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Commentary
後見人
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・・・・
話がカオスになり始め、
まつりがひと際鋭い声を上げた。
「――だーから、実際に起きた事と、いつ書かれたかにはラグがあるでしょうが!」
何かのトラブルだろうか?
なんだかピリピリしてきた。
「あの蛙共、ただでさえ盗聴してるんだから――」
盗聴?
ややあって、ちょうど通話を切ったところらしい。
まつりは慌てて振り向き、笑顔になった。
「おはよう。来てたんだね」
人当たりのいい笑顔だが、離れた距離からでも此方が近付いている気配を察知していたともとれる、隙の無い動作。
「あぁ……悪い、少し聞こえた」
まつりは、まぁ別に隠すような話でもないかなと正直に答える。
「そう。実は、西尾君側が後妻業とか後見人計画とかしようとしてたみたいでさ。やんねーっての! って事で、二度と関わってくんなって話の後日談してるの」
ご、後日談?
というか、後妻業?
「えーと、西尾君……って、学生時代からとよく君と張り合わされてたとかっていう?」
某学園にも先生、が居たと思うけど、文脈からすると此方なのだろう。
気になる所は多々あるが、いっぺんに訊ねるのもなんなので、そこだけ聞いてみる。
「そう、向こうが勝手に付き纏ってるんだよ」
まつりがため息を吐く。
「もう少し謙虚だと思っていたんだけどな。他人を利用しないと何にも出来ない癖に、態度だけ大きいんだから」
毒舌だ。
あんまり他人にどうこう言うタイプではなかったまつりが言う程というのはよほど腹に据えかねているのだろう。
「そりゃそうだよ。なんかあったときも、普通に頭を下げられないから」
『やってしまったー!お互い様だけど俺が引き下がれば終わる話だったー!
自分が傷ついた時は反撃じゃなくて、ちゃんと思ったことを穏やかに伝えよう
俺もイライラしてて、つい言いすぎました。きちんと謝るからね(♥)』
「……とか勝手に自己完結で連投してくるんだよ」
嫌すぎる。何を勝手に悟ってるんだ。
既に相手の意識が警戒心で満たされてしまっている以上は、関わりを断つ、『何を言ってもそう感じさせてしまうようなので』と縁を切ったという方の表明をすべきなのに。
「で、でも」
と、一応擁護してみる。
「その、交流?か知らないけど、自主的にやってるんじゃないの?」
まつりは首を横に振った。
「いーや。あっちが気付いたら沸いて来たんだよ。どれだけ来るな!って言っても、自分だけ無視するな―って鳴くし。放って置くと尽くしてるかのように、無理矢理予定合わせて来るんだって」
何でそんなに付き纏いたいのかね、と呆れている。
裏で盗撮とか盗聴とかしてて……でもプライバシー的に捜査が公開されないだけとかなんとか。
「見ていると、昔居たキョロ充を思い出すよ」
友達を作ればいいのに。
無視されたら行くところが無い程孤立しています、と言っているんだね、と残酷な現実が暗示される。
「――どうしてそんなに、嫌なの?」
俺に聞かれて、まつりは複雑そうな顔をした。
「ただただ純粋に、昔からキモいってのもあるけど。ただでさえうちはちょっと、面倒な因縁があるから、手を出すと無駄に危険なんだよ」
やめたほうがいい、って何度も言ってるのにな、とぼやいている。
佳ノ宮まつり。
歴史から消されたある『屋敷』の子ども。
その存在を国や政府が隠蔽したという話さえあるくらいだ。
だからこそ当人にも危機意識が備わっている。
「せっかく隠れて暮らしてんのに、こっちまで巻き添えくらうじゃん」
どんな風に生きて来たのかは断片的にしか知らないが、隠して居るものを、得意げにばら撒かれているのは危険でしかないのは理解しやすい。
特定しやすそうだし、何よりも承認欲求の為に尊厳を無視している。
能力者のプライバシーを勝手に書籍化するゆう子さんや、はっきり言えと癇癪を起したりメグミさんの話を広げて来る晶のようなものだろう。
自ら危険な目に遭いに行って、やめないと豪語して、それで言えることは「やめろ」だけだった。
