷き、声を揃えて応えた。
「はっ!」
行動は即座に始まる。
黒づくめの侍従隊が門を出て、城下へ散る。
市場の角、広場の石段、橋の下――人影を見つけるたびに優しく声をかけ、抱き上げ、連れて行く。
子供たちは最初は警戒するが、王弟の紋章など見せられずとも、暖かい毛布と声に次第に身体を預ける。
王宮の食堂では、老シェフが冷蔵庫や備蓄をかき集め、簡素なスープと焼きパンを用意する。
風呂場では、兵が薪を焚き始め、風呂湯を用意する。
「まずは温めろ。腹が落ち着けば、人は話す」とラジーヤは短く言う。
ホールには急ごしらえの寝床が並べられ、ばあやや女中たちが座り込み、子供たちに布団を掛ける。
目の前で泣きじゃくる小さな手を、誰もがそっと握りしめる。
「おい、怖がるな。ここは安全だ」――ラジーヤ自身が一人、毛布を子どもにかける場面があった。
情報はすぐに回る。
貴族の屋敷からも、商人の家からも、子どもを預けに来る手が伸びる。
誰もが状況を察し、支援の手を出し始める。
ラジーヤはその都度、受け入れを許可し、冷静に指示を続けた。
「医師を呼べ。熱や感染の検査を優先する。病人は隔離して治療を。
食事は子供優先、余れば老人にも回せ。
記録を取れ。誰が来たか、誰の親がいるか、忘れるな。
夜は門を閉め、出入りは事前承認のみだ」
側近が答える。
「了解しました、殿下。実行します」
ラジーヤは短く息を吐き、窓の外の朝焼けを見据えた。
「王が虫の息なら、国はまだ息をしている。まずは、その息を守るのだ」
王弟ラジーヤの号令
「まずは、子供たちの保護からだ」
ラジーヤの声が、王宮の広間に響いた。
集められた兵士や侍従、医師、女官たちが一斉に頭を下げる。
「街で行き場をなくした子らを、全員だ。
男女に分けて、寝所を設けろ。
護衛をつけて、誰ひとり攫われぬように見張れ!」
兵士たちは即座に動く。
階段の踊り場、廊下、広間の扉――あらゆる出入口に衛兵が配置されていく。
「親が迎えに来た者は、すぐに通すな」
ラジーヤの眼差しは鋭かった。
「面会の前に、必ず様子を確認しろ。
病か、餓えか、あるいは金で子を売ろうとする者もいる。
誰も、子供を再び苦しませるな」
侍従長が一礼する。
「心得ました、殿下」
ラジーヤは続けた。
「城は温かい。
ここで体を休めろと伝えろ。
恐れるな、泣くな――ここでは誰もお前たちを追い出さない」
兵たちは敬礼し、走り出す。
やがて王宮の廊下には、
毛布に包まれた子供たちの姿が並ぶ。
暖炉の火が灯り、湯気の立つスープが配られる。身分や、親の情報は、リストバンドで、管理される。
泣き声は次第に笑い声へと変わっていった。
ラジーヤはその様子を静かに見守る。
「……生き延びる力は、子供が一番強い」
隣に控えていた執事が問う。
「殿下、このあと城外の孤児院も保護対象に?」
ラジーヤは頷いた。
「すべてだ。
この国の再建は、“飢えた子”から始める」
王弟ラジーヤ ― 再建の第一声
ラジーヤは地図の上に両手をつき、低く命じた。
「誰かを“旗”にするのは、すべてが終わってからだ。
今は、腹を満たすことが先だ。」
側近がうなずく。
「救済の物資はどこから?」
「商人を動かせ。倉庫を開けろ。
金貨は俺が保証する。税金は今だけ無税だ。
ただし、物を抱え込んだ者は反逆とみなす。」
兵たちが一斉に動いた。
城下の商人たちは最初こそ怯えたが、王弟の命令書が出たと知ると、
倉庫の扉を開けはじめる。
干し肉、乾パン、麦粉、塩――
運び出されるたびに街の空気が変わった。
「殿下、配給の順番は?」
「最初にお腹の大きな母親、病人、最後に老人だ。
男は働ける者から労務につけ。
支給の代わりに運搬を手伝わせろ。」
「領地の貴族たちは?」
「呼びつけるな。動いた者だけ、名を記せ。
今この国で動けるのは、金でも権力でもない。
“生かす意志”のある者だけだ。」
記録官たちが素早く筆を走らせる。
王弟の言葉は一言一句、命令書として転写されていった。
やがて王都の広場では、
子供たちにスープが配られ、
小さな手が器を受け取っている。
新しい服を、着せられる。
ラジーヤは窓辺からそれを見下ろし、
静かに言った。
「救済とは、祈りでも奇跡でもない。
腹を満たし、寝床を与えること――
それが、この国が取り戻す最初の“正義”だ。」
ラジーヤは地図を見下ろし、側近に短く命じた。
「物資の配給は単純にする。
大人一人につき一つ。子供と病人は別枠で城が面倒を見る。
売買は禁止だ。売った者は即刻没収、反則者は公表する。理解したか?」
側近たちが即座に動く。筆で配給リストが引かれ、門に掲示される指示書が整えられる。
• 配給単位:大人=1回分の物資一包(主食+乾物+塩)。
• 子供/病人:別区画で温食と入浴、医療優先。王宮にて、預かる。
• 配給日程:毎朝・午後の二回、配布場所は決めて混雑と押し合いを防ぐ。
ラジーヤが続ける。
「売らないように、厳重に監視をつけろ。商人には運搬を命じるが、配給監視班を立てる。各班には軍から二名、民政官一名を必ず付け、交代で巡回せよ。配給の受領には印章(木札)を渡し、地元の代表に署名をもらう。」
実務メモ(側近向け):
• 受領証:受領者に木札を一つ。木札に屋号と日付を刻印。受領は本人のみ。
• 監視体制:配給場の入口・出口に計4点の常駐監視。夜間巡回を増やす(見張り班:交代制)。
• 罰則:売買発覚=没収+公表。再犯は労役。
• 記録:配給数・受領者名簿を本部(王城)で保管。領主/町長へも写しを送付。
ラジーヤは目を細めて付け加えた。
「子供、老人、病人は城内で賄う。医師を集中させろ。栄養管理は医務局の指導に従え。余剰は速やかに周辺の孤児院へ回す。民間の自助は認めるが、物を抱え込む者は見逃さない。」
側近が一礼して出る。城下では伝令が走り回り、倉庫の扉が開き、監視班が配備される。掲示板には「大人は一人につき一包。子供・病人は王城で保護」と大きな文字が張り出された。
ラジーヤは窓の外の広場を見やり、静かに言った。
「やることは人道だ。だが、手をゆるめれば腐敗はすぐ戻る。透明に、厳格に。まずはそこからだ。」
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