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100 〈S島奪還・1〉
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てんせい少女・
100 〈S島奪還・1〉
勇猛七烈士!!
C国のマスコミは、こぞってS島の生き残りの兵士たちを褒め称え、S島の死守に成功したことを宣伝した。
「このままじゃ、S島は、完全にC国に取られてしまう。アメリカは、仲介に入って現状を追認するつもりよ」
エミーが、電話してきて、奇妙なほど落ち着いた声で言った。
「電話じゃ、分かんないよ。学校で詳しく教えて」
微妙な間があったあと、エミーが言った。
「そうするわ。それから、この電話は盗聴されてるから。具志堅君でしょ、聞いてるのは。対抗措置とるからね」
エミーが、そこまで言うとプツンとかすかな音がした。
「学校に行ったら、気を付けて。まだ、敵のスリーパーがいるから。じゃあね」
一方的に電話が切れた。
学校に行くと、エミーが来ていなかった。
あたしは、職員室で念のため、日直であることをいいことに、両隣のクラスの出席簿を確認した。
C組の具志堅という男子が欠席していた。こいつだ、盗聴していたスリーパーは。
視線を感じた。
「よそのクラスの出席簿見ちゃダメだろ」
教務主任の宮里先生に叱られた。
「あ……いえ……」
「お前か、小林連隊長の娘は?」
宮里先生は、蔑みの目であたしを見た。こんなところまで、作戦失敗の責任はお父さんにありと浸透している。マスコミの怖ろしさを感じた。
「宮里先生、この子には関係のない話です。そんな言い方はしないでください」
音楽の仲間先生が、毅然と宮里先生に言ってくれた。
「急ぎで悪いんだけど、昼からの音楽の時間に使うプリントを配っておいてほしいの、準備室にきてくれる」
「はい」
「失礼します」
そう言って、音楽準備室に入ると、仲間先生の暖かい眼差しが返ってきた。
「さっきは、どうもありがとうございました」
「いいえ、わたし、ああいう弱い者いじめみたいなことは嫌いだから。じゃ、これ、よろしくね」
「はい」
プリントの束を受け取って、準備室を出ようとしたら、ドアが開かなかった。
「またか……ここのとこ鍵の具合が悪くてね、音楽室の方から出てくれる」
仲間先生は、準備室と音楽室を仕切るドアを開けてくれた。
ドン!
とたんに突き飛ばされ、あたしはピアノの横に倒れてしまった。一瞬なにが起こったか分からなかったが、仲間先生の顔を見て分かった。今までの優しい先生の顔じゃなかった。
「卑怯なことは嫌いだから、説明してあげる。わたしは宇土麗花の姉よ。妹のカタキと任務を遂行させてもらう」
「先生……スリーパー!?」
「の、リーダーよ。ここであなたには死んでもらう」
「なんで、あたしのお父さんは解任されたわ!」
「いいえ、吾妻愛のお父さんは、まだ現役よ」
「え……」
「だって、あなたのお父さんは総理大臣だもの」
「うそよ、あたしのお母さんはDNA検査でも実の親だったもの」
「お母さんはね……」
「え……」
「小林一佐は、お母さんごとあなたを引き取ったのよ。お父さんと愛は血のつながりはない。知っているのは、ごくわずか。愛は、お父さんのことを悲観して発作的に飛び降り自殺をするの。総理はショックでしょうね……」
そう言いながら、仲間先生は、静かに音楽室の窓を開け、その一秒後には、あたしを三階の音楽教室の窓から無造作に放り出した。
キャーーーー!
仲間先生の悲鳴で、先生や生徒達が集まってきた。
あたしはあちこちの骨、特に頭蓋骨骨折で「もう、死ぬんだ……」と思った。
「宮里先生が、あんな嫌みなことをおっしゃるから! 小林さん! 愛ちゃん! 死なないで!」
薄れる意識の中で、血まみれのあたしを抱きしめて涙を流している仲間先生……いや、C国のスリーパーを呪った……。
100 〈S島奪還・1〉
勇猛七烈士!!
