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問題行動ばかりしていた俺は、ついにそれらの行為が学校側にばれ、退学となった。
そもそも出席日数も足りず、勉強も着いていける訳もなかったので何とも思わなかった。
なんとか家から追い出されずに済んだが、バイトによって食いつないでいく毎日。
何の為に生きているのかさえ分からなくなっていった。
時々ふと蒼良のことを思い出し、今頃彼氏と仲良くやっているのかと考えたりもした。
前までそう考えるだけでムシャクシャしていたが、今になっては何とも思わなくなっていた。
きっと連絡する必要もないほど幸せに過ごしているのだろう。
アイツが笑顔ならそれでいい。
そう思いながら適当に生き、過ぎ去っていく日々。
ある日、蒼良の友人と遭遇した。
前に偶然会った時、蒼良の話を聞き出した相手だ。
なんで蒼良じゃなくてコイツなんだよ……と心の中で毒吐いていると、相手から話しかけてきた。
「あ、高橋くんじゃん。また会ったね。……なんか目のクマ凄くない?」
スルーしようかと思ったが、以前のように蒼良の話を聞き出せるかと思い会話を続けた。
「蒼良は今どんな感じなんだ?」
「え…………蒼良?」
それから蒼良の友人は黙り込んでしまった。
何かおかしなことでも聞いたか?しかし俺は蒼良のことしか聞いていない。
少しの沈黙後、蒼良の友人は口を開いた。
「蒼良は、亡くなったよ」
…………今、何て言った?
亡くなった?誰が?蒼良が?さすがに聞き間違いか。疲れすぎているんだ。
俺の思考を打ち消すように、俺の目の前の人物は話し出した。
「ちょうど2ヶ月前だよ。まあ、俺も蒼良と連絡途切れてさ。疑問に思って蒼良の家行ったら蒼良の母さん出てきて、そこで知ったんだ」
………まさか。嘘だ。そんなはずは無い。蒼良が死ぬ?何デタラメ言ってんだコイツは。
目の前の人物の頭を鷲掴む。
「いっ……!なにす…………」
「つまんねぇ冗談言ってんじゃねーよ」
こちらに引き寄せ睨みつける。すると相手は動揺したが、すぐに俺に言い返す。
「冗談でこんなこと言う訳ないだろ……!なんで亡くなったかは俺も知らないけど……とにかく蒼良の母さんから聞いたんだ!」
蒼良の母親がそんな嘘をつくはずがない。俺は蒼良の家に行った時、母親ともよく会っていたので人柄も知っている。
蒼良の母親は蒼良と似ていて、朗らかで優しそうな人だった。
俺は掴んでいた手を離し、目の前の人物を気にも止めずすぐに蒼良の家へ向かった。
歩いても行ける距離だったが、俺の足は走ることを辞めず、車が来ないのを確認し信号をも無視して駆け抜ける。
一刻も早く確認したかった。
蒼良の友人が言っていたことは正しいのか。
間違いであってほしい。
「陸?どうしたの急に」って、何事もないように出てきて欲しい。
突然現れた俺を驚いた目で見続けて欲しい。
蒼良の家に着き、恐る恐るインターホンを押す。
この感じも久しぶりだ。昔はよくこのインターホンを鳴らしていた。
その度に蒼良が出てきて、自然と笑みが溢れて。
しかし今回現れたのは、蒼良ではなく────
蒼良の母親だった。
約束もなしに訪ねたため、蒼良は他のことをしているのかもしれない。
僅かな希望を持ちながら、現れた蒼良の母親を見つめる。
蒼良の母親は俺を見て、言葉に詰まっているようだった。
「……陸斗くん、だよね?久しぶりだね。どうしたのかな?」
「蒼良は今、どこに?」
蒼良の母親は一瞬悲しい表情を見せたが、すぐに元の優しい顔に戻った。
「落ち着いて聞いてね。蒼良は……2ヶ月前に亡くなったの。」
信じられなかった。いや、信じたくなかった。
前に俺に連絡くれたじゃないか。
なんで死んだ?事故か?病気か?幸せなアイツにどんな不運が訪れたんだ。
声が震えないように蒼良の母親に尋ねた。
「……なんで亡くなったんですか」
「これは身内以外には言ってないんだけどね。陸斗くんには、本当のこと言おうと思う。
………蒼良、自殺したの。」
「自殺…………?」
「高校に入ってからあまり元気じゃなくてね。多分、いつも一緒にいた陸斗くんと突然離れ離れになっちゃったからだと思う。でもそんな中、蒼良に恋人ができてね。同じ学校の子って言ってたから、やっと蒼良も高校生活に馴染んできたと思ってたんだけど……」
俺は黙って蒼良の母親の言葉を真剣に聞き続けた。
「ある日、捨てられたって泣いて帰ってきたことがあってね。リクに捨てられたって言ってたから、陸斗くんのことかと思ってたんだけど……。その様子じゃ、陸斗くんのことじゃないみたいね。勘違いしててごめんなさいね」
俺が捨てた……?そんなことはしていない、はず。いや、もしかしてあのメッセージか……?
