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第46話 アオバヤマ商店街
しおりを挟む「ここだ」
「うわぁ……レトロ……?」
思わず篠宮が疑問形になるくらい、こぢんまりとした商店街がそこにはあった。
まるで下町の一角を持ってきたみたいだ。歩行者天国の通りに面した店は窓越しに直接買い物ができる仕様の店もある。
買い食いには最適だ。
早速美味しそうな匂いが篠宮の鼻腔をくすぐる。
「あっ、美味しそうなコロッケの匂い! おっ、こっちはイカ焼きの香ばしい香り! なんだかお祭りみたいですねぇ」
「オマツリ?」
そうだった。サクラ達はお花見さえ知らなかったではないか。篠宮はお祭りというものを説明した。
「えーと、俺が知っているお祭りはですね……」
お祭りとは一般的には、祈願や豊穣の感謝のための儀礼である。そしてそれに伴い、行われる催しのことである。
「そんでもって屋台ってのが出て、焼き鳥食べたり焼きそば食べたりして——あ、それから花火が上がったりするんです」
「花火……」
サクラの目がキラキラしている。どうやらこの話は興味があるらしい。
「花火は知ってますか?」
「馬鹿にするな、手に持つ花火を子供のころやった覚えがある」
子どもの頃——誰かが少し離れた街に上がる打ち上げ花火を見つけたのだった。闇夜に浮かぶ小さな光の花を、あれは何かと校長に問うたのだった。
鴫原校長はあれは『花火』だと教えてくれた。それから手に持つ花火を町の外で買ってきてくれたのだった。
校庭で皆でする花火は楽しかったと記憶している。
そして大人になってから、この町に火薬類を持ち込むのに許可がいる事を知った。鴫原校長はあの時、花火を持ち込むのに、どれほど骨を折ったことかと感謝したものだった。
「頭上でね、おっきな花火が広がるんですよ! 夜空いっぱいに——」
「それは、良いな」
無表情を取り繕って、サクラが顔を逸らす。しかし篠宮はその口元が少し綻んでいるのに気がつく。その笑みは篠宮の心に焼き付いた。
急に篠宮が立ち止まったので、サクラはその場所のコロッケが欲しいのかと思い、二つ買い求めた。
レトロな町並みだが、もちろんキャッシュレスだ。生体認証端末からの支払いをする。
「ほら、食え」
コロッケを差し出したが、篠宮は別の事を口にした。
「サクラさん! お祭りしましょう! 最後には花火も打ち上げて——」
サクラは興奮してわめいている篠宮の口にコロッケを突っ込んだ。
「あ、美味しい……♪」
一口にコロッケを頬張ると、その旨さが口の中に広がる。肉屋のコロッケはどうしてこんなに美味しいのだ。ソース無しでイケる旨味の強さと甘さ。それでいて少しの胡椒の味。
「美味しいですね」
サクラは素直に感想をいう篠宮を見ながら自分も一口頬張る。少し行儀が悪いが、そのまま歩き出した。
「この町に火薬類、薬品類を持ち込むには許可がいる。簡単には持ち込めない」
「えー!」
しかし篠宮はどうしても、頭上で花咲く花火をサクラに見せてやりたいのだ。
つづく
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