C国のマスコミは、こぞってS島の生き残りの兵士たちを褒め称え、S島の死守に成功したことを宣伝した。
「このままじゃ、S島は、完全にC国に取られてしまう。アメリカは、仲介に入って現状を追認するつもりよ」
エミーが、電話してきて、奇妙なほど落ち着いた声で言った。
「電話じゃ、分かんないよ。学校で詳しく教えて」
微妙な間があったあと、エミーが言った。
「そうするわ。それから、この電話は盗聴されてるから。具志堅君でしょ、聞いてるのは。対抗措置とるからね」
エミーが、そこまで言うとプツンとかすかな音がした。
「学校に行ったら、気を付けて。まだ、敵のスリーパーがいるから。じゃあね」
一方的に電話が切れた。
学校に行くと、エミーが来ていなかった。
あたしは、職員室で念のため、日直であることをいいことに、両隣のクラスの出席簿を確認した。
C組の具志堅という男子が欠席していた。こいつだ、盗聴していたスリーパーは。
視線を感じた。
「よそのクラスの出席簿見ちゃダメだろ」
教務主任の宮里先生に叱られた。
「あ……いえ……」
「お前か、小林連隊長の娘は?」
宮里先生は、蔑みの目であたしを見た。こんなところまで、作戦失敗の責任はお父さんにありと浸透している。マスコミの怖ろしさを感じた。
「宮里先生、この子には関係のない話です。そんな言い方はしないでください」
音楽の仲間先生が、毅然と宮里先生に言ってくれた。
「急ぎで悪いんだけど、昼からの音楽の時間に使うプリントを配っておいてほしいの、準備室にきてくれる」
「はい」
「失礼します」
そう言って、音楽準備室に入ると、仲間先生の暖かい眼差しが返ってきた。
「さっきは、どうもありがとうございました」
「いいえ、わたし、ああいう弱い者いじめみたいなことは嫌いだから。じゃ、これ、よろしくね」
「はい」
プリントの束を受け取って、準備室を出ようとしたら、ドアが開かなかった。
「またか……ここのとこ鍵の具合が悪くてね、音楽室の方から出てくれる」
仲間先生は、準備室と音楽室を仕切るドアを開けてくれた。
ドン!
とたんに突き飛ばされ、あたしはピアノの横に倒れてしまった。一瞬なにが起こったか分からなかったが、仲間先生の顔を見て分かった。今までの優しい先生の顔じゃなかった。
「卑怯なことは嫌いだから、説明してあげる。わたしは宇土麗花の姉よ。妹のカタキと任務を遂行させてもらう」
「先生……スリーパー!?」
「の、リーダーよ。ここであなたには死んでもらう」
「なんで、あたしのお父さんは解任されたわ!」
「いいえ、吾妻愛のお父さんは、まだ現役よ」
「え……」
「だって、あなたのお父さんは総理大臣だもの」
「うそよ、あたしのお母さんはDNA検査でも実の親だったもの」
「お母さんはね……」
「え……」
「小林一佐は、お母さんごとあなたを引き取ったのよ。お父さんと愛は血のつながりはない。知っているのは、ごくわずか。愛は、お父さんのことを悲観して発作的に飛び降り自殺をするの。総理はショックでしょうね……」
そう言いながら、仲間先生は、静かに音楽室の窓を開け、その一秒後には、あたしを三階の音楽教室の窓から無造作に放り出した。
キャーーーー!
仲間先生の悲鳴で、先生や生徒達が集まってきた。
あたしはあちこちの骨、特に頭蓋骨骨折で「もう、死ぬんだ……」と思った。
「宮里先生が、あんな嫌みなことをおっしゃるから! 小林さん! 愛ちゃん! 死なないで!」
薄れる意識の中で、血まみれのあたしを抱きしめて涙を流している仲間先生……いや、C国のスリーパーを呪った……。
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