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第76話 おにまる
しおりを挟む旧校舎に入るとすうっと冷たい風が吹いてきた。
しかも薄暗い。
「なんか、不気味ですね」
小さいサクラをお姫様抱っこしたまま、篠宮は呟いた。それに答えたのはその小さなサクラだ。
「ここはしゅくしゃなのよ」
「しゅくしゃ——宿舎? 誰か住んでるの?」
「うん。べーたのこたちがすんでる」
「べーたのこ……βか。という事は、鬼丸君とレディちゃんと——」
「——だけ、だな。我々第一世代と三年生の黒羽リリは六歳ほど離れている。生まれているが、おそらく生まれたてくらいだろう。同じ三年生のシュトルムはドイツ生まれだから、ここにはいない」
「なるほど」
篠宮は納得したようにうなずくと、サクラの後に続いた。
キシキシと床が軋むのは変わらない。
薄暗い廊下の奥に、小さな人影が見えた。サクラと篠宮は足を止める。
「子どもか? おい、お前アレは誰だ?」
サクラは篠宮に抱っこされている小さいサクラに聞いた。が、彼女はツーンと横を向いた。
その反応にサクラは顔を真っ赤にして憤る。篠宮は慌ててフォローに入った。
「サクラちゃん、あの子誰かな~?」
「うん、おにまる」
鬼丸?
見たい!
篠宮は無防備に足を進めた。
その足元に、突然、鮮やかな雷が走った。
「うわわわ!?」
バチバチと音を立てて、雷撃は篠宮の侵入を阻む。
「おにまるー、わたしよ!」
小さいサクラがそう叫ぶと、雷撃は止まり、奥から小さな男の子が出てきた。
額の二本角と赤銅色の肌。長い前髪の間から黄金色の瞳を覗かせて、その男の子はこちらを見ていた。
「さくら? なんだこいつら? はじめてみるぞ」
「えーと、……あそんでくれるひと?」
小さいサクラが疑問形で返しながら、篠宮を見た。
「うん、まあ、そんなもんだよ。俺は篠宮で、こっちが——」
「サクラだ」
彼女が名乗ると、その美しさに小さい鬼丸が少し頬を染めた。
「おにまる、です」
「うむ、お前は誰かと違って礼儀正しいな」
サクラは小さい鬼丸の頭を撫でた。
「あっ、いいな俺もして欲しい……」
「しのみやはあたまなでなでされたいの?」
抱っこした小さいサクラはそう言うと、小さな手を伸ばして篠宮の頭を撫でた。
これはこれで、良いか。一応サクラさんだし、と篠宮は自分を納得させた。
つづく
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