かいせん(line)

たくひあい@あい生成

文字の大きさ
183 / 349
Commentary

備蓄

しおりを挟む


程なくして船は着いた。

ふなのりば、と柔らかなひらがなで書かれた入口を抜けてすぐの停留所に向かう。
青い空。白い海。
穏やかな空気。ゆったりと時間が流れていそうな――――
空間より先に、ひり付いた感覚を覚えた。
椅子に座る多くの人が新聞を広げている。
それもそのはず。

『「特定障がい者利用制度」の一環として、備蓄法が委員会を通過した。』


港について待っていたのはそんな号外だった。




 見知らぬオニイサンから新聞を受け取り、俺もそれを見てみる。
備蓄法は、「特定技能を持ちながら、日常生活を送るのに困難がある人を『備蓄』」と見做すもので、
既に活躍している人たちに技能備蓄を配布、社会の生産力等の支えとする、(人権は考慮する必要がない)と政府が明確に提案した法案の一つになる。
戦時下以来、これまでには無かった、新たな奴隷制度ともいえるだろう。


 以前からそうだったが、日常生活さえ送れない、国に取っての「障がい者」はもはや人では無く、資源だと国が認めた事になりつつあるという事。


未だ介護や看護の重労働、人手不足、発給……という劣悪な環境が変わらない事からしても、障がい者は既に国の手に余っている。
なので今後、手に余る多すぎる「負担」の大きな軽減が期待される面もある。

当初、奴隷制度だ、などと声や賛否はあったものの、過酷な環境や、財源確保の問題でその声は小さくなっていった。

――――なによりも、国の発展、自由貿易の為に、安定して財源になるものが無くてはならない事は変わらない。

『労働力にすらならない者に税金をつぎ込む意味があるのか』

等が大きく取り沙汰され、最終的に「今活躍している、既に社会で働いて居たり、上に立つものが重視されるべきだ」という意見への賛成が過半数を超えるに至った為……というような内容だ。


確かに大きな負担になって居る面などは理解出来るが、それでも懸命に生きている人や研究を続けている人は居るのだろうし、それらは既に人として見做されておらず国の『備蓄』扱いは複雑だろう。それに……

「能力者まで、障がい者は無いだろ」

障がい者の増えすぎた世の中を逆手に取った、という面ではうまい事を言うなと皮肉にも感じるものの、
能力は能力。日常生活での障がいとは思っていない。勝手に同じ枠にしないで欲しい。
一方的に搾取して、面倒事を纏めて存在を無かったかのように、単純化しないで欲しい。許せない。


「人間と見做されない人が出てきている。これからどうなるんだ?」
「でも、介護の人手も足りないし」
「医療費も嵩むのにね……何処かで切り捨ては必要なんじゃない?」
「国も、もうお手上げだからな。財源が確保できない以上」
「ね、重労働なのに人でも給料も上がらないし、患者減らす方が」
「でも、人権が急にはく奪されるんだよね。障がい者手帳に頼ってた人が路頭に迷う?」「迷わないだろ。生命維持だけはして貰えるのでは」
「技能を全部渡せってだけだから、ある意味三食昼寝つきの生活が」「それって生きてるの?」「何のために生きてるの? そいつらを生かす為に生かされてるだけ?」
「自分が『備蓄』側に回ったらどうしよう」




2025年8月19日15時51分
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※この物語はフィクションです。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」 幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...