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Commentary
鬼
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××××××××
雪。
――――だって貴方を愛しているから。
今思えば、自分の感情ですら自分で所有する事を許さずに育った。
繋いで置かなければ許さないと彼らは言い、それ以上に表に出ている自分の悪口を言う方が問題だという。
更に。問題な事に、感情が育たなければ何が善で何が悪かも判断できない。
だから、俺は物心がなかなかつかなくて、長い間判断がつかなかった。
ひらひら。ただ、何も思わず、舞うそれを見ている、と、「彼女」が囁いてくる。
――――もうしない! 二度と叩いたりしないから。
まるで、雪だ。
降っていて、積もっていって……
言葉も同じ。彼女の言葉は積もっていくだけだ。
叩く事が悪なのか、自分が悪なのか。何故謝っているのか。
何故二度としてはいけないのか。
何故もうしないと言う必要があるのか。
何故彼女は俺と同じ行動をとる事に拘るのか。何故一度そうしたのか。
何もわからないから、何をやっているんだろう?と思っているうちに、彼女はまるで、自分が憐れな存在であるかのように嘆き始めた。
――――本当は好きなのに、手や足が先に出て……本当、どうしてか
――――好きなものって、壊したくなる
そう、見ているうちに、全てが袋に詰められていて、
――――破らないと、貴方が戻って来ない気がして、だから
――――私には貴方が必要なの! それを否定するのは貴方でも出来ない!私から貴方を奪わないで!
あの日聞いた言葉は、どれもあたたかいとか、優しいとかであるはずだった。だけど不思議な事に、聞けば聞くほど、心が冷え切っていくだけだった。
未だにわからない。
好き、必要、それはいつから正義の顔をするようになったのだろう。
大事なものを守るとか、それを愛しているとか言う人程、自分が一番不幸で可哀想だと考えて居るようなところがある、と思う。
何ら保証されない感情を担保に、あの人にとっての救いの為に繰り返される行為と浪費。
それがもしも真に「優しさや愛情だ」というのなら、それが正義だというのなら吐き気がする。そんなものを他人に押し付けるな、と思う。
いっその事ない方がマシだ、と言う人でも居たらよかったのだが、残念なことにそのとき周囲には目を覚まさせてくれるものは無く、
それから後。
あの場所の『彼』もこう言った。
――――あぁ、僕も彼女の気持ちが分かる気がするなぁ。
愛情深くて本当は寂しい人なんだ。
君の事が好きだからなんだろう。何かを好きになると人は誰でもそうなってしまうのさ。
「ないよそんなの」
……そう責める事無いじゃないか。君は鬼畜か。人の心が無いのか。
好きなものを奪わないで欲しい、そう思ってしまう事があるだろう?
その優しさの裏返しであって
「ないよ、そんなの」
「君にもわかるようにするには、どう……」
『そちら側』の哲学は、此処ではまるで役に立たない、聞かない方がマシなものだという事を周囲は誰も理解していないし、理解しない方がきっと良かったと思う。
それはきっと漫画の中と、現実は違う、とか。そういう話だ。
「さっきから。無意味な事ばかり聞かせて意味が分からない」
「――――なっ!」
「なんであんたの好きなものや、大事なものの為に、こっちが配慮してやらなきゃいけないんだ?」
「どんな想いだろうが、それがどうした? だからなんだ? 馬鹿らしい。
察してくれって?」
大人にもなって、自分の事ばかり考えているんだな。
とそう呆れ、残念に思ったのを今も覚えている。
優しさではなく、傲慢で幼稚なのに声がでかいのだ、と。
目を覚ますと、船の中だった。
誰かがかけてくれた薄い毛布を剥がして起き上がる。
「……」
冷たいフロアで寝ていたので少し背中が痛い。
横に丸まっている界瀬の姿を見つけたが、寝ているのか反応が無くて、ただ『暇』という感情だけが湧いてくる。
「うぅ……キモチワルイ」
反応がない、と思っていたが起こしてしまったのだろうか、呻くような声が聞こえた。
「袋、居るか?」
界瀬が首を横に振る。
「……いや、まだ、大丈夫」
瀕死のようになっている彼に、水を飲むか聞いてみる。