「突き放すのが悪いみたいにいうけど、そうなるようにしてる訳でさ。
自分は優しいのに、悪口言ってないのにってのは、自分勝手だよ」
優しさなんて、感情や経験が伴って居なければそもそも理解されない。
実はかなり環境要因が関わっている。
それしか言う事が無いというのは、確かに自分勝手だと思った、
「まぁ、確かにわかる。俺も他人の好意とか聞くの、それが優しさとか自分で言ってるの見るの、苦手だったし」
まだ不愛想な奴の方が好感が持てる。
西尾君も、まつりにとって『自分の思ういい人』の主張の為に暴れるめんどくさい人なのだろう。
「まつりにとっては、それだけの感じ悪い他人だよ。
何様の分際で、相続や身内関係にまで踏み込んで来ようと思うのか。どんな教育を受けたのか。逆にしつけがなっていない。教育を受けていないんじゃないかと思うね」
……。そこまで言うか、と少し考えてみた。
自分でもちょっと、いや、かなり嫌かもしれない。
友達が居ないかのように他人との距離感が分かっていないと言う意味でも怖いかもしれない。
「そういえば、後見人――、屋敷の方も相続問題で、後見人戦争になる、とか、よく聞くよね」
「そうそう。少し前も、某財閥の屋敷が一つ無くなって我先にと名乗りを上げてるからさ」
やだなぁ。とぼやいているのを横目に見ながら潮風を感じる。
何処も、影響力のあるものは大変だ。
自分の意思で消えることも、生れる事も、いつの間にか囚われて難しくなる。
「あっちは『一つなくなると攻略が簡単になる』って思って、より私物化したい。と欲張ったという事みたいなんだけど、別にそうでもないんだよな」
まつりが悲しそうにぼやく。
と、そのとき急に声が割って入って来た。
「当然だろ。2000でゴリ押しなんて土台無理なんだから。メッキから剥がれてった訳だし」
「あ、夏々都」
夏々都が不愛想にまつりの近くに歩いてくる。
無表情だがほんの少し怒っているようにも見えた。
「まつり。電話終わった?」
「終わったよ」
えへへ、とまつりがあどけない笑顔を見せる。
「なにー? 寂しかった?」
「……」
「もー、そんな拗ねなくても、ただの仕事の電話だよー。そんなにまつりの事が」
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
202012110131─7/716:13‐2023年2月2日-2023年2月3日5時00分ー2023年7月2日14:50加筆
話がカオスになり始め、
まつりがひと際鋭い声を上げた。
「――だーから、実際に起きた事と、いつ書かれたかにはラグがあるでしょうが!」
何かのトラブルだろうか?
なんだかピリピリしてきた。
「あの蛙共、ただでさえ盗聴してるんだから――」
盗聴?
ややあって、ちょうど通話を切ったところらしい。
まつりは慌てて振り向き、笑顔になった。
「おはよう。来てたんだね」
人当たりのいい笑顔だが、離れた距離からでも此方が近付いている気配を察知していたともとれる、隙の無い動作。
「あぁ……悪い、少し聞こえた」
まつりは、まぁ別に隠すような話でもないかなと正直に答える。
「そう。実は、西尾君側が後妻業とか後見人計画とかしようとしてたみたいでさ。やんねーっての! って事で、二度と関わってくんなって話の後日談してるの」
ご、後日談?
というか、後妻業?
「えーと、西尾君……って、学生時代からとよく君と張り合わされてたとかっていう?」
某学園にも先生、が居たと思うけど、文脈からすると此方なのだろう。
気になる所は多々あるが、いっぺんに訊ねるのもなんなので、そこだけ聞いてみる。
「そう、向こうが勝手に付き纏ってるんだよ」
まつりがため息を吐く。
「もう少し謙虚だと思っていたんだけどな。他人を利用しないと何にも出来ない癖に、態度だけ大きいんだから」
毒舌だ。
あんまり他人にどうこう言うタイプではなかったまつりが言う程というのはよほど腹に据えかねているのだろう。
「そりゃそうだよ。なんかあったときも、普通に頭を下げられないから」
『やってしまったー!お互い様だけど俺が引き下がれば終わる話だったー!
