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週に一度、王太子殿下と
しおりを挟む週に一度、王妃教育を受けたあとは、王太子殿下と二人っきりでお茶の時間が設けられている。
以前は王妃教育ももっと頻繁に行われていたが、必要な知識はもう殆ど習得してしまっていたので、学園に入ってからは今のペースに落ち着いた。
必然的に殿下と顔を合わせる機会も減り、それについては大変喜ばしく思っている。
「…あれ、石鹸変えた?良い香りがする」
私の髪を一房掬ってそんなことを言うディラン殿下。
殿下に遊ばれる令嬢達はこういう一つ一つの行動に胸をトキメかせているんだろうか。
「変えておりませんわ。殿下こそ前髪切りました?」
「…切ってないが、本当にそう思ったのかはこの際不問にしておこう」
「心遣い感謝致しますわ」
適当な言葉には私も適当に返す。
「お前は本当に私に靡かないな。全く、面白みのないやつだよ」
「逆にどうして殿下に多くのご令嬢が心を寄せているのか逆に聞いてみたいくらいですわ。ああ、すみません紛うことなくその無駄に整った容姿のおかげですね」
殿下はお父上でいる国王陛下に似て、見た目だけならこの上なく素晴らしいご尊顔をしていた。
あ、今の嘘。
全然この上なくない。
私の中では断然カイがナンバーワンでオンリーワンだ。
「…本当に心の底から失礼な人間だなお前は。将来の伴侶に何という言い草だ」
呆れた目でこちらを見る殿下。
将来の伴侶、その言葉が後を引くように頭の中に残る。
「…アーシェ?様子が変だな今日は」
「殿下じゃないのですから、人間少し気分が優れない日くらいありますわ」
「やはり、絶好調の間違いか?」
ジト目でこちらを見る殿下を、お返しのように軽く睨みつけた。
完全に不敬だが、彼に普段されている裏切り行為に目をつぶっているのだ、勘弁してほしい。
…そんな私だって心の中では完全に殿下をうらぎってしまっているわけだが。
「殿下は悩みが少なそうでいいですね。たまにその自由奔放なところを羨ましく思いますわ」
わざとそんなことを言う私に、殿下が思いっきり顔を歪める。
わかってて言った私も悪いが、もう少しましな顔ができなかったものか。
「自由なわけないだろ。私はこれでもこの国の王太子だそ?普段の厳しすぎる教育やしきたりに嫌気が差して華やかで可愛いご令嬢に食指が向くのも…うん、まあ仕方ないよな」
開き直ってそう言う殿下に嫌悪感を抱くどころか、いっそ清々しかった。
そんな感情は同時に、私が微塵も殿下を愛していないことを証明しているようで…
理屈的には私は全く悪くないはずなのに、どこか申し訳ない気持ちになってしまった。
こんな微妙な気持ちになるくらいならもうしっかり不貞を働いてしまった方がましなんじゃないか…?
そんなバカみたいな考えさえ過ぎる。
「どうでもいいけど間違っても子どもだけは作っちゃダメですよ…さすがに第一子が婚外子なんて風聞も悪いですし」
「私がそんなヘマすると思うか」
「思いませんわ。そんなところだけは気持ち悪いくらいにしっかりしているみたいですから」
そんなことを言いながらも、殿下が他の女性と子を成したとなればスムーズに別れられるのではないか…そんなとりとめもない考えが思い浮かんで小さくかぶりを振った。
カイに会いたいなぁ。
「お前も私も、もっと自由に生きられる道があれば良かったのだがな」
「殿下は今でも充分自由気ままです」
そう断言する私に殿下は、そうだった、なんて呟いて小さく笑った。
殿下も殿下なりに悩みがあるのかもしれない。
全然興味ないけど。
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