かいせん(line)

たくひあい@あい生成

文字の大きさ
173 / 349
Commentary

しおりを挟む
××××××××



雪。



――――だって貴方を愛しているから。



今思えば、自分の感情ですら自分で所有する事を許さずに育った。
繋いで置かなければ許さないと彼らは言い、それ以上に表に出ている自分の悪口を言う方が問題だという。

 更に。問題な事に、感情が育たなければ何が善で何が悪かも判断できない。
だから、俺は物心がなかなかつかなくて、長い間判断がつかなかった。


ひらひら。ただ、何も思わず、舞うそれを見ている、と、「彼女」が囁いてくる。


――――もうしない! 二度と叩いたりしないから。

まるで、雪だ。
降っていて、積もっていって……
言葉も同じ。彼女の言葉は積もっていくだけだ。
叩く事が悪なのか、自分が悪なのか。何故謝っているのか。
何故二度としてはいけないのか。
何故もうしないと言う必要があるのか。
何故彼女は俺と同じ行動をとる事に拘るのか。何故一度そうしたのか。

何もわからないから、何をやっているんだろう?と思っているうちに、彼女はまるで、自分が憐れな存在であるかのように嘆き始めた。


――――本当は好きなのに、手や足が先に出て……本当、どうしてか

――――好きなものって、壊したくなる

そう、見ているうちに、全てが袋に詰められていて、



――――破らないと、貴方が戻って来ない気がして、だから



――――私には貴方が必要なの! それを否定するのは貴方でも出来ない!私から貴方を奪わないで!



あの日聞いた言葉は、どれもあたたかいとか、優しいとかであるはずだった。だけど不思議な事に、聞けば聞くほど、心が冷え切っていくだけだった。






未だにわからない。
好き、必要、それはいつから正義の顔をするようになったのだろう。
大事なものを守るとか、それを愛しているとか言う人程、自分が一番不幸で可哀想だと考えて居るようなところがある、と思う。


何ら保証されない感情を担保に、あの人にとっての救いの為に繰り返される行為と浪費。
それがもしも真に「優しさや愛情だ」というのなら、それが正義だというのなら吐き気がする。そんなものを他人に押し付けるな、と思う。


いっその事ない方がマシだ、と言う人でも居たらよかったのだが、残念なことにそのとき周囲には目を覚まさせてくれるものは無く、



それから後。
あの場所の『彼』もこう言った。


――――あぁ、僕も彼女の気持ちが分かる気がするなぁ。

愛情深くて本当は寂しい人なんだ。
君の事が好きだからなんだろう。何かを好きになると人は誰でもそうなってしまうのさ。


「ないよそんなの」

……そう責める事無いじゃないか。君は鬼畜か。人の心が無いのか。
好きなものを奪わないで欲しい、そう思ってしまう事があるだろう?
その優しさの裏返しであって

「ないよ、そんなの」


「君にもわかるようにするには、どう……」

『そちら側』の哲学は、此処ではまるで役に立たない、聞かない方がマシなものだという事を周囲は誰も理解していないし、理解しない方がきっと良かったと思う。
それはきっと漫画の中と、現実は違う、とか。そういう話だ。


「さっきから。無意味な事ばかり聞かせて意味が分からない」

「――――なっ!」
「なんであんたの好きなものや、大事なものの為に、こっちが配慮してやらなきゃいけないんだ?」

「どんな想いだろうが、それがどうした? だからなんだ? 馬鹿らしい。
察してくれって?」

大人にもなって、自分の事ばかり考えているんだな。
とそう呆れ、残念に思ったのを今も覚えている。

優しさではなく、傲慢で幼稚なのに声がでかいのだ、と。










目を覚ますと、船の中だった。

誰かがかけてくれた薄い毛布を剥がして起き上がる。
「……」
冷たいフロアで寝ていたので少し背中が痛い。
横に丸まっている界瀬の姿を見つけたが、寝ているのか反応が無くて、ただ『暇』という感情だけが湧いてくる。

「うぅ……キモチワルイ」

反応がない、と思っていたが起こしてしまったのだろうか、呻くような声が聞こえた。
「袋、居るか?」
界瀬が首を横に振る。
「……いや、まだ、大丈夫」
瀕死のようになっている彼に、水を飲むか聞いてみる。
頷いた気がしたので少し前に売店で買ったペットボトルを押し付けた。


「外、出て来る」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※この物語はフィクションです。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ/Ⅱ

MITARASI_
BL
I 彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。 「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。 揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。 不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。 すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。 切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。 Ⅱ 高校を卒業し、同じ大学へ進学した陸と颯馬。  別々の学部に進みながらも支え合い、やがて同棲を始めた二人は、通学の疲れや家事の分担といった小さな現実に向き合いながら、少しずつ【これから】を形にしていく。  未来の旅行を計画し、バイトを始め、日常を重ねていく日々。  恋人として選び合った関係は、穏やかに、けれど確かに深まっていく。  そんな中、陸の前に思いがけない再会をする。  過去と現在が交差するその瞬間が、二人の日常に小さな影を落としていく。  不安も、すれ違いも、言葉にできない想いも抱えながら。  それでも陸と颯馬は、互いの手を離さずに進もうとする。  高校編のその先を描く大学生活編。  選び続けることの意味を問いかける、二人の新たな物語。 続編執筆中

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
「普通を探した彼の二年間の物語」 幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...