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38『女子高生怪盗ミナコ・4』
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ミナコ転生
38『女子高生怪盗ミナコ・4』
ミナコは、吹っ切るつもりでパソコンのキーを押した。それで解決するつもりだった。
むろん、ウィルスを送り込んでダミーにしているパソコンを何台も経由し、仕掛けを施し、自分がハッカーであることは絶対分からない仕組みにしてある。
保科産業の社長のパソコンには入り込めているが、株取引のためのキーワードが解析できていない。途中まではバカみたいに簡単だった。息子の正隆と同じヅブリファンの社長は、ヅブリ作品のヒロインの名前をキーにしていた。むろんそれは日によって順序が違うのだが、一カ月もフォローしていると、その規則性も分かってきた。アイウエオ順、発表順、年齢順、設定された身長順が乱数表によって変えられる。それも古典的なエニグマだったので、容易に分かった、ミナコは思わず笑ってしまった。
だが、最後のキーワードが見つからなかった。ヅブリの登場人物の誰を入れてもヒットしない。でも、今夜こそと思ってパソコンが起動するのを待った。
「え……うそ!?」
なんと、株取引のキーワードが解析されて、株取引の一覧表が出てきた。
そして、持ち株の半分が盗まれて、三十分後には三億円の利益を付けてもどされていた。
「おめえが、モタモタしてっからよ。おいら先に、すましといたぜ」
気づくと、爺ちゃんが横に座って、タバコを吹かしていた。
爺ちゃんは種明かしはしてくれなかった。
「ネタは、自分の目と耳で仕入れ、頭で組み立てるもんだ」
そう言って、オナラ一発カマしてミナコの日銀金庫室並のロックをしてある部屋を出て行った。
「クソジジイ……!」
で、ミナコは、保科家のお手伝いさんに化けて、キッチンで、ワンセグテレビを観るふりをして、リビングでの親子の話の様子を観察していた。
本物のお手伝いさんは、終業の挨拶を済ませたたように暗示をかけて、先に帰してある。
「今日、琴子ちゃんは、どうだった?」
「うん、楽しそうにしていたよ。うまい具合にミナコが映画をキャンセルしてきたんで、自然に誘えたし」
「シャメを見せてくれるかい」
「どうぞ」
「……まだ、だめだな」
「そんな、この動画だって、こんなに楽しそうに……」
「お前に気を遣っての演技だってことも分からんのか」
「これが、演技……?」
「さすが、名女優・山城豊子の娘だけのことはある。笑顔の作り方、可憐な身のこなし。母親にそっくりだ」
「そりゃあ、親子なんだから」
「山城豊子は、プライベートでは、こんな表情は見せん……分からんか。お前の気持ちが本気じゃないからだ」
「そ……それは」
「オレには、贖罪の気持ちがある。琴子ちゃんの家を破滅させたのは、オレだからな。豊子を奪われた腹いせだったが、あのころは単なるビジネスと思っていた。でも結局は山城の家をメチャクチャに壊しただけだった」
「でも、ボクは……」
「自分の自由意思だと言うんだろ……正隆、おまえはいい奴だ。オレの気持ちも十分分かってくれている。だが、人を愛するのは別だ。オレに義理をたてる必要はない」
「オヤジ……」
「今日、うちの持ち株が操作された。何者かがハッキングして、持ち株の半分を盗まれた」
「ほんと!?」
「そして、三十分後には三億円の利益を付けてもどされていた……意味が分かるか?」
ミナコは、キッチンで、正隆とオヤジさんの顔を交互にアップにし、聞き耳ずきんになった。
「三億円というのは、オレが山城を破滅させた金額と同じだ。それを、得にもならないハッキングまでして、金の出し入れをしてみせたのは、だれだと思う?」
「さあ……そんなの見当もつかないよ」
「お前を、うまくあしらっているミナコという子だよ」
「え……!?」
「え!?」ミナコも驚いた。
「最初は、おまえにタカっているだけの子だと思った。次ぎにわたしの会社を狙っている意外な大物……例えば峰不二子のような大泥棒かと思い、オレの生き甲斐になりかけた。そして……今日だ。ミナコという子は、全てを知っている。そして、正隆、お前を本気で好いている。それが、今日のハッキングだ。この技術と情熱にオレは惚れた。と、言っても横取りなんかしやせん。琴子ちゃんもミナコも一流の女だ。オレの気持ちなんか斟酌せんでいい。どっちかを嫁にしろ!」
