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第80話 明かされる秘密
しおりを挟む「つまり乱暴な奴らだってことですね」
篠宮は更衣室から運んだ梯子を校舎に立て掛けながら、サクラに聞いた。
「そうだ。気をつけろ」
幸い、季節柄廊下側の二階の窓は開いていた。篠宮は梯子をしっかりと押さえると、サクラの方を振り向いた。
「さ、どうぞ」
「……どうぞ、とはなんだ?」
「俺が押さえてますから、早く上がって下さい」
「お前、私が昇ったら下から覗く気だろう?」
サクラはスカートの前を押さえながら疑いの目で篠宮を見る。
「え?」と、ついうっかり篠宮はサクラの短めのスカートからスラリと伸びる綺麗な脚を見てしまった。
「見るな!」
「いや、だって……」
理不尽なお叱りを受けたので、篠宮が先に登る事になる。
意外と高さがあるので、篠宮は前だけ見ながら登り、開いている窓から校内(研究所)に入った。
誰もいない。
サクラに手招きすると、小さい鬼丸がするすると登ってきた。身体を動かすのは得意なようだ。窓の外から手を貸して中に引き入れる。
次は小さいサクラだ。こちらも怖がりもせず昇って来る。どうやら小さい頃からおてんばだったのだろう。
本人に言ったら、張り倒されるかも。
最後にサクラが梯子に足をかける。相変わらずハイヒールなのに、なんと器用に昇って来るのか。篠宮の手も借りず廊下に降り立つと、目配せで例の部屋へ向かった。
十分に周囲に気を配っていたのだが、その四人の姿を廊下の端からそっと覗いている、小さな影がある事に、誰も気がつかなかった。その影は一人納得したようにうなずくと、見知らぬ侵入者の事を大人に知らせるべく、階段を降りて行った。
試験管の部屋にも誰もいなかった。安心してほっとため息をつくとサクラは一番右の巨大試験管に向かう。
ピンクの色味の強い肌色の物体。黒い部分は目だろうか。
頭を下にして人工羊水の中に浮かび、身体のあちこちから細い管が繋がっている。
サクラが見上げると、巨大試験管の上部に、『No.6』と書かれたプレートが付いていた。
「六花……?」
コレに話しかけるなど、馬鹿げている。サクラはそう思いながらも話しかけたのだった。
——サクラ、せんせい。
「!!」
——きてくれて、ありがとう。
「六花、なのか?」
振り返ると篠宮もこちらを見ている。小さいサクラは元々聞こえていたようだが、鬼丸は初めて聞く『声』に目を丸くしていた。
耳から聞こえているのか? いや、頭の中に聞こえて来るという感覚だ。
——せんせい、じかんが、ない。よくきいて。
「なんだ?」
——わたし、きのう、めざめた。たぶん、わたしだけ。
「ここへ我々を呼んだのはお前か?」
——そう。わたし、めざめて、みらい、みえたの。せんそうにつかわれる、ざんこくな、わたしたちのみらい。
悲しげにその『声』は響いて来る。
六花は話しを続けた。
——それを、とめるために、せんせいたちをよんだ。そして、おくりこんだ。
「私はともかく、なぜ篠宮が必要なのだ」
——ひとりじゃ、できない。しのみやせんせいもひつよう。はやく、てんそうきを、だして。
「これか?」
サクラは白衣に包んだシリンダーを出した。中央部のガラス管が、突然光出す。あの時と同じ、眩い光だ。
シリンダーのガラス管が光に満たされると、再び六花の『声』が響き出す。
——これをもって、もとのばしょへ。それで、もどれる。
「これは何なのだ?」
——たきおんりゅうし。いまのわたしに、あつめることは、かのう。
タキオン粒子!
「そんな馬鹿な……」
超光速を生み出す物質がここに? サクラはシリンダーを持つ手が震えるのを感じた。
——なくなれば、なくなるほど、かそくして、ときを、こえる。わたし、みらいに、それをおくった。
「……何のために?」
わかっている。サクラは返事をしながらも、何のために呼ばれたのか、気付いていた。
——わたしを、こわして。
つづく
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