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第79話 失敗したが故の平穏
しおりを挟む同一の遺伝子デザインによる生体演算コンピュータ——αIIシリーズのハシリになるはずだったそれは、並列演算をも可能とする高速度演算機として作られたのだが、結果はご覧の通り、使い物にならないとしてアオバヤマ町に隔離されている。
「何で失敗作なんですか?」
「並列演算のスピードが思ったより上がらなかったのと、六体揃っての演算が出来なかったことが原因と言われている」
そういえば、六花ちゃんが少し皆とズレている事がたまにある。もしかしてそれが原因か?
「全くできないわけじゃないが、『商品』にはならなかった。ま、幸運だったかもしれん」
「?」
疑問の眼差しを篠宮に向けられて、サクラは自嘲気味に答えた。
「兵器にはなり得なかった。たぶん生体同士の遠隔通信も視野に入っていたんだろうが、機械の方が安いからな。徳田姉妹は戦場に駆り出されることはなく、アオバヤマ町で暮らしていると言うわけだ」
「そっか、そうなんですね。実験は成功しなかったけど、一花ちゃん達はあの町で平和に過ごしているってことですね……でもそれと今の六花ちゃんの話とどうつながるんです?」
「仮説だが、我々がこの時間に飛んだのは、六花が呼んだのではないか? 私も試験管の部屋で誰かに呼ばれた気がしたのだ」
サクラは白衣に包んだシリンダーを篠宮の目の前に出した。
「これは、空間転移装置——の試作品だ。もちろんまだ一度も成功したことはない」
「ほええ? 空間てんい——? 俺、ついていけないです」
「なぜ起動したのかわからんが、空間を移動するための装置が、時間を移動するする装置として誰かに利用されたと思う。おそらく我々には用意出来ない時間移動のエネルギーを、時を超えて送り込んできた誰かが居るのだ」
「それが、六花ちゃんだっていうんですか? あの胎児の?」
「確かめに行こう。そこの脚立は開脚式だな。開いて梯子にし、二階の窓からあの部屋に戻ろう」
「見つかりませんか?」
「その時は、鬼丸、頼むぞ」
サクラは小さい鬼丸に、『警備員』が来た場合、再び電撃を放つよう指示する。鬼丸は素直にうなずいた。
「そういえば、怖い警備員でしたね」
「浅木博士が雇った兵隊だろう。警備員ってのは仮称だ。十八年後のアオバヤマ町にいるのはブルーの制服を着ている」
「ああ、町のゲートにいた……」
「それはShinomiya の警備会社だろ? あれよりももっと下品な奴らさ」
つづく
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