不安で脳がパニック状態になり掛けたが、蒼良の母に悟られないように平然を装う。
そうだ。まずは状況確認からだ。
「……その捨てられたと言っていたのはいつ頃ですか?」
「たしか、蒼良が亡くなる1ヶ月くらい前かな。今からだと3ヶ月前だね。」
……3ヶ月前。でも蒼良が俺に連絡してきたのは半年以上前だ。何ヶ月も経った頃にいきなり捨てられたとか言い出すか?
「蒼良の恋人の名前は分かりますか?」
「それが、教えてくれなかったの。蒼良の恋人だからきっと可愛い子だったのでしょうね」
可愛い子……?母親は蒼良の恋人が男ということを知らないのか?
……たしかに蒼良の性格上、素直に彼氏ができたなどと言わないかもしれない。おかしいと思われるのが嫌で隠し続けてたのか……?
でももしそうなら、今まで隠し続けてたのに俺がバラすというのは避けたい。蒼良の嫌がることはしたくない。
俺は1つの結論にたどり着く。確信はないが、それ以外に思い当たらない。
まあ、実際に確認すれば済む話だ。
一応、蒼良の自殺場所や方法なども聞いてみた。蒼良の母親は俺の真剣さを見て、知っていること全てを話してくれた。
「色々教えてくださりありがとうございます。蒼良のためにも、絶対に俺が原因を特定します」
蒼良の母親は俺の言葉に少し驚いた様子だったが、すぐに優しい表情に戻っていた。
「ふふ、ありがとう。蒼良もきっと喜んでいるわ」
俺は蒼良の家を後にした。
そもそも出席日数も足りず、勉強も着いていける訳もなかったので何とも思わなかった。
なんとか家から追い出されずに済んだが、バイトによって食いつないでいく毎日。
何の為に生きているのかさえ分からなくなっていった。
時々ふと蒼良のことを思い出し、今頃彼氏と仲良くやっているのかと考えたりもした。
前までそう考えるだけでムシャクシャしていたが、今になっては何とも思わなくなっていた。
きっと連絡する必要もないほど幸せに過ごしているのだろう。
アイツが笑顔ならそれでいい。
そう思いながら適当に生き、過ぎ去っていく日々。
ある日、蒼良の友人と遭遇した。
前に偶然会った時、蒼良の話を聞き出した相手だ。
なんで蒼良じゃなくてコイツなんだよ……と心の中で毒吐いていると、相手から話しかけてきた。
「あ、高橋くんじゃん。また会ったね。……なんか目のクマ凄くない?」
スルーしようかと思ったが、以前のように蒼良の話を聞き出せるかと思い会話を続けた。
「蒼良は今どんな感じなんだ?」
「え…………蒼良?」
それから蒼良の友人は黙り込んでしまった。
何かおかしなことでも聞いたか?しかし俺は蒼良のことしか聞いていない。
少しの沈黙後、蒼良の友人は口を開いた。
「蒼良は、亡くなったよ」
…………今、何て言った?
