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6話
しおりを挟むリナは一人で、鉄製の扉の中に入るとカーテンが閉められていて薄暗い部屋に、豪華な家具やシャンデリアがある。
「失礼します」
リナは妊婦さんに声をかける
妊婦さんは不安な顔で涙を浮かべながら身体を震わせていた。さらに髪は乱れてドレスも破けていた。
「……だれ?」
「初めまして、私はギルド本部から来た、育児支援専門パーティのベビーケアズのリナです」
「育児……いや!やめて!近寄らないで!どっか行って!」
妊婦さんはリナに部屋の物を投げつけた
しかしリナは物が身体に当たろうが怒りもせず優しく話した
「今まで一人で、辛かったよね……誰も妊娠のつらさを理解してくれない……」
すると妊婦さんは物を投げるのを止めて、号泣しながらリナに思いをぶつける。
「そうよ!彼もそう!みんなよ!私が妊娠した時は、喜びを分かち合ったのにお腹が大きくなるにつれて、好きな事をさせてくれない……いつも毎日、部屋にいさせられて……まるで幽閉よ……!妊婦だからなに?外は危ないわけ?私だって生きてるの!お腹の子にだって外の音を聞かせてあげたい……なのになのに……」
リナは妊婦さんを優しく抱きしめると同時に、不思議な歌を歌い始めた。しかし、その歌は心地よくて気持ちが穏やかになる。
そう、リナは歌いながら妊婦さんに子育てマスターのスキルを発動させて精神を安定にさせた。
「リナさん……ごめんなさい…私…」
「大丈夫、あなたはひとりじゃない……みんなが理解しなくても私たちは理解して味方でいますよ…」
「う、ううぅ…リナさん、リナさん…」
リナは優しく妊婦さんの髪を撫でた。
そして鉄製の扉をソフィアに開けてもらってリナは妊婦さんと手を繋いで優しく抱きしめたまま、リナは従者に明るくて日当たりの良い部屋に案内させる。
部屋に入るとリナは真っ先に妊婦さんと二人でベランダのテラスに向かう。
すると女性従者が止める。
「すみません!妊婦さんが外に行くのは危ないです!」
リナは答える。
「育児支援専門パーティのリーダーで子育てマスターのスキルを持ってる私がついてるから大丈夫です、あと他の従者やご家族を別の部屋に集めてください…話があります」
「わかりました」
そして妊婦さんは外のベランダに出ると、再び涙を浮かべながらお腹を撫でて話す
「ほら…これがお外だよ、鳥さんの声がするね…あとお花も綺麗だよ…早く、お母さんも会いたいな……ふふっ」
リナはしばらく妊婦さんをベランダに一人残して、ソフィアとエレノアと一緒に、従者やご家族が集まっている部屋に入っていく。
するとリナは大きな声で、叫ぶ
「初めまして、私たちはギルド本部から緊急育児クエストの依頼を受けた育児支援専門パーティのベビーケアズです!実は皆さんに話とお願いがあります」
そこへ、部屋に1人の男性が入ってきた。
ソフィアとエレノアとリナは驚愕する
なんと先程ギルド本部でレンの母親と、ひと悶着した男性だった。
彼は妊婦さんの夫で奥さんが精神的に不安定で夫婦仲が、上手くいかずに気が立っていたという。
するとソフィアは男性の胸ぐらを掴んで訴える
「てめぇ、自分が気に入らないからって大切な奥さんをないがしろにした挙句、無関係なギルドパーティのあたしたちに八つ当たりをしたのか?」
男性はソフィアから視線を逸らして無言になる
「なんか言えよ…お前が気晴らしに外をブラブラしてる間に、奥さんは苦しんでたんだぞ!なんか言えよ!」
「……すまん」
エレノアが反応する
「謝るのは私たちでなくて?」
そこへ、さらに1人の年配のガタイのいい男性が入ってきた。
すると年配の男性は若い男性の頬を殴り飛ばす
「……っ、父上…」
「貴様…私が何故ここに来て、お前を殴ったかわかるか?」
「……わかりません」
「今回の緊急育児クエストの依頼は私がしたんだよ」
従者や家族や若い男性は驚愕した
