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第81話 この為に俺も呼ばれたんだ
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——私を壊して。
その言葉を耳にした時、サクラは叫んだ。
「出来るものか!」
唇が震える。
目の前に、幻の生体演算システムの完全体があるのだ。浅木博士の研究は、成功していたというのか。
——だいじょうぶ。わたし、しなない。わたしの、しすてむに、いじょうがおきるよう、すこしだけ、いくせいきをとめて。それだけ。
「六花……!」
——そうすれば、おそろしい、みらい、そしできる。
「六花、六花! お前だけが犠牲になるというのか?」
——ろくたい、そろって、こそのしすてむ。だから、わたしだけでいい。
「私にそれをしろと言うのか?」
——だから、しのみやせんせいも、いる。
いつの間にか、サクラのそばに篠宮が立っていた。
——せんせいたちの、しっているみらいに、つながるには、わたしのいくせいきを、12.78びょう、ていししなくてはならない。
「サクラさん、俺、何にもわかんないけど、六花ちゃん達を兵器にしたくないです」
「……」
サクラは篠宮に見られないように、そっと涙を拭いた。
なんだってこんな時に涙が出るのだ。
「わかっている。それは私も同じだ」
サクラは覚悟を決めて、育成機の制御パネルに手を伸ばした。彼女の震える手に、篠宮がそっとその手を重ねた。
六花の育成機其の物の機能停止をさせるために、パネルを操作する。
——もういちど、きどうさせると、すべてのきのうが、もどるまで12.78びょうかかる。
「わかった。起動させたら後は心配ないのだな?」
——そう。せんせいたちのしってる、ろっかになる。
「では、停止させる。さよなら、六花」
「未来で会おうね」
その瞬間、花咲くような誰かの笑顔が皆の脳裏に浮かんだ。きっと六花ちゃんだ、と篠宮は思った。
——せんせい、すてきななまえを、ありがとう。
再び六花の育成機が正常に動き出したのを確かめると、四人はそっとその場を離れる。もう、声は聞こえない。
「ないてるの?」
小さいサクラが、大人のサクラの手を握った。反対の手を鬼丸が無言で握る。
幼い子どもの前に、サクラは膝をつくと、そっと二人を抱き寄せた。
「お前達はこれから生まれる妹や弟を護らねばならない。その為に、強くあれ」
「……うん」
二人は同時に答えた。
その可愛らしい声に、サクラは苦笑いをする。
——こうやって自分に重荷を負わせるとはな。
そして篠宮の耳に届かぬ声でささやいた。
「サクラ、空間転移理論を学ぶのだ」
それは我々の切り札になるはずなのだ。いつどこで思いついたのか忘れていたが、きっとこの時に擦り込まれたのだ。
「サクラさん、もう行かないと」
「——そうだな」
四人はどこか寂しさを胸にしたまま、廊下へ出た。そこへ——。
「あっ、あの人達よ!」
女の子の声。
見れば十歳くらいの少女がこちらを指差していた。その後ろには例の『警備員』達だ。
「カエデ!?」
二人のサクラが同時に叫ぶ。
「えっ? あれがカエデさん?」
篠宮はこんな時にも興味津々である。
サクラによく似た少女で、オレンジ色のワンピースがよく似合っている。
「捕まえて!」
カエデの号令で男達が前に出る。
「なんでカエデはおねえちゃんのじゃまするの!?」
小さいサクラが不満げに声を上げる。カエデはふん、と鼻で笑ってふんぞり返った。
「あたしより小さいくせに、お姉さんぶらないでよ!」
「カエデのばか!」
「ええい、下がっておれ!」
サクラは小さいサクラの襟首を掴むと、篠宮の方へ放り投げた。篠宮はしっかりとキャッチする。
「鬼丸、行くぞ!」
「おう!」
つづく
その言葉を耳にした時、サクラは叫んだ。
「出来るものか!」
唇が震える。
目の前に、幻の生体演算システムの完全体があるのだ。浅木博士の研究は、成功していたというのか。
——だいじょうぶ。わたし、しなない。わたしの、しすてむに、いじょうがおきるよう、すこしだけ、いくせいきをとめて。それだけ。
「六花……!」
——そうすれば、おそろしい、みらい、そしできる。
「六花、六花! お前だけが犠牲になるというのか?」
——ろくたい、そろって、こそのしすてむ。だから、わたしだけでいい。
「私にそれをしろと言うのか?」
——だから、しのみやせんせいも、いる。
いつの間にか、サクラのそばに篠宮が立っていた。
——せんせいたちの、しっているみらいに、つながるには、わたしのいくせいきを、12.78びょう、ていししなくてはならない。
「サクラさん、俺、何にもわかんないけど、六花ちゃん達を兵器にしたくないです」
「……」
サクラは篠宮に見られないように、そっと涙を拭いた。
なんだってこんな時に涙が出るのだ。
「わかっている。それは私も同じだ」
サクラは覚悟を決めて、育成機の制御パネルに手を伸ばした。彼女の震える手に、篠宮がそっとその手を重ねた。
六花の育成機其の物の機能停止をさせるために、パネルを操作する。
——もういちど、きどうさせると、すべてのきのうが、もどるまで12.78びょうかかる。
「わかった。起動させたら後は心配ないのだな?」
——そう。せんせいたちのしってる、ろっかになる。
「では、停止させる。さよなら、六花」
「未来で会おうね」
その瞬間、花咲くような誰かの笑顔が皆の脳裏に浮かんだ。きっと六花ちゃんだ、と篠宮は思った。
——せんせい、すてきななまえを、ありがとう。
再び六花の育成機が正常に動き出したのを確かめると、四人はそっとその場を離れる。もう、声は聞こえない。
「ないてるの?」
小さいサクラが、大人のサクラの手を握った。反対の手を鬼丸が無言で握る。
幼い子どもの前に、サクラは膝をつくと、そっと二人を抱き寄せた。
「お前達はこれから生まれる妹や弟を護らねばならない。その為に、強くあれ」
「……うん」
二人は同時に答えた。
その可愛らしい声に、サクラは苦笑いをする。
——こうやって自分に重荷を負わせるとはな。
そして篠宮の耳に届かぬ声でささやいた。
「サクラ、空間転移理論を学ぶのだ」
それは我々の切り札になるはずなのだ。いつどこで思いついたのか忘れていたが、きっとこの時に擦り込まれたのだ。
「サクラさん、もう行かないと」
「——そうだな」
四人はどこか寂しさを胸にしたまま、廊下へ出た。そこへ——。
「あっ、あの人達よ!」
女の子の声。
見れば十歳くらいの少女がこちらを指差していた。その後ろには例の『警備員』達だ。
「カエデ!?」
二人のサクラが同時に叫ぶ。
「えっ? あれがカエデさん?」
篠宮はこんな時にも興味津々である。
サクラによく似た少女で、オレンジ色のワンピースがよく似合っている。
「捕まえて!」
カエデの号令で男達が前に出る。
「なんでカエデはおねえちゃんのじゃまするの!?」
小さいサクラが不満げに声を上げる。カエデはふん、と鼻で笑ってふんぞり返った。
「あたしより小さいくせに、お姉さんぶらないでよ!」
「カエデのばか!」
「ええい、下がっておれ!」
サクラは小さいサクラの襟首を掴むと、篠宮の方へ放り投げた。篠宮はしっかりとキャッチする。
「鬼丸、行くぞ!」
「おう!」
つづく
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