自分が傷ついた時は反撃じゃなくて、ちゃんと思ったことを穏やかに伝えよう
俺もイライラしてて、つい言いすぎました。きちんと謝るからね(♥)』
「……とか勝手に自己完結で連投してくるんだよ」
嫌すぎる。何を勝手に悟ってるんだ。
既に相手の意識が警戒心で満たされてしまっている以上は、関わりを断つ、『何を言ってもそう感じさせてしまうようなので』と縁を切ったという方の表明をすべきなのに。
「で、でも」
と、一応擁護してみる。
「その、交流?か知らないけど、自主的にやってるんじゃないの?」
まつりは首を横に振った。
「いーや。あっちが気付いたら沸いて来たんだよ。どれだけ来るな!って言っても、自分だけ無視するな―って鳴くし。放って置くと尽くしてるかのように、無理矢理予定合わせて来るんだって」
何でそんなに付き纏いたいのかね、と呆れている。
裏で盗撮とか盗聴とかしてて……でもプライバシー的に捜査が公開されないだけとかなんとか。
「見ていると、昔居たキョロ充を思い出すよ」
友達を作ればいいのに。
無視されたら行くところが無い程孤立しています、と言っているんだね、と残酷な現実が暗示される。
「――どうしてそんなに、嫌なの?」
俺に聞かれて、まつりは複雑そうな顔をした。
「ただただ純粋に、昔からキモいってのもあるけど。ただでさえうちはちょっと、面倒な因縁があるから、手を出すと無駄に危険なんだよ」
やめたほうがいい、って何度も言ってるのにな、とぼやいている。
佳ノ宮まつり。
歴史から消されたある『屋敷』の子ども。
その存在を国や政府が隠蔽したという話さえあるくらいだ。
だからこそ当人にも危機意識が備わっている。
「せっかく隠れて暮らしてんのに、こっちまで巻き添えくらうじゃん」
どんな風に生きて来たのかは断片的にしか知らないが、隠して居るものを、得意げにばら撒かれているのは危険でしかないのは理解しやすい。
特定しやすそうだし、何よりも承認欲求の為に尊厳を無視している。
能力者のプライバシーを勝手に書籍化するゆう子さんや、はっきり言えと癇癪を起したりメグミさんの話を広げて来る晶のようなものだろう。
自ら危険な目に遭いに行って、やめないと豪語して、それで言えることは「やめろ」だけだった。
「突き放すのが悪いみたいにいうけど、そうなるようにしてる訳でさ。
自分は優しいのに、悪口言ってないのにってのは、自分勝手だよ」
優しさなんて、感情や経験が伴って居なければそもそも理解されない。
実はかなり環境要因が関わっている。
それしか言う事が無いというのは、確かに自分勝手だと思った、
「まぁ、確かにわかる。俺も他人の好意とか聞くの、それが優しさとか自分で言ってるの見るの、苦手だったし」
まだ不愛想な奴の方が好感が持てる。
西尾君も、まつりにとって『自分の思ういい人』の主張の為に暴れるめんどくさい人なのだろう。
「まつりにとっては、それだけの感じ悪い他人だよ。
何様の分際で、相続や身内関係にまで踏み込んで来ようと思うのか。どんな教育を受けたのか。逆にしつけがなっていない。教育を受けていないんじゃないかと思うね」
……。そこまで言うか、と少し考えてみた。
自分でもちょっと、いや、かなり嫌かもしれない。
友達が居ないかのように他人との距離感が分かっていないと言う意味でも怖いかもしれない。
「そういえば、後見人――、屋敷の方も相続問題で、後見人戦争になる、とか、よく聞くよね」
「そうそう。少し前も、某財閥の屋敷が一つ無くなって我先にと名乗りを上げてるからさ」
やだなぁ。とぼやいているのを横目に見ながら潮風を感じる。
何処も、影響力のあるものは大変だ。
自分の意思で消えることも、生れる事も、いつの間にか囚われて難しくなる。
「あっちは『一つなくなると攻略が簡単になる』って思って、より私物化したい。と欲張ったという事みたいなんだけど、別にそうでもないんだよな」
まつりが悲しそうにぼやく。
と、そのとき急に声が割って入って来た。
「当然だろ。2000でゴリ押しなんて土台無理なんだから。メッキから剥がれてった訳だし」
「あ、夏々都」
夏々都が不愛想にまつりの近くに歩いてくる。
無表情だがほんの少し怒っているようにも見えた。
「まつり。電話終わった?」
「終わったよ」
えへへ、とまつりがあどけない笑顔を見せる。
「なにー? 寂しかった?」
「……」
「もー、そんな拗ねなくても、ただの仕事の電話だよー。そんなにまつりの事が」
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202012110131─7/716:13‐2023年2月2日-2023年2月3日5時00分ー2023年7月2日14:50加筆
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