『転生したら悪役令嬢、前世の娘がヒロインでした』

夢窓(ゆめまど)

文字の大きさ
3 / 16

お見合い写真を配られました(しかも王子に)

しおりを挟む

「──さて、次は、お見合い相手を選ばなきゃね」

 

「えっ?」

朝のティータイム。
ふわふわのクッションの上で優雅に紅茶をすするメリンダさまが、
まるで天気の話でもするように爆弾を落とした。

 

「あなた、いつまでもフリーなのはよくないでしょ?
前世じゃ結婚式もしなかったし、今度こそ幸せにならなきゃ」

 
ジョアンナ
「今度って……え、転生後の人生の話ですよね!? えっ、まさか、今!?!?」

「そうよ♡」
カップを置いて、にっこり微笑むメリンダさま。
「今度は、ちゃんと“身分のある人”にしましょうね」

ジョアンナ
「身分って!? なにその上からの婚活プラン!!」

メリンダ
「だって、あのドグサレ男のことはもう忘れなきゃ」

ジョアンナ
「“ドグサレ男”て言い方やめて!?!? 根に持ちすぎですって!!」

メリンダ
「だって、あなたの稼ぎをギャンブルで溶かしたクズよ?
今度はちゃんと家柄のいい男にしてちょうだい」

ジョアンナ
「うわー、ガチで親目線ーーー!!」

 

◆ ◆ ◆

 

──翌日。

学園の朝。
私は、王子殿下からなぜか一冊のファイルを手渡された。

 

「ジョアンナ嬢。お母様(※メリンダ公爵夫人)から預かりました」

「……お母様?」

嫌な予感しかしない。

 

ファイルを開くと、ど真ん中に“私の真顔写真”が。
それも、なぜか何パターンもある。
しかも全ページに王家の紋章スタンプ付き。

 
アルフレッド
「こちら、あなたのお見合い候補の一覧だそうです。
選びやすいように、とのことです」

 

「ちょっ!? なに勝手に“婚活パッケージ”にしてくれてるんですか!?!?」

 
アルフレッド
「お母様、あなたのことを“娘のように思っている”と」
と微笑む王子。

アルフレッド
「あと、“煮物が上手なところが可愛い”とも」

ジョアンナ
「どんな紹介ぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?」

 

◆ ◆ ◆

 

その日のお昼には、学園中でお見合い写真が出回っていた。

 

「ジョアンナさま、アルフレッド王子の婚約候補なんですって!」
「メリンダさまが“次期王妃にどう?”って言ってたらしいわ!」
「すごい……ついに“ペット枠”から“花嫁枠”に昇格……!」

ジョアンナ
「違うっ!! 昇格じゃないっ!! 社会的事故ぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

◆ ◆ ◆

 

そして翌朝。

「ジョアンナ・スミス嬢。貴女にお会いしたい」

学園の中庭。
アルフレッド王子が花束を持って、真顔で立っていた。

「えっ、なんで!? 何この恋愛イベント!?!?」

アルフレッド
「どうか、煮物を……」

ジョアンナ
「……目的それかーーーい!!!!」

 

遠くのベンチで、メリンダさまがうっとりと手を振っていた。

(この人……本気でわたしの“婚活サポート”してる……!?)

 

いや、いらないです婚活サポート!!
私、普通に学生したいんです!!
授業受けて、卒業して、地味に働いて、
そのうち「自然に出会う恋」とかしたいんです!!

なのに毎日、貴族ヒエラルキーと王族の圧が迫ってくる……!!
圧が!重いっ!!
あと煮物のリクエストが多いっ!!!

 

……ほんと、誰の人生計画なんですかこれ。

 

◆ ◆ ◆

 

その日の夜、ジョアンナは布団の中で考えた。

(王子の婚約候補リストに名前があるとか、人生バグってる……)
(お願いだから、せめて“平凡な日常”を返して……!)

