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69『スタートラック・9』
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時かける少女
69『スタートラック・9』
敵は、1/3ほどが撃破されると、後退しはじめた。
「勝ったあー!」
ミナコは無邪気に喜んだが、だれも反応しない。
「バルス、船尾にシールドを集中。コスモス、コスモ砲を船尾下方30度に照準や!」
「そんな大ざっぱな照準でいいんですか!?」
「ほな、ミナホのCPUとシンクロさせて照準を……早よせえ!」
「了解!」
二人は返事、もうシンクロしていた。
「万一、前に現れたら、どうすんだよ!?」
ポチが緊張した声で言ってきた。
「まあ、オレの勘を信じろ……それから、コスモ砲のパワーは30%で」
「船尾方向に……」
バルスが言い終わる前に衝撃が来た。なんだか分からないけど、後ろから攻撃されたことは確かなようだ。スゴイ衝撃でミナコは舌を噛みそうになった。直後、かすかなショックがして船尾のコスモエンジンから強烈な光が放たれ、ミナコの目はホワイトアウトしてしまった。
「敵の母船大破。わずかに生命反応あり」
「ちょっとやりすぎたかな……ミナコとミナホは同行、コスモスはガードでついてこい」
「ミナコ、こっちに来て。これを持って」
コスモスは、ミナコに銃を渡した。
「スライダーを10に。これでディフェンサーが90になる」
「敵を見つけたら撃っていいわよ。パンチをかましたほどのショックにはなるわ。ほとんどパーソナルシールドにエネルギーが集中する設定よ」
「あの、みんなの顔が見えない。視野の真ん中が真っ白で」
「ミナコ、コスモ砲の発射見ちゃったでしょ。船長もヘルメット付けるぐらい言ってください。あれにはオートゴーグルが付いてんのに」
「すまん、時間がのうてなあ。まあ、ちょっとしたら治るわ。行くぞ!」
ミナコの視野の白い光が全体にひろがり、すぐに、視界が別世界になった。
「ここは……?」
「敵船のブリッジに行く通路。これからブリッジに行くから気を付けて」
ブリッジの手前5メートルほどのところで右半身がむず痒くなった。で反射的に銃を撃った。視野の端に、ミナコが見ても分かる古典的なロボットが転がっていた。
「船長。この船には旧式なコンバットがずいぶんいるようです」
「ミナホ、壁の端末にリンクして、船のCPUとコンバットのリンクを切れ!」
この短い会話の間に、敵のコンバットの攻撃を五度ほど受け、三体を倒した。ミナコは二度ほど衝撃を感じた。敵の弾が当たったのである。
「リンク解除しました」
とたんに天井から、リンクが切れたコンバットが落ちてきた。目の前だったので、びっくりしたミナコは、立て続けにコンバットを撃ちまくった。
「もう止めとけ、リンクが切れてるから死んだも同然や」
ブリッジに入ると、あちこちに人間とも宇宙人ともアンドロイドともつかないのが転がっていた。あらかたは死んでいるか完全に壊れているかしていた。
数名の生命反応と、数体の稼動反応があったが、弱いもので、そのうちの三つはすぐに消えてしまった。
『おい、大丈夫か』
翻訳機を通して聞こえる船長の声は標準語のバリトンで、割にかっこいい。コスモスが抱き上げたのは指揮官だろうと思われたが、体は女性だった。
『どうやら、銀河のあちこちからの寄り合い所帯のようだが?』
『あんたの船の主砲はすごいな。それに後ろに回ったのもよくわかったわね……』
『ジャンクだけど、威力は凄い。あれでも出力は30だ。あんたが近寄り過ぎたんだ』
『あんた、ひょっとしてマーク……』
『ああ、久しぶりだなクリミアのマグダラ』
『同じ稼業なのに……』
『ちょいとばかり、あんたよりヘソが曲がってるんでね。真っ当な海賊にはなれねえ』
『わざわざ、あたしの負け面見にきたってか……』
『そうじゃない、見てもらいたいモノがあるんだ。この二人に見覚えはないかい?』
船長は、ミナコとミナホを指した。
『……双子……いや、片方はガイノイド……パルスが、とても似てる』
『このパルスに覚えはないかい?』
『ごめん、銀河は広いからね』
『いや、いいんだ。ひょっとしたらと思ってな』
『それより、銀河連邦には気をつけな。あたしもあんたもただの宇宙の屑扱いしかしないから』
『ありがとう、気をつけるよ。じゃ、ナビゲーターにクリミアを入力しとくわ。コスモス……』
「はい」
『トドメをささないのかい?』
『またいつか、いっしょに飲もうや』
『……マーク』
マグダラの船団はゆっくりとクリミア星に向かって去っていった。
「あたし、視野の真ん中が真っ白になってて、マグダラさんの顔見えなかったんだけど」
「こんな顔さ」
「きゃ!」
体はコンバットスーツを着ていても分かるほど若かったけど、顔は何百歳というオバアチャンだった。
「もう、人のメモリー勝手に転送しないの!」
コスモスがポチを叱って、代わりの情報をくれた。それは小顔で切れ長な目の美人だった。
「コスモ砲の影響。クリミアに着く頃には元に戻ってるわ」
「船長、次は『惜別の星』ですね……」
「あかんで、男心を裸にしたら。裸はベッドの上だけでよろしい」
