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第56話 この人は普通ではない
しおりを挟む「どうしてわざわざ姉妹って言い直すんですか?」
なんだろう。
相手は綺麗なお姉さんなのに、必要以上に身構えてしまう。
篠宮は警戒するように用心深く聞き返した。その返事はやや嫌味が勝つ。
「そんなに嫌わないでよ。私は君みたいのは好きだけどね、顧客として」
「顧客として」が無ければ篠宮は舞い上がって、警戒を解いたかもしれない。けれどそうはならなかった。
「俺はカエデさんの事嫌ってはいませんけど。なんというか……カエデさんこそ、サクラさんの事、嫌ってませんか?」
「言うねぇ」
カエデはクックックと喉の奥で笑うと、上目遣いで篠宮を睨んだ。
はっきり言って、怖い。
サクラが怒るのとは違って、なんか湿気っぽい。じめっとした怒りが滲んでくる。
篠宮は反射的に立ち上がった。肩が積んである箱や瓶にぶつかる。幸い崩れてはこなかった。
「アイツはレディにも嫌われてるでしょ。ま、レディはαや人間を嫌ってるけどね」
「……何が、言いたいんですか?」
「別に。君が起爆剤になる事を望んでいるだけさ」
結局、「考えといてよ」と花火の購入の件に念を押されて、購買部を辞す事になった。
小さな建物を出ると、途端に疲れが襲ってくる。
「綺麗なお姉さんにはトゲがある、ってことかな」
篠宮がぶつぶつ言いながら校舎に向かうと、校舎の角から二つの人影がこちらを見ていた。
「サクラさんに、一花ちゃん!」
篠宮はカエデと話して疲れたのが嘘のように二人の元へ跳ねていった。
心配そうに見ている一花と、いつも通りすましているサクラとを見比べながら、両手に花とばかりに二人に抱きつく。
「怖かったよう~」
ドカッ!
バキッ!
上からの肘鉄と横からのエルボーを同時に食らう。篠宮は痛さに転げ回りながらも、地獄から生還した気分になった。
つづく
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