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お見合い写真を配られました(しかも王子に)
しおりを挟む「──さて、次は、お見合い相手を選ばなきゃね」
「えっ?」
朝のティータイム。
ふわふわのクッションの上で優雅に紅茶をすするメリンダさまが、
まるで天気の話でもするように爆弾を落とした。
「あなた、いつまでもフリーなのはよくないでしょ?
前世じゃ結婚式もしなかったし、今度こそ幸せにならなきゃ」
ジョアンナ
「今度って……え、転生後の人生の話ですよね!? えっ、まさか、今!?!?」
「そうよ♡」
カップを置いて、にっこり微笑むメリンダさま。
「今度は、ちゃんと“身分のある人”にしましょうね」
ジョアンナ
「身分って!? なにその上からの婚活プラン!!」
メリンダ
「だって、あのドグサレ男のことはもう忘れなきゃ」
ジョアンナ
「“ドグサレ男”て言い方やめて!?!? 根に持ちすぎですって!!」
メリンダ
「だって、あなたの稼ぎをギャンブルで溶かしたクズよ?
今度はちゃんと家柄のいい男にしてちょうだい」
ジョアンナ
「うわー、ガチで親目線ーーー!!」
◆ ◆ ◆
──翌日。
学園の朝。
私は、王子殿下からなぜか一冊のファイルを手渡された。
「ジョアンナ嬢。お母様(※メリンダ公爵夫人)から預かりました」
「……お母様?」
嫌な予感しかしない。
ファイルを開くと、ど真ん中に“私の真顔写真”が。
それも、なぜか何パターンもある。
しかも全ページに王家の紋章スタンプ付き。
アルフレッド
「こちら、あなたのお見合い候補の一覧だそうです。
選びやすいように、とのことです」
「ちょっ!? なに勝手に“婚活パッケージ”にしてくれてるんですか!?!?」
アルフレッド
「お母様、あなたのことを“娘のように思っている”と」
と微笑む王子。
アルフレッド
「あと、“煮物が上手なところが可愛い”とも」
ジョアンナ
「どんな紹介ぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?」
◆ ◆ ◆
その日のお昼には、学園中でお見合い写真が出回っていた。
「ジョアンナさま、アルフレッド王子の婚約候補なんですって!」
「メリンダさまが“次期王妃にどう?”って言ってたらしいわ!」
「すごい……ついに“ペット枠”から“花嫁枠”に昇格……!」
ジョアンナ
「違うっ!! 昇格じゃないっ!! 社会的事故ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
◆ ◆ ◆
そして翌朝。
「ジョアンナ・スミス嬢。貴女にお会いしたい」
学園の中庭。
アルフレッド王子が花束を持って、真顔で立っていた。
「えっ、なんで!? 何この恋愛イベント!?!?」
アルフレッド
「どうか、煮物を……」
ジョアンナ
「……目的それかーーーい!!!!」
遠くのベンチで、メリンダさまがうっとりと手を振っていた。
(この人……本気でわたしの“婚活サポート”してる……!?)
いや、いらないです婚活サポート!!
私、普通に学生したいんです!!
授業受けて、卒業して、地味に働いて、
そのうち「自然に出会う恋」とかしたいんです!!
なのに毎日、貴族ヒエラルキーと王族の圧が迫ってくる……!!
圧が!重いっ!!
あと煮物のリクエストが多いっ!!!
……ほんと、誰の人生計画なんですかこれ。
◆ ◆ ◆
その日の夜、ジョアンナは布団の中で考えた。
(王子の婚約候補リストに名前があるとか、人生バグってる……)
(お願いだから、せめて“平凡な日常”を返して……!)
でも翌朝。
扉をノックする軽やかな声が聞こえた。
メリンダ
「おはよう、ジョアンナ。
明日は舞踏会。ドレスの色、ピンクとブルー、どっちがいい?」
「どっちも嫌ですメリンダさまーーー!!!」
紅茶と婚活と母の暴走。
今日も学園は、悪役令嬢のお見合い計画で平和です(泣)。
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