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18『ピンチヒッター 時かける少女・5』
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みなこ転生・18
『ピンチヒッター 時かける少女・5』
「『平成狸合戦ぽんぽこ』の公開は1994年、今は1993年。制作は、まだラフの段階でタイトルも未定、それを、どうして知っていたの?」
この一言で、和子はフリーズした……。
「やっぱ、リープコードがきついのね……」
ミナコは、ケーブルを出して、一端を和子の額にバンドエイドで留め、一端をスマホに繋いだ。
「和子さん、聞こえてる?」
スマホの脳波計に変化があった。
「聞こえてはいるようね。じゃ、始めます」
ミナコはスマホを操作して、情報を送り込んだが、ウィルスとして拒絶された。
「……しかたない。アナログでやるか」
和子は、父が作ってくれたマニュアルに従って、話を進めた。
「未来人は、過去を変えてはいけないというのは、リープコードの基本だけど、これは嘘です」
和子の脳波が反応して、混乱している。
ミナコはスマホにパチンコの画面を出した。パチンコ台にはチューリップが無く、下に穴が有るだけである。
「いくわよ」
ミナコが画面にタッチすると次々に玉が打ち出され、いろんな釘に当たって、様々なコースをたどっていくけど、最後は必ず、下の穴に吸い込まれる。
「これと同じことよ。タイムリープした者は、それだけで、もう歴史に干渉しているの。例えば、あなたが和子として婦人警官になって現れたから、本来婦警さんになるはずだった子が一人婦警さんになれなかった。で、他の人生を歩んでいる。彼女に関わる人たちも少しずつ人生が変わっている。でも、パチンコの玉が必ず下の穴に落ちるように、歴史は変わらない。時間の流れには修正機能があってね、加えた変化の分、修正されて、結果は変わらないものなのよ」
和子は、小さく頷いたが、混乱は続いている。
「リープコードは、リープで利益を独占したい人が作った勝手な決まり。ほら、このタレントさん覚えてる?」
和子の脳波は、しばらく活性化(つまり考えて)し、答をスマホに出した。
「仲間里衣紗……かな?」
「そう、彼女は未来人なの。この時代でスターになりたくてやってきたんだけど、事故で降板。今は行方不明ってことになってるけど、もう未来に帰ってる。で、彼女がやるはずだった役は、仲里衣沙って女優さんがやってる。これが本質だから。あとはサンプル転送するから理解して」
和子の脳波は大きく乱れ、混乱した。
「ああ、やっぱアナログでなきゃ無理か……あ、和子さん、今リープしちゃだめだよ!」
言う間もなく、和子はモザイクになり、六面体になったかと思うと消えてしまった。
「くそ、逃がすもんか!」
ミナコは、和子のリープの奇跡を追ってリープした。
ドスンという音の後、悲鳴が続いた。
「わ!」
「キャー!」
「イテ!」
場所は、前回と同じ渋谷のハチ公前。空中から降ってきたミナコは、通りすがりの男女の真上に落ちた。
「す、すみません(^_^;)」
「一体なんだよ君は!?」
と、若き日の父がむくれている。
「すみません。えと、わたしミナコって言います。ちょっと事故で。あ、オネエサン大丈夫ですか?」
「うん、ちょっと肩が……」
「すみません、どうも」
謝りながら、ミナコはスマホを、その女性の後頭部にあてがい、情報を流し込んだ。今度はリープしたてということもあり、すんなりと転送できた。
「白石和子さんとおっしゃるんですか?」
和子は姿形が変わっていた。懐かしい、その人の姿に。
「で、お前は、ただのミナコかよ」
父が、十九年後もそうであるように、鼻の下をこすり、食後のコーヒーを飲みながら、ぶっきらぼーに言った。
「すみません、事情で苗字は勘弁してください」
「どうせ、埼玉あたりからのプチ家出だろ。こんな飯オゴッてくれなくていいから、さっさと家帰れ。だいたい今の高校生はだな……」
父らしい、でも若い分だけ力のこもったお説教をされた。
その後、三人は、これも何かの縁だろうと封切りになったばかりのジブリの新作を観にいった。
そう『平成狸合戦ぽんぽこ』を。
あれから一年たった1994年である。父と母は歴史通り知り合うことができた。
――これで、わたしは生まれることができる!――
ミナコの母は未来人である。リープコードでは、未来人と過去の人間の通婚は禁止されている。母は悩んだ末に、ミナコを生んで未来に帰っていってしまった。
父の記憶を消して。
でも、父は母と同時に出会った家出少女にCPUに記録を残しておくように言われ、その通りにした。
歴史は、干渉しても大筋では変わらない。でも、逆に言えば小さな部分は変化する。
ミナコは、自分が、その小さな部分であることを、よく分かっていたのである。
