かいせん(line)

たくひあい@あい生成

文字の大きさ
165 / 299
Commentary

しおりを挟む
××××××××



雪。



――――だって貴方を愛しているから。



今思えば、自分の感情ですら自分で所有する事を許さずに育った。
繋いで置かなければ許さないと彼らは言い、それ以上に表に出ている自分の悪口を言う方が問題だという。

 更に。問題な事に、感情が育たなければ何が善で何が悪かも判断できない。
だから、俺は物心がなかなかつかなくて、長い間判断がつかなかった。


ひらひら。ただ、何も思わず、舞うそれを見ている、と、「彼女」が囁いてくる。


――――もうしない! 二度と叩いたりしないから。

まるで、雪だ。
降っていて、積もっていって……
言葉も同じ。彼女の言葉は積もっていくだけだ。
叩く事が悪なのか、自分が悪なのか。何故謝っているのか。
何故二度としてはいけないのか。
何故もうしないと言う必要があるのか。
何故彼女は俺と同じ行動をとる事に拘るのか。何故一度そうしたのか。

何もわからないから、何をやっているんだろう?と思っているうちに、彼女はまるで、自分が憐れな存在であるかのように嘆き始めた。


――――本当は好きなのに、手や足が先に出て……本当、どうしてか

――――好きなものって、壊したくなる

そう、見ているうちに、全てが袋に詰められていて、



――――破らないと、貴方が戻って来ない気がして、だから



――――私には貴方が必要なの! それを否定するのは貴方でも出来ない!私から貴方を奪わないで!



あの日聞いた言葉は、どれもあたたかいとか、優しいとかであるはずだった。だけど不思議な事に、聞けば聞くほど、心が冷え切っていくだけだった。






未だにわからない。
好き、必要、それはいつから正義の顔をするようになったのだろう。
大事なものを守るとか、それを愛しているとか言う人程、自分が一番不幸で可哀想だと考えて居るようなところがある、と思う。


何ら保証されない感情を担保に、あの人にとっての救いの為に繰り返される行為と浪費。
それがもしも真に「優しさや愛情だ」というのなら、それが正義だというのなら吐き気がする。そんなものを他人に押し付けるな、と思う。


いっその事ない方がマシだ、と言う人でも居たらよかったのだが、残念なことにそのとき周囲には目を覚まさせてくれるものは無く、



それから後。
あの場所の『彼』もこう言った。


――――あぁ、僕も彼女の気持ちが分かる気がするなぁ。

愛情深くて本当は寂しい人なんだ。
君の事が好きだからなんだろう。何かを好きになると人は誰でもそうなってしまうのさ。


「ないよそんなの」

……そう責める事無いじゃないか。君は鬼畜か。人の心が無いのか。
好きなものを奪わないで欲しい、そう思ってしまう事があるだろう?
その優しさの裏返しであって

「ないよ、そんなの」


「君にもわかるようにするには、どう……」

『そちら側』の哲学は、此処ではまるで役に立たない、聞かない方がマシなものだという事を周囲は誰も理解していないし、理解しない方がきっと良かったと思う。
それはきっと漫画の中と、現実は違う、とか。そういう話だ。


「さっきから。無意味な事ばかり聞かせて意味が分からない」

「――――なっ!」
「なんであんたの好きなものや、大事なものの為に、こっちが配慮してやらなきゃいけないんだ?」

「どんな想いだろうが、それがどうした? だからなんだ? 馬鹿らしい。
察してくれって?」

大人にもなって、自分の事ばかり考えているんだな。
とそう呆れ、残念に思ったのを今も覚えている。

優しさではなく、傲慢で幼稚なのに声がでかいのだ、と。










目を覚ますと、船の中だった。

誰かがかけてくれた薄い毛布を剥がして起き上がる。
「……」
冷たいフロアで寝ていたので少し背中が痛い。
横に丸まっている界瀬の姿を見つけたが、寝ているのか反応が無くて、ただ『暇』という感情だけが湧いてくる。

「うぅ……キモチワルイ」

反応がない、と思っていたが起こしてしまったのだろうか、呻くような声が聞こえた。
「袋、居るか?」
界瀬が首を横に振る。
「……いや、まだ、大丈夫」
瀕死のようになっている彼に、水を飲むか聞いてみる。
頷いた気がしたので少し前に売店で買ったペットボトルを押し付けた。


「外、出て来る」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

処理中です...