亡くなった?誰が?蒼良が?さすがに聞き間違いか。疲れすぎているんだ。
俺の思考を打ち消すように、俺の目の前の人物は話し出した。
「ちょうど2ヶ月前だよ。まあ、俺も蒼良と連絡途切れてさ。疑問に思って蒼良の家行ったら蒼良の母さん出てきて、そこで知ったんだ」
………まさか。嘘だ。そんなはずは無い。蒼良が死ぬ?何デタラメ言ってんだコイツは。
目の前の人物の頭を鷲掴む。
「いっ……!なにす…………」
「つまんねぇ冗談言ってんじゃねーよ」
こちらに引き寄せ睨みつける。すると相手は動揺したが、すぐに俺に言い返す。
「冗談でこんなこと言う訳ないだろ……!なんで亡くなったかは俺も知らないけど……とにかく蒼良の母さんから聞いたんだ!」
蒼良の母親がそんな嘘をつくはずがない。俺は蒼良の家に行った時、母親ともよく会っていたので人柄も知っている。
蒼良の母親は蒼良と似ていて、朗らかで優しそうな人だった。
俺は掴んでいた手を離し、目の前の人物を気にも止めずすぐに蒼良の家へ向かった。
歩いても行ける距離だったが、俺の足は走ることを辞めず、車が来ないのを確認し信号をも無視して駆け抜ける。
一刻も早く確認したかった。
蒼良の友人が言っていたことは正しいのか。
間違いであってほしい。
「陸?どうしたの急に」って、何事もないように出てきて欲しい。
突然現れた俺を驚いた目で見続けて欲しい。
蒼良の家に着き、恐る恐るインターホンを押す。
この感じも久しぶりだ。昔はよくこのインターホンを鳴らしていた。
その度に蒼良が出てきて、自然と笑みが溢れて。
しかし今回現れたのは、蒼良ではなく────
蒼良の母親だった。
約束もなしに訪ねたため、蒼良は他のことをしているのかもしれない。
僅かな希望を持ちながら、現れた蒼良の母親を見つめる。
蒼良の母親は俺を見て、言葉に詰まっているようだった。
「……陸斗くん、だよね?久しぶりだね。どうしたのかな?」
「蒼良は今、どこに?」
蒼良の母親は一瞬悲しい表情を見せたが、すぐに元の優しい顔に戻った。
「落ち着いて聞いてね。蒼良は……2ヶ月前に亡くなったの。」
信じられなかった。いや、信じたくなかった。
前に俺に連絡くれたじゃないか。
なんで死んだ?事故か?病気か?幸せなアイツにどんな不運が訪れたんだ。
声が震えないように蒼良の母親に尋ねた。
「……なんで亡くなったんですか」
「これは身内以外には言ってないんだけどね。陸斗くんには、本当のこと言おうと思う。
………蒼良、自殺したの。」
「自殺…………?」
「高校に入ってからあまり元気じゃなくてね。多分、いつも一緒にいた陸斗くんと突然離れ離れになっちゃったからだと思う。でもそんな中、蒼良に恋人ができてね。同じ学校の子って言ってたから、やっと蒼良も高校生活に馴染んできたと思ってたんだけど……」
俺は黙って蒼良の母親の言葉を真剣に聞き続けた。
「ある日、捨てられたって泣いて帰ってきたことがあってね。リクに捨てられたって言ってたから、陸斗くんのことかと思ってたんだけど……。その様子じゃ、陸斗くんのことじゃないみたいね。勘違いしててごめんなさいね」
俺が捨てた……?そんなことはしていない、はず。いや、もしかしてあのメッセージか……?
不安で脳がパニック状態になり掛けたが、蒼良の母に悟られないように平然を装う。
そうだ。まずは状況確認からだ。
「……その捨てられたと言っていたのはいつ頃ですか?」
「たしか、蒼良が亡くなる1ヶ月くらい前かな。今からだと3ヶ月前だね。」
……3ヶ月前。でも蒼良が俺に連絡してきたのは半年以上前だ。何ヶ月も経った頃にいきなり捨てられたとか言い出すか?
「蒼良の恋人の名前は分かりますか?」
「それが、教えてくれなかったの。蒼良の恋人だからきっと可愛い子だったのでしょうね」
可愛い子……?母親は蒼良の恋人が男ということを知らないのか?
……たしかに蒼良の性格上、素直に彼氏ができたなどと言わないかもしれない。おかしいと思われるのが嫌で隠し続けてたのか……?
でももしそうなら、今まで隠し続けてたのに俺がバラすというのは避けたい。蒼良の嫌がることはしたくない。
俺は1つの結論にたどり着く。確信はないが、それ以外に思い当たらない。
まあ、実際に確認すれば済む話だ。
一応、蒼良の自殺場所や方法なども聞いてみた。蒼良の母親は俺の真剣さを見て、知っていること全てを話してくれた。
「色々教えてくださりありがとうございます。蒼良のためにも、絶対に俺が原因を特定します」
蒼良の母親は俺の言葉に少し驚いた様子だったが、すぐに優しい表情に戻っていた。
「ふふ、ありがとう。蒼良もきっと喜んでいるわ」
俺は蒼良の家を後にした。
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