ミナコは、渋谷の雑踏の中、また時の狭間に落ち込んでいった……。
『ピンチヒッター 時かける少女・5』
「『平成狸合戦ぽんぽこ』の公開は1994年、今は1993年。制作は、まだラフの段階でタイトルも未定、それを、どうして知っていたの?」
この一言で、和子はフリーズした……。
「やっぱ、リープコードがきついのね……」
ミナコは、ケーブルを出して、一端を和子の額にバンドエイドで留め、一端をスマホに繋いだ。
「和子さん、聞こえてる?」
スマホの脳波計に変化があった。
「聞こえてはいるようね。じゃ、始めます」
ミナコはスマホを操作して、情報を送り込んだが、ウィルスとして拒絶された。
「……しかたない。アナログでやるか」
和子は、父が作ってくれたマニュアルに従って、話を進めた。
「未来人は、過去を変えてはいけないというのは、リープコードの基本だけど、これは嘘です」
和子の脳波が反応して、混乱している。
ミナコはスマホにパチンコの画面を出した。パチンコ台にはチューリップが無く、下に穴が有るだけである。
「いくわよ」
ミナコが画面にタッチすると次々に玉が打ち出され、いろんな釘に当たって、様々なコースをたどっていくけど、最後は必ず、下の穴に吸い込まれる。
「これと同じことよ。タイムリープした者は、それだけで、もう歴史に干渉しているの。例えば、あなたが和子として婦人警官になって現れたから、本来婦警さんになるはずだった子が一人婦警さんになれなかった。で、他の人生を歩んでいる。彼女に関わる人たちも少しずつ人生が変わっている。でも、パチンコの玉が必ず下の穴に落ちるように、歴史は変わらない。時間の流れには修正機能があってね、加えた変化の分、修正されて、結果は変わらないものなのよ」
和子は、小さく頷いたが、混乱は続いている。
「リープコードは、リープで利益を独占したい人が作った勝手な決まり。ほら、このタレントさん覚えてる?」
和子の脳波は、しばらく活性化(つまり考えて)し、答をスマホに出した。
「仲間里衣紗……かな?」
「そう、彼女は未来人なの。この時代でスターになりたくてやってきたんだけど、事故で降板。今は行方不明ってことになってるけど、もう未来に帰ってる。で、彼女がやるはずだった役は、仲里衣沙って女優さんがやってる。これが本質だから。あとはサンプル転送するから理解して」
和子の脳波は大きく乱れ、混乱した。
「ああ、やっぱアナログでなきゃ無理か……あ、和子さん、今リープしちゃだめだよ!」
言う間もなく、和子はモザイクになり、六面体になったかと思うと消えてしまった。
「くそ、逃がすもんか!」
ミナコは、和子のリープの奇跡を追ってリープした。
ドスンという音の後、悲鳴が続いた。
「わ!」
「キャー!」
「イテ!」
場所は、前回と同じ渋谷のハチ公前。空中から降ってきたミナコは、通りすがりの男女の真上に落ちた。
「す、すみません(^_^;)」
「一体なんだよ君は!?」
と、若き日の父がむくれている。
「すみません。えと、わたしミナコって言います。ちょっと事故で。あ、オネエサン大丈夫ですか?」
「うん、ちょっと肩が……」
「すみません、どうも」
謝りながら、ミナコはスマホを、その女性の後頭部にあてがい、情報を流し込んだ。今度はリープしたてということもあり、すんなりと転送できた。
「白石和子さんとおっしゃるんですか?」
和子は姿形が変わっていた。懐かしい、その人の姿に。
「で、お前は、ただのミナコかよ」
父が、十九年後もそうであるように、鼻の下をこすり、食後のコーヒーを飲みながら、ぶっきらぼーに言った。
「すみません、事情で苗字は勘弁してください」
「どうせ、埼玉あたりからのプチ家出だろ。こんな飯オゴッてくれなくていいから、さっさと家帰れ。だいたい今の高校生はだな……」
父らしい、でも若い分だけ力のこもったお説教をされた。
その後、三人は、これも何かの縁だろうと封切りになったばかりのジブリの新作を観にいった。
そう『平成狸合戦ぽんぽこ』を。
あれから一年たった1994年である。父と母は歴史通り知り合うことができた。
――これで、わたしは生まれることができる!――
ミナコの母は未来人である。リープコードでは、未来人と過去の人間の通婚は禁止されている。母は悩んだ末に、ミナコを生んで未来に帰っていってしまった。
父の記憶を消して。
でも、父は母と同時に出会った家出少女にCPUに記録を残しておくように言われ、その通りにした。
歴史は、干渉しても大筋では変わらない。でも、逆に言えば小さな部分は変化する。
ミナコは、自分が、その小さな部分であることを、よく分かっていたのである。
ミナコは、渋谷の雑踏の中、また時の狭間に落ち込んでいった……。
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