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第63話 αクラスの研究室
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その日はあいにくと蒸し暑かった。
なので必然的に篠宮はサクラと徳田姉妹が在籍するクーラーが効いてる研究室に入り込んだ。
「涼しい~♪」
ベタつく肌が一気に冷やされ、心地が良い。
残念な事に今は研究室には誰もいなかった。整然と並べられた六つのキーボードと複数のディスプレイ。それを統括するように、少し離れてサクラ専用の端末が置かれている。
「一体、何の研究してるんでしょうね……」
特に興味がある訳では無い。
篠宮の予測では、亜人に関する研究なんだろうな、というところである。
サクラのデスクは綺麗だ。ほぼ何にも無い。重いマニュアル・タブレットも無ければ、メモの一つも無い。
「きっと頭の中に全部入っているんだろうなぁ」
面白みの無いデスクだな、と思いながら部屋をぐるっと回ると、目に付く席があった。
マニュアル・タブレットも出しっぱなし、ディスプレイのあちこちに付箋が貼られ、入力の注意書きやキーの指示が可愛らしい文字で書いてあった。
篠宮は辺りを見回して、この一台だけそんな状態になっている点から、この端末は六花の指定席に違いないと気が付いた。
篠宮は首をひねる。
何故六花ちゃんだけこうなんだろう?
赴任してきたばかりの篠宮でさえ、六花の事は見分けがつくくらい違いを感じる。
何気なく彼女のデスクにあったタブレットに触れると、どうやら電源が入ってたままだったらしく、パッと画面が現れた。
超空間転移バースト——。
「何これ?」
文系の篠宮にはさっぱり分からない単語が次々と出てくる。
タキオンだとか、空間転移だとか、宇宙放射線だとか——。これが彼女達の研究なんだろうか?
「ま、いいや」
篠宮は興味ない事には首を突っ込まない性格である。
それにだいぶ汗も引いてきた。しかし蒸し暑い外に出るのは嫌だったので、篠宮はもう少しこの部屋にいることにする。
ついでにサクラさんの席に座ってみる。
「ふへっ♪」
変態である。
重ねて記述するが、彼は変態である。諸兄は真似してはいけない。
「なんかないかなー?」
他人の机の引き出しを、止むに止まれぬ事情があるならともかく、興味本位で開けるのも——良くない。
そういった一般常識に欠ける彼が災難に遭うのは、至極真っ当な神様の采配である。
「ん?」
篠宮は一番下の大きな引き出しを開けて、それを取り出した。
黒革のアタッシュケースである。
バネ式の留め具は施錠されておらず、簡単に開いた。中も黒のビロード生地で覆われていて、その中には透明のガラスシリンダーに金属の金具が付いた、不思議な物体があった。
シリンダー上下の部品は、コレを何処かに取り付けるための物であるらしい。つまり何かの部品そのものをアタッシュケースに仕舞ってあるらしかった。
「中は——液体? 真ん中に何か……」
その時、研究室の戸がガラッと開いた。サクラ達が入って来たのだ。
篠宮の姿を認めるや否や、サクラは大声で誰何した。
「何をしている!?」
「うわっ!」
驚いた篠宮は、その手にしていた怪しげな物体を取り落とす——。
落としたらもっと怒られる!
篠宮はシリンダーに手を伸ばした。同時にサクラも壊すわけにはいかないと、それ目掛けて飛び込んだ——。
何が作用したかはわからぬが、シリンダーの中の液体は急激に光り輝き、その光はその場にいた全員の視界を奪うほどに眩しく広がった。
耳障りな高音が響き渡った後、光は消え、徳田姉妹が恐る恐る目を開くと——。
「え?」
そこに篠宮とサクラの姿は無かった。
つづく
なので必然的に篠宮はサクラと徳田姉妹が在籍するクーラーが効いてる研究室に入り込んだ。
「涼しい~♪」
ベタつく肌が一気に冷やされ、心地が良い。
残念な事に今は研究室には誰もいなかった。整然と並べられた六つのキーボードと複数のディスプレイ。それを統括するように、少し離れてサクラ専用の端末が置かれている。
「一体、何の研究してるんでしょうね……」
特に興味がある訳では無い。
篠宮の予測では、亜人に関する研究なんだろうな、というところである。
サクラのデスクは綺麗だ。ほぼ何にも無い。重いマニュアル・タブレットも無ければ、メモの一つも無い。
「きっと頭の中に全部入っているんだろうなぁ」
面白みの無いデスクだな、と思いながら部屋をぐるっと回ると、目に付く席があった。
マニュアル・タブレットも出しっぱなし、ディスプレイのあちこちに付箋が貼られ、入力の注意書きやキーの指示が可愛らしい文字で書いてあった。
篠宮は辺りを見回して、この一台だけそんな状態になっている点から、この端末は六花の指定席に違いないと気が付いた。
篠宮は首をひねる。
何故六花ちゃんだけこうなんだろう?
赴任してきたばかりの篠宮でさえ、六花の事は見分けがつくくらい違いを感じる。
何気なく彼女のデスクにあったタブレットに触れると、どうやら電源が入ってたままだったらしく、パッと画面が現れた。
超空間転移バースト——。
「何これ?」
文系の篠宮にはさっぱり分からない単語が次々と出てくる。
タキオンだとか、空間転移だとか、宇宙放射線だとか——。これが彼女達の研究なんだろうか?
「ま、いいや」
篠宮は興味ない事には首を突っ込まない性格である。
それにだいぶ汗も引いてきた。しかし蒸し暑い外に出るのは嫌だったので、篠宮はもう少しこの部屋にいることにする。
ついでにサクラさんの席に座ってみる。
「ふへっ♪」
変態である。
重ねて記述するが、彼は変態である。諸兄は真似してはいけない。
「なんかないかなー?」
他人の机の引き出しを、止むに止まれぬ事情があるならともかく、興味本位で開けるのも——良くない。
そういった一般常識に欠ける彼が災難に遭うのは、至極真っ当な神様の采配である。
「ん?」
篠宮は一番下の大きな引き出しを開けて、それを取り出した。
黒革のアタッシュケースである。
バネ式の留め具は施錠されておらず、簡単に開いた。中も黒のビロード生地で覆われていて、その中には透明のガラスシリンダーに金属の金具が付いた、不思議な物体があった。
シリンダー上下の部品は、コレを何処かに取り付けるための物であるらしい。つまり何かの部品そのものをアタッシュケースに仕舞ってあるらしかった。
「中は——液体? 真ん中に何か……」
その時、研究室の戸がガラッと開いた。サクラ達が入って来たのだ。
篠宮の姿を認めるや否や、サクラは大声で誰何した。
「何をしている!?」
「うわっ!」
驚いた篠宮は、その手にしていた怪しげな物体を取り落とす——。
落としたらもっと怒られる!
篠宮はシリンダーに手を伸ばした。同時にサクラも壊すわけにはいかないと、それ目掛けて飛び込んだ——。
何が作用したかはわからぬが、シリンダーの中の液体は急激に光り輝き、その光はその場にいた全員の視界を奪うほどに眩しく広がった。
耳障りな高音が響き渡った後、光は消え、徳田姉妹が恐る恐る目を開くと——。
「え?」
そこに篠宮とサクラの姿は無かった。
つづく
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