でも翌朝。
扉をノックする軽やかな声が聞こえた。

メリンダ
「おはよう、ジョアンナ。
明日は舞踏会。ドレスの色、ピンクとブルー、どっちがいい?」

「どっちも嫌ですメリンダさまーーー!!!」

 

紅茶と婚活と母の暴走。
今日も学園は、悪役令嬢のお見合い計画で平和です(泣)。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

溺愛王子はシナリオクラッシャー〜愛する婚約者のためにゲーム設定を破壊し尽くす王子様と、それに巻き込まれるゲーム主人公ちゃんを添えて~

朝霧 陽月
恋愛
 カルフェ王国の第二王子である僕、エキセルソ・レオ・アムハルには幼い頃からの婚約者カルア侯爵家ラテーナ・カルアがいる。  彼女はいつも変わらず美しいが、今日に限ってその美しさに陰りがあると思ったら、急に「婚約破棄をして欲しい」などといい出して……。  ああ、任せてラテーナ、一体何に思い悩んでいるかは知らないが、その悩みは全て晴らして見せるからね。 ◆またしても何も知らないゲーム本来の主人公こと、ミルフィ・クリミアさん 「あれ、ここは私の知ってるゲームの世界観だと思ったんだけど……なんか入学式前に校門で魔獣に追いかけ回されるし、自分のクラスも聞いてたのと違って……え、今度はドラゴンが授業に乱入!!? いやぁ、なんで私がこんな目に!!」 婚約者を溺愛しまくる転生者とかではない王子様が、ゴリゴリにシナリオ改変してそれに巻き込まれた本来のゲーム主人公の子がなんか色々と酷い目に遭いながら頑張ったりします。大体そういうお話です。 改変された世界と彼らが辿り着く明日は一体どっちだ!? 【備考欄】 タイトル&あらすじをこっそりとマイナーチェンジしました。(2025年3月7日) なるはやで完結したいから、大体2日に一回くらい頑張って更新してるよ

悪役令嬢の名誉を挽回いたします!

みすずメイリン
恋愛
 いじめと家庭崩壊に屈して自ら命を経ってしまったけれど、なんとノーブル・プリンセスという選択式の女性向けノベルゲームの中の悪役令嬢リリアンナとして、転生してしまった主人公。  同時に、ノーブル・プリンセスという女性向けノベルゲームの主人公のルイーゼに転生した女の子はまるで女王のようで……?  悪役令嬢リリアンナとして転生してしまった主人公は悪役令嬢を脱却できるのか?!  そして、転生してしまったリリアンナを自分の新たな人生として幸せを掴み取れるのだろうか?

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました

富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。 転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。 でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。 別にそんな事望んでなかったんだけど……。 「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」 「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」 強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。 ※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。

婚約破棄? 国外追放?…ええ、全部知ってました。地球の記憶で。でも、元婚約者(あなた)との恋の結末だけは、私の知らない物語でした。

aozora
恋愛
クライフォルト公爵家の令嬢エリアーナは、なぜか「地球」と呼ばれる星の記憶を持っていた。そこでは「婚約破棄モノ」の物語が流行しており、自らの婚約者である第一王子アリステアに大勢の前で婚約破棄を告げられた時も、エリアーナは「ああ、これか」と奇妙な冷静さで受け止めていた。しかし、彼女に下された罰は予想を遥かに超え、この世界での記憶、そして心の支えであった「地球」の恋人の思い出までも根こそぎ奪う「忘却の罰」だった……

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~

糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」 「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」 第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。 皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する! 規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)

誰もがその聖女はニセモノだと気づいたが、これでも本人はうまく騙せているつもり。

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・クズ聖女・ざまぁ系・溺愛系・ハピエン】 グルーバー公爵家のリーアンナは王太子の元婚約者。 「元」というのは、いきなり「聖女」が現れて王太子の婚約者が変更になったからだ。 リーアンナは絶望したけれど、しかしすぐに受け入れた。 気になる男性が現れたので。 そんなリーアンナが慎ましやかな日々を送っていたある日、リーアンナの気になる男性が王宮で刺されてしまう。 命は取り留めたものの、どうやらこの傷害事件には「聖女」が関わっているもよう。 できるだけ「聖女」とは関わりたくなかったリーアンナだったが、刺された彼が心配で居ても立っても居られない。 リーアンナは、これまで隠していた能力を使って事件を明らかにしていく。 しかし、事件に首を突っ込んだリーアンナは、事件解決のために幼馴染の公爵令息にむりやり婚約を結ばされてしまい――? クズ聖女を書きたくて、こんな話になりました(笑) いろいろゆるゆるかとは思いますが、よろしくお願いいたします! 他サイト様にも投稿しています。

処理中です...