若い男性の父親は息子が奥さんを疎かにして親身になって接しない事に、腹を立てるがまずは奥さんの状態を良くするのが最優先で、精神的に不安定さが増して自らの身体に傷をつけてしまう事を見越して緊急の育児クエストとして、依頼したという
「リナ殿、今度の件…義娘を助けてくれて、ありがとう…感謝する」
リナは父親に軽く会釈をし、さらに従者や家族や父親や若い男性に訴える
「皆さんにお願いがあります!妊婦さんでも外の空気を吸ったり適度な運動は必要なんです!それと……」
リナは涙を浮かべながら言葉を詰まらせながら話す
「妊婦さんのそばで親身に助けられるのは他でもない夫なんです……女性は愛した人を頼りにしてるんです!だから…多少の当たりが強い言葉を言われても、それは妊婦さんが愛した人にしか言えない不安な気持ちなんです!」
従者や家族やソフィアやエレノアも真剣にリナの話を聞く
「だから……全部わかってとは言いません、でも少しでもいいから寛大な気持ちで、接してあげてください」
リナは深々と頭を下げていた
今は、まだこの世界では女性や妊婦さんに対する理解が浸透してないけど、ベビーケアズが活躍して少しずつ、浸透してほしいとリナは願う。
そして妊婦さんの夫が、ゆっくりとベランダの外にいる奥さんの元へ歩み寄る。
「おい…具合は、どうだ?」
妊婦さんは、夫の顔を見て安心した笑みを浮かべて、話す
「ええ、外の空気を吸ったら気持ちがスッキリしましたよ…」
すると夫は、地に膝をつき深々と頭下げた。
「申し訳ない……愛する妻を、支えるのは夫の役割……なのに…俺は、他人に八つ当たりし、さらには、お前にまで、辛い事を…すぐに許しは得ない、だがこれからは心を入れ替えて、愛するお前とお腹の子を必ず守ってみせる!」
妊婦さんの頬からは透明な雫がこぼれ落ちる。
そして夫が妻を優しく抱きしめる。
「俺はお前とお腹の子を、愛してる……」
「……うぅぅぅ、あなた……私も、愛してます…」
2人は、いや3人の家族が優しく抱き合う姿を、ベビーケアズは穏やかな気持ちで、見届けた。
そして数時間後には、妊婦さんもリナの正しい判断で、精神的にも安定したので無事に緊急育児クエストを成功させる。
3人は屋敷から帰る際に屋敷の主の父親から報酬を言われるが断った。
それからギルド本部に帰ると、再び受付嬢のミリアが慌てて走りながら3人の前にやってくる。
「皆さん!緊急育児クエストの成功すごいですよ!」
「あ、ありがとうございます」
リナ達は答えるとミリアから驚愕の話を聞く。
「それで、今回のクエストの成功を称えてギルド史上初の非戦闘パーティで、しかも初の育児支援専門パーティがAランクパーティとしてギルドマスターから承認されたんですよ!」
リナとソフィアとエレノアは、ポカンとした表情で固まってしまう
「あれ?……み、皆さん?大丈夫?」
ソフィアが話す
「やばいって!ベビーケアズがAランクパーティって!」
エレノアも続く
「えぇ!世界に数組しかいないですわよ!そんなAランクパーティに仲間入りなんて……」
当初はリナの子育てマスターというスキルをバカにして嘲笑うか失笑されたが、リナの真摯な行動とエレノアの優しさやソフィアの仲間思いな行動が、実を結ぶ結果となった。
「そっか……私たちがAランクパーティ…」
リナは涙を浮かべながら下を向く。
ソフィアとエレノアはリナに駆け寄り、笑顔で話す姿をギルドマスターとミリアは見ていた。
「な、俺の目に狂いはなかったろ?」
「はい…ギルドマスターの先見の明は見事です」
「この、育児支援専門パーティというベビーケアズは必ず世界を…いや、女性の存在と立場を大きく変えてより良くしてくれるはずだ…」
「はい、私もそう思います」
こうしてベビーケアズは無事に緊急育児クエストを成功させて、また新しい育児クエストの依頼を受ける。
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