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75『スタートラック・15』 

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ミナコ転生

75『スタートラック・15』        


 

☆……三丁目の星・3

 ズドドドドーーン

 マークプロの向かいの空き地から、ロケットが打ち上げられた。

 ロケットと言っても長さ二メートルほどのミサイルのようなものだが、先端に二つのカプセルが仕込まれている。
 一番上のカプセルには、二千枚のビラが仕込まれていて、このビラを拾って事務所に持っていくと、陽子やザ・チェリーズと握手ができて、賞金一万円がもらえる仕組みになっている。

 一番目のカプセルは高度一万でハジけ、二千枚のビラは、東京、千葉方面に舞い落ちていった。あらかじめ、マスメディアに連絡してあったので、事務所前は、新聞、週刊誌、ラジオにテレビ、当時全盛だった映画のニュース会社まで押し寄せた。
 マーク船長は、事務所の両隣と向かいの空き地を借り上げていたので、野次馬を含むマスコミは、余裕で来ることが出来た。

『奇想天外、マークプロの宣伝ロケット!』

 おおむね、こういう見出しで、ラジオとテレビは中継。新聞は夕刊のトップに。週刊誌は翌週のトップ記事にした。

 後日談ではあるが、科学雑誌、それも専門家が読むような『航空宇宙』が取り上げた。当時としても、国産ロケットで高度一万まで飛ばせるものがなかったからだ。
「なあに、素人のまぐれですよ」
 そう言いながら、ロケットの設計図を配った。その後日本の得意になる固体燃料によるエンジンに、ドイツが戦時中飛ばしていたV2ロケットの姿勢制御装置のコピーで、当時の米ソの技術から見ればオモチャみたいなもので、当然米ソは関心を示さなかった。

 握手会と賞金の引き替えは、その日の午後から明くる日の夕方まで行われた。ビラには細工がしてあり、36時間後には印刷は消えるようになっていた。こういうイベントは時間勝負だ。
 結果的には、48枚のビラが持ち込まれた。握手は、ビラがなくてもできるので、約一万ちょっとの人が集まった。

「社長の考えることって、すごいわね。たった三日で、ほとんどスターの扱いよ!」

 陽子は感激した。ミナコとミナホも、表面上それに合わせた。400年も進んだ文明の全てを、三丁目星の代表である陽子にも明かすわけにはいかない。

 ロケット打ち上げの二日後から、世界的な異変が起こった。

 陽子と、ザ・チェリーズのプロモーションビデオや音声が、全世界で視聴できるようになったのである。
 これは、高度な人工衛星がなければできないことである。

 そう、マーク船長のロケットの本当の推進力は、小型の反重力エンジンである。二段目のバレ-ボールほどのカプセルが、衛星軌道の高さにまで達すると、中から八個の超小型人工衛星が周回軌道に乗り、陽子やザ・チェリーズの動画や曲を流し始めた。
 これは世界中のテレビやラジオで視聴できた。共産圏ではテレビやラジオのバンドは固定されていたが、マークプロのプロモは、ランダムに周波数が変わるので、当時の技術では阻止できないのだ。

「マーク社長、け、警察が来ました!」

 急遽増員した人間のスタッフが、顔色を変えてテレビや新聞報道を確認していた社長室に飛び込んできた……!

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