頷いた気がしたので少し前に売店で買ったペットボトルを押し付けた。
「外、出て来る」
雪。
――――だって貴方を愛しているから。
今思えば、自分の感情ですら自分で所有する事を許さずに育った。
繋いで置かなければ許さないと彼らは言い、それ以上に表に出ている自分の悪口を言う方が問題だという。
更に。問題な事に、感情が育たなければ何が善で何が悪かも判断できない。
だから、俺は物心がなかなかつかなくて、長い間判断がつかなかった。
ひらひら。ただ、何も思わず、舞うそれを見ている、と、「彼女」が囁いてくる。
――――もうしない! 二度と叩いたりしないから。
まるで、雪だ。
降っていて、積もっていって……
言葉も同じ。彼女の言葉は積もっていくだけだ。
叩く事が悪なのか、自分が悪なのか。何故謝っているのか。
何故二度としてはいけないのか。
何故もうしないと言う必要があるのか。
何故彼女は俺と同じ行動をとる事に拘るのか。何故一度そうしたのか。
何もわからないから、何をやっているんだろう?と思っているうちに、彼女はまるで、自分が憐れな存在であるかのように嘆き始めた。
――――本当は好きなのに、手や足が先に出て……本当、どうしてか
――――好きなものって、壊したくなる
そう、見ているうちに、全てが袋に詰められていて、
――――破らないと、貴方が戻って来ない気がして、だから
――――私には貴方が必要なの! それを否定するのは貴方でも出来ない!私から貴方を奪わないで!
あの日聞いた言葉は、どれもあたたかいとか、優しいとかであるはずだった。だけど不思議な事に、聞けば聞くほど、心が冷え切っていくだけだった。
未だにわからない。
好き、必要、それはいつから正義の顔をするようになったのだろう。
大事なものを守るとか、それを愛しているとか言う人程、自分が一番不幸で可哀想だと考えて居るようなところがある、と思う。
何ら保証されない感情を担保に、あの人にとっての救いの為に繰り返される行為と浪費。
それがもしも真に「優しさや愛情だ」というのなら、それが正義だというのなら吐き気がする。そんなものを他人に押し付けるな、と思う。
いっその事ない方がマシだ、と言う人でも居たらよかったのだが、残念なことにそのとき周囲には目を覚まさせてくれるものは無く、
それから後。
あの場所の『彼』もこう言った。
――――あぁ、僕も彼女の気持ちが分かる気がするなぁ。
愛情深くて本当は寂しい人なんだ。
君の事が好きだからなんだろう。何かを好きになると人は誰でもそうなってしまうのさ。
「ないよそんなの」
……そう責める事無いじゃないか。君は鬼畜か。人の心が無いのか。
好きなものを奪わないで欲しい、そう思ってしまう事があるだろう?
その優しさの裏返しであって
「ないよ、そんなの」
「君にもわかるようにするには、どう……」
『そちら側』の哲学は、此処ではまるで役に立たない、聞かない方がマシなものだという事を周囲は誰も理解していないし、理解しない方がきっと良かったと思う。
それはきっと漫画の中と、現実は違う、とか。そういう話だ。
「さっきから。無意味な事ばかり聞かせて意味が分からない」
「――――なっ!」
「なんであんたの好きなものや、大事なものの為に、こっちが配慮してやらなきゃいけないんだ?」
「どんな想いだろうが、それがどうした? だからなんだ? 馬鹿らしい。
察してくれって?」
大人にもなって、自分の事ばかり考えているんだな。
とそう呆れ、残念に思ったのを今も覚えている。
優しさではなく、傲慢で幼稚なのに声がでかいのだ、と。
目を覚ますと、船の中だった。
誰かがかけてくれた薄い毛布を剥がして起き上がる。
「……」
冷たいフロアで寝ていたので少し背中が痛い。
横に丸まっている界瀬の姿を見つけたが、寝ているのか反応が無くて、ただ『暇』という感情だけが湧いてくる。
「うぅ……キモチワルイ」
反応がない、と思っていたが起こしてしまったのだろうか、呻くような声が聞こえた。
「袋、居るか?」
界瀬が首を横に振る。
「……いや、まだ、大丈夫」
瀕死のようになっている彼に、水を飲むか聞いてみる。
頷いた気がしたので少し前に売店で買ったペットボトルを押し付けた。
「外、出て来る」
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