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KAISEN
沈黙している所
しおりを挟む「まぁ、というわけで、今からが本題です。さっそくチキンを作って行きましょう!」
まつりさんが急に真面目な表情になった。
夏々都君も頷く。
買って来た朝食(パンと飲み物)を各自に配りながら、周囲を見渡す。
「今回、先程、橋引ちゃんさんに『眠っている間にUSBを持っていかれる役』をして貰いました」
まつりさんが言い、私は、少し背筋を伸ばして「はい」と同意した。
「ちょっと時間かかっちゃったけど、渡せたよ」
色ちゃんが「どうして?」と訊ねる。
心配をかけてしまっている申し訳なさはあるが、かといって何も出来ないのでは進展しない。
「まずですね、前提からお話しましょう。特定保険のような取り組みは、まつり達も問題視しているところです」
夏々都君が頷く。
「ぼく達の世代が、既に富裕層以外氷河期になりかけてる」
「――これに関して、意見書を提出したり、労基に訴えたりというのが各地でありましたが、トクホの記者会見を受けてもまだ、海猫たちのした事を擁護する声はあります」
一呼吸置いて、まつりさんがもぐもぐ、とパンを齧っている。
「この状況になっているのは皆が皆それを悪い事とは思っていないから。上が逃げ切ろうとしているから。でも会見は行われた……と言う事は事実確認は両者間に在ったという事です」
「確かに現に、上が動いているところと、そうでないところがある。むしろあの事務所の方を失くす動きになってるね」
お茶を飲みながら、色ちゃんが同意する。
確かにそうだ。
それに、ゆう子さんや鈴木さんの処遇は公開されていない等、実際のところ、まだ不審な人物が残っているままなのだ。
「あくまでトクホ内を切っただけで内部調査は行われない。
偉い人たちは出来るなら無かった事にしたい。例え罪でも、なんでもね。
何故か? 特定保険そのものの中身が彼ら自身に関わっているから。つまり」
「話が見えて来た。弱味をにぎられているって事だろ」
界ちゃんが言うと、まつりさんは笑顔で頷いた。
「そう。あれだけの個人情報を所持出来た組織。恐らく上層部の弱味をにぎっている。何か言ったら公開するぞ、と脅している。
だからむしろ此方を好ましく思わない訳です」
まつりさんはまたPCを触って、画面に書類を出して来る。
「まずこれは1枚目ね」
契約書?のようだ。
其処には達筆な文字で書かれた文章と、大きな親指の血判。
『トクホに係わる話題について、便宜をはかる代わりに、この件を不問とします』と書かれて、大手企業と、何処かの組織が判を押している。
「2枚目」
メールの画面の写真だ。政治家に当てられている。
「貴方が横領している事を知っています。
店の裏手から出口に来てください。そこに黒い車が停まっています。約束の金額を渡してください」
「トクホでゆすり放題。なので上は動きません。沈黙しているところは、つまりそう言う事です」
「うわぁ……」
界ちゃんが、うんざりした声を上げる。
「どっから流れて来るんだよ」
「確かに、情報公開でゆすられたら元も子も無くなるか。
それで?」
色ちゃんが改めて言う。
「これを逆利用してみましょう」
まつりさんがウインクする。
「逆利用?」
2026年1月29日20時00分
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