ミナコは、うろたえて、縁の下から蜘蛛の巣だらけになって退散した……。
38『女子高生怪盗ミナコ・4』
ミナコは、吹っ切るつもりでパソコンのキーを押した。それで解決するつもりだった。
むろん、ウィルスを送り込んでダミーにしているパソコンを何台も経由し、仕掛けを施し、自分がハッカーであることは絶対分からない仕組みにしてある。
保科産業の社長のパソコンには入り込めているが、株取引のためのキーワードが解析できていない。途中まではバカみたいに簡単だった。息子の正隆と同じヅブリファンの社長は、ヅブリ作品のヒロインの名前をキーにしていた。むろんそれは日によって順序が違うのだが、一カ月もフォローしていると、その規則性も分かってきた。アイウエオ順、発表順、年齢順、設定された身長順が乱数表によって変えられる。それも古典的なエニグマだったので、容易に分かった、ミナコは思わず笑ってしまった。
だが、最後のキーワードが見つからなかった。ヅブリの登場人物の誰を入れてもヒットしない。でも、今夜こそと思ってパソコンが起動するのを待った。
「え……うそ!?」
なんと、株取引のキーワードが解析されて、株取引の一覧表が出てきた。
そして、持ち株の半分が盗まれて、三十分後には三億円の利益を付けてもどされていた。
「おめえが、モタモタしてっからよ。おいら先に、すましといたぜ」
気づくと、爺ちゃんが横に座って、タバコを吹かしていた。
爺ちゃんは種明かしはしてくれなかった。
「ネタは、自分の目と耳で仕入れ、頭で組み立てるもんだ」
そう言って、オナラ一発カマしてミナコの日銀金庫室並のロックをしてある部屋を出て行った。
「クソジジイ……!」
で、ミナコは、保科家のお手伝いさんに化けて、キッチンで、ワンセグテレビを観るふりをして、リビングでの親子の話の様子を観察していた。
本物のお手伝いさんは、終業の挨拶を済ませたたように暗示をかけて、先に帰してある。
「今日、琴子ちゃんは、どうだった?」
「うん、楽しそうにしていたよ。うまい具合にミナコが映画をキャンセルしてきたんで、自然に誘えたし」
「シャメを見せてくれるかい」
「どうぞ」
「……まだ、だめだな」
「そんな、この動画だって、こんなに楽しそうに……」
「お前に気を遣っての演技だってことも分からんのか」
「これが、演技……?」
「さすが、名女優・山城豊子の娘だけのことはある。笑顔の作り方、可憐な身のこなし。母親にそっくりだ」
「そりゃあ、親子なんだから」
「山城豊子は、プライベートでは、こんな表情は見せん……分からんか。お前の気持ちが本気じゃないからだ」
「そ……それは」
「オレには、贖罪の気持ちがある。琴子ちゃんの家を破滅させたのは、オレだからな。豊子を奪われた腹いせだったが、あのころは単なるビジネスと思っていた。でも結局は山城の家をメチャクチャに壊しただけだった」
「でも、ボクは……」
「自分の自由意思だと言うんだろ……正隆、おまえはいい奴だ。オレの気持ちも十分分かってくれている。だが、人を愛するのは別だ。オレに義理をたてる必要はない」
「オヤジ……」
「今日、うちの持ち株が操作された。何者かがハッキングして、持ち株の半分を盗まれた」
「ほんと!?」
「そして、三十分後には三億円の利益を付けてもどされていた……意味が分かるか?」
ミナコは、キッチンで、正隆とオヤジさんの顔を交互にアップにし、聞き耳ずきんになった。
「三億円というのは、オレが山城を破滅させた金額と同じだ。それを、得にもならないハッキングまでして、金の出し入れをしてみせたのは、だれだと思う?」
「さあ……そんなの見当もつかないよ」
「お前を、うまくあしらっているミナコという子だよ」
「え……!?」
「え!?」ミナコも驚いた。
「最初は、おまえにタカっているだけの子だと思った。次ぎにわたしの会社を狙っている意外な大物……例えば峰不二子のような大泥棒かと思い、オレの生き甲斐になりかけた。そして……今日だ。ミナコという子は、全てを知っている。そして、正隆、お前を本気で好いている。それが、今日のハッキングだ。この技術と情熱にオレは惚れた。と、言っても横取りなんかしやせん。琴子ちゃんもミナコも一流の女だ。オレの気持ちなんか斟酌せんでいい。どっちかを嫁にしろ!」
ミナコは、うろたえて、縁の下から蜘蛛の巣だらけになって退散した……。
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