船長がミナホのヌードのイメージを浮かべそうになったので、ミナホは船長の頭に一発食らわした……。
69『スタートラック・9』
敵は、1/3ほどが撃破されると、後退しはじめた。
「勝ったあー!」
ミナコは無邪気に喜んだが、だれも反応しない。
「バルス、船尾にシールドを集中。コスモス、コスモ砲を船尾下方30度に照準や!」
「そんな大ざっぱな照準でいいんですか!?」
「ほな、ミナホのCPUとシンクロさせて照準を……早よせえ!」
「了解!」
二人は返事、もうシンクロしていた。
「万一、前に現れたら、どうすんだよ!?」
ポチが緊張した声で言ってきた。
「まあ、オレの勘を信じろ……それから、コスモ砲のパワーは30%で」
「船尾方向に……」
バルスが言い終わる前に衝撃が来た。なんだか分からないけど、後ろから攻撃されたことは確かなようだ。スゴイ衝撃でミナコは舌を噛みそうになった。直後、かすかなショックがして船尾のコスモエンジンから強烈な光が放たれ、ミナコの目はホワイトアウトしてしまった。
「敵の母船大破。わずかに生命反応あり」
「ちょっとやりすぎたかな……ミナコとミナホは同行、コスモスはガードでついてこい」
「ミナコ、こっちに来て。これを持って」
コスモスは、ミナコに銃を渡した。
「スライダーを10に。これでディフェンサーが90になる」
「敵を見つけたら撃っていいわよ。パンチをかましたほどのショックにはなるわ。ほとんどパーソナルシールドにエネルギーが集中する設定よ」
「あの、みんなの顔が見えない。視野の真ん中が真っ白で」
「ミナコ、コスモ砲の発射見ちゃったでしょ。船長もヘルメット付けるぐらい言ってください。あれにはオートゴーグルが付いてんのに」
「すまん、時間がのうてなあ。まあ、ちょっとしたら治るわ。行くぞ!」
ミナコの視野の白い光が全体にひろがり、すぐに、視界が別世界になった。
「ここは……?」
「敵船のブリッジに行く通路。これからブリッジに行くから気を付けて」
ブリッジの手前5メートルほどのところで右半身がむず痒くなった。で反射的に銃を撃った。視野の端に、ミナコが見ても分かる古典的なロボットが転がっていた。
「船長。この船には旧式なコンバットがずいぶんいるようです」
「ミナホ、壁の端末にリンクして、船のCPUとコンバットのリンクを切れ!」
この短い会話の間に、敵のコンバットの攻撃を五度ほど受け、三体を倒した。ミナコは二度ほど衝撃を感じた。敵の弾が当たったのである。
「リンク解除しました」
とたんに天井から、リンクが切れたコンバットが落ちてきた。目の前だったので、びっくりしたミナコは、立て続けにコンバットを撃ちまくった。
「もう止めとけ、リンクが切れてるから死んだも同然や」
ブリッジに入ると、あちこちに人間とも宇宙人ともアンドロイドともつかないのが転がっていた。あらかたは死んでいるか完全に壊れているかしていた。
数名の生命反応と、数体の稼動反応があったが、弱いもので、そのうちの三つはすぐに消えてしまった。
『おい、大丈夫か』
翻訳機を通して聞こえる船長の声は標準語のバリトンで、割にかっこいい。コスモスが抱き上げたのは指揮官だろうと思われたが、体は女性だった。
『どうやら、銀河のあちこちからの寄り合い所帯のようだが?』
『あんたの船の主砲はすごいな。それに後ろに回ったのもよくわかったわね……』
『ジャンクだけど、威力は凄い。あれでも出力は30だ。あんたが近寄り過ぎたんだ』
『あんた、ひょっとしてマーク……』
『ああ、久しぶりだなクリミアのマグダラ』
『同じ稼業なのに……』
『ちょいとばかり、あんたよりヘソが曲がってるんでね。真っ当な海賊にはなれねえ』
『わざわざ、あたしの負け面見にきたってか……』
『そうじゃない、見てもらいたいモノがあるんだ。この二人に見覚えはないかい?』
船長は、ミナコとミナホを指した。
『……双子……いや、片方はガイノイド……パルスが、とても似てる』
『このパルスに覚えはないかい?』
『ごめん、銀河は広いからね』
『いや、いいんだ。ひょっとしたらと思ってな』
『それより、銀河連邦には気をつけな。あたしもあんたもただの宇宙の屑扱いしかしないから』
『ありがとう、気をつけるよ。じゃ、ナビゲーターにクリミアを入力しとくわ。コスモス……』
「はい」
『トドメをささないのかい?』
『またいつか、いっしょに飲もうや』
『……マーク』
マグダラの船団はゆっくりとクリミア星に向かって去っていった。
「あたし、視野の真ん中が真っ白になってて、マグダラさんの顔見えなかったんだけど」
「こんな顔さ」
「きゃ!」
体はコンバットスーツを着ていても分かるほど若かったけど、顔は何百歳というオバアチャンだった。
「もう、人のメモリー勝手に転送しないの!」
コスモスがポチを叱って、代わりの情報をくれた。それは小顔で切れ長な目の美人だった。
「コスモ砲の影響。クリミアに着く頃には元に戻ってるわ」
「船長、次は『惜別の星』ですね……」
「あかんで、男心を裸にしたら。裸はベッドの上だけでよろしい」
船長がミナホのヌードのイメージを浮かべそうになったので、ミナホは船長の頭に一発食らわした……。
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