かいせん(line)

たくひあい@あい生成

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◆◆◆◆

夜。
あの家には帰らず、ホテルに泊まった。
一人で取り組みたい事があったから。

窓際の椅子に腰かけて、封筒を開く。
「また、偽造している……」
そこにはある報告書が入っていて、事件の簡易な資料が入っている。


 事の発端は前回の仕事のときだ。

報告書を書いていて、ついでに前の資料を見返そうと、倉庫に行ったのだが、なんと、いつもの場所に無かったのである。
何処を探しても出て来ないので、出入りがあったか等フロントに尋ねる。

すると現在、それは事務所内部に保管されるのではなく、本署行になって、今は誰か上司の手に渡っているという事がわかった。
フロントの人曰く、「社長が、いいって言ってましたけどねぇ?」


「麻十寺社長がそんな判断を?」と不審に思って問い合わせる。
本来個人情報や、機密の観点から各部署に回す前にいろいろと承認しなくてはいけない筈だ。所長はそんな事を言って居なかったのに。

「そうですよ、社長が」フロントの人は頷いていて、嘘は言って無さそう。

念の為、「当時の資料って送って貰えますか?」と一度取り次いで、駄目で、
もう一度、今度は所長を通して訴えた。
そうしてやっと向こうからこの封筒が送られてきた。のだが……



 衝撃の事実が判明する。
俺たちの事件、能力に関する情報が、何故か第三者――――何処の馬の骨かわからないものに書き換えられてあったのである。

「10年前は、絶対俺たちのデータとして、あったのに」
いつすり替えられたんだ。
他人のデータなんか見てどうしたの? とでも嘲笑うかのように白々しい改竄資料に、怒りと悲しみが同時に沸いてくる。



「思えば、前回も本部に寄ったとき、あっ、リカさんの、とか今日子さんの事件ですね、なんて言われてたし」
あのとき。
リカさんが急に出て来た辺りで聞いておくんだった。
いつからその人が関わった事になっているのか?

功績だけがすり替えられていて、地面師さながらだ。
ゴーストライター以上にたちが悪い。



 正しい情報が伝わっていない、どころか首を切ってリサイクルされているような構図。

小賢しい事に、新人でも出来そうな範囲は、知らない誰かの名前で、
もう少し難易度がありそうなものはリュージの名前になっている徹底ぶり。
ときには、そもそも件に関わっていない事になっていた。
違和感が出ないよう調整までしている。

「せっかく、能力者の地位向上を目指してやっているのに、名前まで消されたら意味無いじゃないか!」
 こういう工作って大体個人の嫌がらせのイメージがあるけど、仕事を割り振っている側の人が、関わっている可能性が浮上した。
「他の機関にも聞いてみようかな」
がさがさ、と鞄を漁って、今後はクリアケースに入れている書類を広げる。



――――其処には、個人で収集している超能力者人権協会の方の資料があった。
 取り出したのは、界瀬絹良の情報。

彼の事は数年前に調べていた。
最初は、そこまで深くは考えてなかった。
能力者データベースに、彼のサイコメトリの噂があったから、何かに使えそうだと思ったくらいだ。
 
けれど、調べれば調べる程、ある事実が気になって来た。
超能力の事。占い師の息子という事。勤め先。
「この商社……取引先……」
其処がもしかすると以前保護した『彼女』に関係するかもしれないという事。

確かめずにはいられなかった。
『彼女』のデータだけは、執拗に隠したがっている事を察していたから。
少しでも手掛かりが欲しい。




――――ミノロアの中にいて欲しいのです


 忌々しい声を思い出して、舌打ちする。
彼女にも、自分にも、こそこそ隠すばかりで、でも情報だけは流出させてるんじゃ、何の意味もない。
持ち主かどうかくらい、解る奴には一目で解るのに。
『だったら黙ってろ』でしかない事ばかり。
何を、守っているんだ?


情報に利用価値があるって判断を下して、すぐ共有してる時点で――――





ため息を吐く。
「ま、なぜか公の事件ファイルは役に立ちそうもない状態だから、こっちから引っ張るしかないな」

 さっき淹れたインストコーヒーを口に含みながら窓を見た。
夜景と、自分の影が映っている。
背もたれの付いた椅子の上で、蹲る。

胸が痛い。
少し気を抜くと、重圧が伸し掛かるような気がした。
「それでも、やらないと……」

 消される前に情報を正しく補正し、確保しなければ、今までの意味がなくなってしまう。協調のフリをしている人達を暴いて、全部リカさんとかリュージになってしまう前に、どうにかしなければ。




「思うに、あの事件と、『彼女』の情報の隠蔽には本質的な、何かある――」


2026/02/016:39
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